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それでは、番外編
どうぞっ。
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小さな部屋。
窓から入る光が、柔らかく床を照らしている。
🤍「ねえ。」
ソファに寝転がりながら、來亜が声をかける。
🩵「ん?」
キッチンから返ってくる落ち着いた声。
もう”お嬢様”じゃない、ただのやり取り。
🤍「まだ慣れないの?」
少しだけ、意地悪に笑う。
🩵「何がですか。」
🤍「それ。」
体を起こして、じっと彼を見る。
🤍「名前で呼ぶの。」
一瞬、言葉が止まる。
🩵「…、努力はしております。」
🤍「嘘。」
即答。
🤍「さっきも呼びかける前に止まってた。」
図星。
彼女は僅かに視線を逸らす。
🩵「…、長年の習慣は簡単には_」
🤍「ねえ。」
遮る。
🤍「呼んで。」
真っ直ぐに。
逃がさない。
少しの沈黙。
観念したみたいに、彼女は息をつく。
🩵「……來亜。」
静かに、でも確かに。
その名前が、空気に落ちる。
🤍「……うん。」
満足そうに笑う。
それだけで嬉しい自分が、少し悔しい。
🤍「もう一回。」
🩵「……、」
🤍「もう一回。」
🩵「……來亜。」
今度は少し自然に。
🤍「いいね。」
くすっと笑う。
🤍「やっと普通になった感じ。」
🩵「普通、ですか。」
少し考えるように呟く。
🩵「私にとっては、まだ少し特別です。」
🤍「……なにそれ。」
頬が少し熱くなる。
そういうこと、さらっと言うからずるい。
🤍「前は絶対言わなかったのに。」
🩵「前は言えませんでしたから。」
当たり前みたいに言う。
沈黙。
でも、気まずくない。
むしろ、心地いい。
🤍「ねえ。」
ぽつりと、來亜が言う。
🤍「後悔してない?」
少しだけ、真面目な声。
彼女は迷わなかった。
🩵「しておりません。」
即答。
🤍「全部失ったのに?」
🩵「いいえ。 」
首を振る。
🩵「失っておりません。」
一歩、近づく。
🩵「一番必要なものは、ここにあります。」
來亜は少しだけ目を見開いて、
🤍「……ほんとずるい。」
小さく笑った。
ーーーーー
街を歩くと、たまに思い出す。
広い屋敷。
決められた未来。
“お嬢様”だった自分。
🩵「……どうかした?」
隣から声。
現実に引き戻される。
🤍「なんでもない。」
そう言って、笑う。
本当に、なんでもない。
過去は過去。
失ったものも、確かにある。
でも、
🩵「ほら、行くよ。」
手を引かれる。
少し強引で、
でも優しいその手。
🤍「……うん。」
握り返す。
もう、迷わない。
選んだのは、
“正しい未来”じゃなくて、
“この人といる未来”。
それでいい。
それがいい。
🤍「ねえ、今度はちゃんと名前で起こしてよ。」
🩵「……善処します。」
🤍「善処じゃなくて絶対ね?」
🩵「……はい、來亜…」
END.
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