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ニキとキャメと3人での撮影中、取れ高もある程度とれたし、もうそろそろ終わりにしようかという空気が流れてた頃。
唐突にキルからメッセージが送られてきた。
「なぁ、ニキ、キャメ、キルから変なん送られてきたんやけど、」
「あ、ほんとだ」
「なになに、弐十ちゃんのことで何か知ってるかだって。え、2人ともなんか聞いてる?」
「俺は聞いとらんけど、」
「俺もしろせんせーと一緒。というかニキキルがなんも聞いてないなら、ねぇ?」
どうやらキルは個人ではなく、グループの方に送っていたらしくみんなで顔を見合わせる。
「というか今弐十ちゃん配信中でしょぉ?後で直接聞けばよくない?」
「もしかして俺らになんかドッキリでもしようとしてるんとちゃう?」
「てか俺腹減ったんだけど、なんか食ってから帰ろうよ~」
ニキと軽くそんなことを話しながら、どこか飲食店にでも入ろうとしていた時。
「2人ともまって、なんか、ガチっぽいかも?」
キャメが疑問形で話しながらスマホの画面を見せてきた。
映し出されたのはどうやら弐十ちゃんの配信らしいがさっきから全くと言っていいほど画面が動いていない。
V体や手元を写す予定であろうカメラにも何も映っていないことを見るとトイレにでもいるのかもしれない。
「1時間!」
その考えはニキのバカでかい声によって打ち砕かれた。
「弐十ちゃん1時間くらい前からずっとこの状態だって」
「え」
慌ててコメント欄をチェックすると、画面はずっとこのまま、それどころか音声も何もない状態のままらしい。
「いや、ドッキリでしょ!ないないない!こういうドッキリは周りにカメラあるときじゃないとつまんないって!」
やけに饒舌なニキがそのまま、半笑いのテンションでキルに電話をかける。俺達にも聞こえるようにハンズフリーにして。
「キルさあ、メッセ急にどうしたの?弐十ちゃんなんかあった?」
こいつさては引っかかったふりでもする気だな。そして弐十キルがネタ晴らしをした瞬間にこっちも引っかかってませんでした!ってするつもりだ。
その証拠にちゃっかり録音を開始している。
「え、みんななんも知らない?」
あ、違う。本当にまずいかもしれない。
キルの今までに聞いたことがないほど強張った声を聞いてそう思った。
他の2人も同じことを感じ取ったらしく表情が固まっていた。
これが演技なら大したものだ。
「え、お前らが組んで俺らにドッキリしかけてるんでしょ?俺らもう気づいちゃってるよ?」
沈黙がやけに長く感じた。
「ねぇ、キル聞こえてる?キル?キルちゃーん?あれ負け惜しみは——」
「ちょ、ニキ、一旦落ち着けって」
若干パニックになっているニキからスマホをキャメに渡す。
「キルくん聞こえてる?どうした?キルくん?おーい、トルテ?キルシュトルテ?キルシュトルテ!」
「え、あ、あれ、キャメさん」
さっきとは打って変わって呆然としたキルの声にこれが演技でも何でもないことを悟る。
通話越しにもキルの乱れた呼吸音が聞こえてくる。
ニキもある程度落ち着いてきたらしく、今度はキルを落ち着かせるついでに双方の情報を照らし合わせるためにどこまで知っているのかを聞く。
「それで、キル、弐十ちゃんがどうしたん?」
キルの口から説明されたことは俺たちの情報とほとんど同じ。
比較的民度というかマナーがいい弐十ちゃんのリスナーがキルの配信に押し掛けるということはきっとリスナーも何も知らない状況だということ。
「……いや、でも、寝落ちとかじゃないの?」
いつの間にかりいちょとシードも通話に上がっていたらしく、少し緊張感のないりいちょの声が聞こえてくる。俺もそう信じたい。でも——
「弐十ちゃんが寝落ちはないんとちゃう?」
「俺も、ボビーに同意。弐十ちゃんて意外とそうとこちゃんとしてるじゃん」
ニキが同意してくれたことから画面越しの、離れた場所にいるりいちょとシードにも事の重大さは伝わったと思う。——シードは広島だから離れすぎか。
変なところに思考を飛ばしつつ、スマホでここから弐十ちゃんの家までのルートを調べる。30分くらいで着くことをニキに伝え、反応をうかがう。
「よっし!弐十ちゃんの家いこう!」
ニキはそう決めると口早に色々と決めていく。
いつも通りのニキに安心したところで、俺自身も相当緊張していたことを知る。
「しろせんせーは今のところ大丈夫そう?」
「お、おうよ」
心配げなキャメにそう返していつの間にかキャメが呼んでいたタクシーに3人で乗り込む。
目的地までの距離をざっと計算してあらかじめ代金を握りしめておく。
リスナーへの説明はシードがやってくれているらしく、到着するまで3人でそれを見る。
『いやさっき弐十くんから連絡が来たんじゃけど、なんか配信ソフトがバッグったらしいんよ』
『キル君は?』
『え、キル?キルは、えーと、あれ、弐十くんのパソコン直しに行っとる。じゃけぇ、安心してええよ』
コメントを見るとまだ不安がっているリスナーたちはいたが、大半はシードの説明で納得してくれているらしい。
「ここでおろしてください!」
俺たち3人は顔を出して配信しているから、念の為マンションが見えたあたりでおろしてもらう。そのせいで渡したお金は少し多くなってしまったが、そこは運転手さんが何とかしてほしい。
「ボビー、弐十ちゃん家まであとどんくらい?」
「えーと、階段とか含めてたぶん10分しないくらい!」
「おっけ、キルちゃん!あと10分くらいで着く!」
走りながら計算して何とかニキに到着予定時間を知らせる。
やっとのことでマンションに入るが、ここからが長い。エレベーターのボタンを押してもなかなか降りてこない。かといって、普段からあまり外に出ない俺とニキがこの状態で階段を上るのでは余計に時間がかかってしまう。でも——
俺と同じことを思ったであろうニキがキャメに声をかける。
「キャメ!弐十ちゃんの部屋分かるよね?」
「えっと、」
「817号室!」
「ありがとう!」
キャメも察したのか、見る見るうちに階段を駆け上がっていく。
やっとのことで降りてきてエレベーターに乗った時、
「弐十くん!弐十くん!おい、弐十!早く出ろよ!いるよな!弐十!」
唐突にスマホからキルのバカでかい声が鳴り響く。
「うわぁ!びっくりした」
「キルちゃんはっや!」
「これ、逆にキルが通報されんとちゃう?」
「はは、ありえそうでうける」
狭い箱の中、どうすることもできずニキと息を整えながら話す。
1時間にも思えるその会話を終え、エレベーターから出る。
「あれ、ドア開いてね?」
ニキの言葉通りドアが全会になっており、慌てて弐十ちゃんの家に入る。
「これ、どういう状況?」
先に入ったニキが棒立ちのままそう呟く。
眼の前には荒れた部屋とキャメに羽交い絞めにされているキル。
そして、防音室のドアの隙間から見えるのは、床に倒れている知らない中年男性……
妙に冷静なままドアを閉めて鍵をかける。
その音でニキが急に走って視界からいなくなる。姿の見えない弐十ちゃんでもさがしてんのかなぁ。それとも、なんてことを考える。
とりあえずフーフーと荒い息のキルちゃんを落ち着かせるために、いまだキャメに羽交い絞めにされているキルに向かい合う。
キルは俺が見えていないのか、全然落ち着く様子がない。
とりあえず俺は、キルの頭を優しくつかんで——思いっきり頭突きをした。
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