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目が覚めると私は刑務所の檻の中で寝ていた。
私は昨日刑務所に入った。
“一般人”を殺したから。
蘭に騙され。人を殺した自分の
愚かさにため息を吐く。
「はぁ…」
大きなため息を吐いていると、
向かいにある鉄格子から男の声が聞こえた。
「おや?小さい子が来たねぇ。もしかして人殺したの?こわー。」
壁に寄りかかる様にしてこちらを見ている男が言う。男はまるで初対面では無いような話し方をしてきて、私はそれに対し拒絶するかように、男に言う。
「うるさい。」
「はいはい。可愛いねー」
「ムカつくから黙ってて。」
「女の子がそんな悪口言ったらモテないよ?」
「あっそ。」
私は男の軽率な発言と態度にムカッとし、話を聞き流す。その反応を見て男は言った。
「まあまあ、先ずは自己紹介をしよう。俺の名前はライト。」
「嘘だ。」
男はどう見ても、日本人の様な
顔立ちだったので、過剰に反応してしまった。
「うっそーんよくわかったね。将来探偵にでもなれるんじゃなーい?」
「うるさい。私は将来教師になるつもりだったの。」
「じゃあ絶対無理だね。
“この刑務所入った時点で”
君はもう終わりだよ。」
「分かってる。私は人を殺したから懲役10年になったみたいね。」
「やっぱ殺してたんだ…うわぁ…怖〜っ」
男の発言にイラッとした私だったが、檻の中だったので何も出来ず座ってため息を吐いた。
「はぁ…で?どうでもいいけど本当の名前は?なんていうの?」
私は深いため息をつき、男の名前を聞いた。
「本名は名島マサト。本当だよ?
まあマサトって呼んでよ。」
「ふーん」
「信じろよ。モテねーぞ。そっちの名前は?」
マサトも同じ調子で聞いてくる。
私は不安しか無かったが応えた。
「わかった。信じる。私の名前は鏡谷 明。」
「あかり?よくありそうな名前だな。誰がつけたの?」
「誰でもいいでしょ。」
「教えてくれてもいいでしょそれくらいさ〜」
一々鼻につく話し方をされるが置いておこう。
「お母さん。」
「へぇー」
マサトは興味がなさそうにこたえた。檻がなかったらビンタしてたかもしれない程にイラッとした。そんな対話をしていると、近くから大きめの足音が聞こえてきて、こちらへ向かってきては、スタッと止まった。
マサトは何も無かったかのように寝ているフリをしている。
カンカンカン!という大きな音が刑務所内に響き渡る。
私はビックリして耳を塞いだ。
「全員起きろ!起床時間だ!」
看守と思わしき大男はそう言って、1人ずつ牢屋から出していく。周りの囚人達は、布団のシーツを綺麗にたたみ、看守が牢屋を開けるのを待っていた。
私はそれを見習うかのように
真似をして布団をたたんだ。
すると看守が、「さっさと出ろ。」と言って牢屋の鍵を開けた。
私は囚人達が向かっていく方向に足を進めていき、囚人達について行くと、そこにはとても広い食堂があった。自身の家が幾ら入るかと考える程に広かった。私があまりの広さに呆然としていると、後ろからマサトとは違う他の男の声が聞こえた。
「おい!邪魔だ。殺すぞ。」
振り向いてそこに居たのは、ガタイがよく且つ背が高い男性だった。私は何も反論できず、
「は、はい!ごめんなさい…ごめんなさい…」
と小さい声で言ってその場を後にした。囚人達が並んでいる列に私も並び、命令に従っているかのようにご飯を運ぶ。空いている席があったので、座って静かに食べていると、誰かが隣に座って声をかけてきた。
「ねぇ。友達いないの?可哀想だねー」
マサトだった。
「うるさい。あんたもでしょ。」
私は言い返すように応えた。
「俺は全然平気だけどさ。寂しくないの?」
「寂しいよ…」
「ふーん」
マサトは再び興味無さげに応えた。
「まあ俺も暇だし。話し相手に
なってやってもいいよ」
「やだ。」
「そんなムキにならないで。せっかく俺が仲良くしてあげてるのにさー」
「わかったわかった。仲良くしよ。」
「ははは。やった。」
マサトの軽率な態度はもう気にならなくなった。気にしても何にもならないから。
「さて。明にお願いがあるんだけど。」
──────え?
「もし作戦が成功したらここを抜け出す事ができるかもしれない?」
「あぁ。まあ明が嫌ならいいけど。」
「…やる。」
「えらいえらい。」
「うるさい。やってくる。」
「行ってらっしゃーい」
そう言って勢いよく口に食べ物を含んで食器を片付ける。私はこの食堂で最初に絡まれた男に話しかける。
「ねぇ。そこのおじさん。」
「ん?てめぇ。殺されに来たのか?」
足が震える。当然だ。私は160cmで相手は180cm以上の怪物だ。それでも私は恐怖を必死にこらえ、大男を煽る。
「殺すだなんて。殺される勇気がない人が言っちゃいけないんだよ。」
「は?本当に殺されたいらしいな?死ね!!」
大男は大きく右手を後ろに引いて殴る体制になる。すると同時に、なぜか聞いたことのある。
大きな声が聞こえてきた。
「やめろ!!!!」
その声の主は、2人の看守に挟まれ、守護されている、黒い仮面をつけた謎の男だった。
「ああん!?」
大男は喧嘩を売るように言った。
「あいつを捕らえろ。」
すぐさま仮面をつけた男は、近くにいた看守に命令した。
「は!!」
看守は敬礼をしながら、大きな声で応えた。看守は大男を取り押さえ、懲罰房へ連れて行った。
あれだけ騒いでいた大男は抗いもせず、大人しかった。気づいたら仮面をつけた男は消えていて、私は作戦が上手くいった事に安堵し足から床に崩れる。
「よくできました。」
マサトが私に近づきながらそう言った。
「何か分かった?」
「なーんにも。」
「は?ふざけないで。あんなに怖い思いをしたっていうのに……」
「ごめんごめん。」
軽く言い返された私は、何も言えず困惑していた。階段の上から監視していた看守が、野太い大きな声で、告げた。
「朝食は終わりだ!!刑務作業に移行する!」
──────さて。
明にお願いがあるんだけど。
「やだ。」
「まだ何も言ってないよ。」
「嫌な予感しかしないから。」
「その予感。的中なんだけど
聞いてくれないかな?」
「はぁ…はいはい。何でしょうか。」
「実はこの刑務所の所長が怪しい。ここ2年くらいここにいるんだけど俺達の前に現れすらしなくてね。」
「2年も?あんた何して捕まったの?」
「そこかよ。俺は冤罪でちょっとな。」
「そうだったの…早く出所できるといいわね。」
「なんてね。全部嘘だよ。」
「は?ちょっと1発殴らせて。」
「やだよ。本当は詐欺して捕まったんだけど明がマジな顔してたから言い出しにくくてさ。」
「ムカつく。」
「はいはい。本題に戻るよ。
さっきも言ったけど、ここの刑務所の所長が怪しくてね。ちょっと調べたくてさ。」
「で、なにするの?」
「明さっき大男に絡まれてたじゃん?あいつドルレットって言うんだけど、気が強くてその上対抗心が強くてさ。」
さすがにその大男、ドルレットはスキンヘッドの頭にいれずみをいれててガタイもデカかったため、名前がドルレットと呼ばれるのも違和感がなかった。
「もしかして、その男と戦ってこいと?」
「そーゆーこと。ここはいつでも監視されてる。争おうとすれば所長が出て来て看守に引っ捕まえさせるかもしれない。」
「やだよ。あんたが戦えば?」
「やだね。俺は痛いの嫌だし。俺は観察力の方が優れてるからね。」
「…本当にやるの?」
「よろしく。」
マサトは軽い感じで言った。私は、渋々了承しながら疑問に思ったことをマサトに聞いてみる。
「それで?所長の事が分かったらどうするの?」
「上手く行けば所長の事が分かって、所長の悪事を世の中にバラまける。あんたも外に出られるかもしれない。そっちにとっても好都合じゃない?───」
──────朝食が終わり、
刑務作業に移行する。
「結局、所長の事は何もわからなかったじゃん。」
私はそう溜息をつきながら、椅子を組み立てる。
「そういえば、明はここの刑務所の噂、聞いた事ある?」
マサトがまた声をかけてきた。
「ないよ。」
「ここで刑期を終えて出所した人は全員殺されるって噂だよ。」
「何それ…デマでしょどうせ。」
私は謎めいた噂に困惑し、頭を搔く。
「残念ながらデマじゃないよ。あ、そこ手が止まってる。看守に見つかったら面倒だから手を動かして。それでね。この刑務所の上層部がマフィアの臓器売買と関わってるって話。」
「なにそれ。そんなのどうせ嘘だよ。噂なんだし。」
「俺の親父が体験したって言ってもか?」
「え?親父さん死んじゃったの?」
「まあね。」
「あ…ごめん」
「別にいいよ。3年前親父もこの刑務所にいた。そして刑期を終えて実際に殺された。だから俺はそれを暴きたくてわざと詐欺師として捕まった。」
私はあまりの悲しい話に、作業の手が止まる。この刑務所で人殺し?臓器売買?頭が追いつかない。するとそれに続くかのようにマサトは言った。
「そして俺は、明日出所する。」