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酷く冷えていた。池の水が体に触れる度に、体中に耐え難い苦痛が押し寄せていた。けど、そんなのはどうでもよかった。私は苦痛を無視して起き上がった。
上半身からは池の透き通った水が滝のように流れ落ちる。今にも力が抜けて崩れてしまいそうな足を抑えながら池の縁を跨いだ。病院は中も外も大騒ぎだった。中庭の池の周辺には私以外の患者も居り、周りは騒然としていた。病院で働いている看護師やその他の職員は、私が逃げ出したと大騒ぎになっていた。幸いな事に、私の病室の窓から真下の所に池があり、私は水に体を強打するだけで済んだ。痛みに耐えるだけ。と自身に言い聞かせるが、苦痛からは逃げられない。只々自身の意思に従い、苦痛に抗いながら病院を後にした。まず私は自宅に向かった。無我夢中で走ったからか、何回か転んだりしたが、そんなものは眼中に無く、転んでもすぐ立ち上がり、必死に走った。
転ぶ度に見える自身の足。血が滲み先程の池の水が染みてくる。靴を履いていなかったからか、足の裏も血だらけだった。血だらけ。痣だらけ。打撲だらけ。私の足は、誰も見ていられないような、そんな状態になっていた。そのうち、家の近くの川が見え、家の近くであることを知らされた。
私は目を疑った。本当に。蘭が見せた写真の通り。黄色のビニールテープがドアの一面を覆うかのように貼ってあったのだ。
警察は?とふと疑問に思った。
ビニールテープがあるのに、パトカーどころか警察が居なかったのだ。私はラッキーだと思い、窓から家に侵入した。
──────本当だった。母の死体。そして何よりの証拠。血がついたナイフとハンマー。それらが放置されていた。
こいつでお母さんを殺したのか。
……持って行こう。バレない…よね。バレたとしてももう手遅れだろうしね。私は自分が入ってきた窓から外に出て、一直線に走った。
学校に。
自宅の方からは、パトカーの音が聞こえる。追いかけられている?どうでもいいか。どちらにせよ。捕まるんだから。心にはもう、迷いはなかった。走る。走る。何が聞こえようと、何に追いかけられてようと知らない。真っ直ぐ。学校へと走った。すると、案外早く学校についた。私は学校に付いている防犯カメラを避けるように、柵を飛び越え侵入した。 私は下駄箱を通り過ぎ、靴のまま一直線に2年4組に走って行く。ダン!と、思いきり開けたドアの音が廊下に響き渡る。そこには、1人の先生と、生徒たち約35人がいた。
私は人目を気にせず、ナイフを振りかぶる。
「!?…か…鏡谷!?」
先生は驚いたのか、尻もちをついた。ははははは!これから死ぬってのに、座ってていいの?
そう思いながら、振り下ろす。
それでも結局。何も考えてはいなかった。只々、憎かった。
「死ね!死ね!死ね!ははははは!!」
正気を失ったかのように、
私は先生を刺しまくった。
何度も何度も何度も何度も。
先生は苦しそうに、「痛い痛い!
やめて」と喚いていた。
「やめる?お前がそれを言える立場?ねぇ。先生?」
そうして、私はこの短い先生の人生に、光景に、幕を下ろした。
…廊下が騒騒しい。生徒はみんな逃げたのだろう。
「お母さん。殺したよ!」
そう自身でやり遂げた事を母に告げた時。教室の端で泣いてる
男の子を見つけた。
「ねぇ。君逃げないの?」
「逃げ…ないよ。黒澤先生が逃げずに必死に僕達を守って逃がしてくれたのに。男の僕が逃げて…どうする!」
「……そう。」
私は1人残った男の子を教室の外に追い出した。パトカーの音が聞こえる。そしてピタリと止まった。私は血塗れの教室で、
たった1人、呆然としていた。いや、1人になりたかったのだ。後ろのドアから警察が入って来る。
私…捕まるのかな。捕まったら。
どうなるのかな。
私、あの時死ねば良かったのに。
あの時?何の事?私が殴られた時?あの時…襲ってきたのは…
あれ?
蘭…?
その瞬間、警察に取り押さえられた私は、涙を流しながら無抵抗のまま、捕まった。