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10
MAKO
龍
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兄弟が営む骨董品店のドアが開き、10歳くらいの少女が駆け込んできた。
少女の腕には黒猫がいて、兄弟はまたかとため息をついた。
K「兄さん、兄ちゃん、この子飼いたい!!」
NB「「捨ててきなさい」」
黒猫は抱っこされる前に構い倒されたのであろう、少女の腕の中でぐったりとしていた。
気まぐれな主に目をつけられた黒猫を憐れんでブランは平皿に水を張って持ってきた。
B「水飲ませたら元いたところに戻しておいで。ね?」
ブランは不満げに見上げてくるケイティの頭をポンポン撫でた。
N「そうそう、猫なんてここじゃ飼えないってわかってるだろ?」
レジ台の上に寝そべるようにして身を乗り出し、ノワールが説得する。
K「でもこの子、私に助けてほしいって言ったもん!」
N「またそんなことを…」
K「指輪も貰ったもん!」
B「またそんなことを…」
ケイティはポケットから金の指輪を取り出すと二人に見せた。
B「盗品か…?」
N「名前が彫ってあったりしない?」
二人はもしそれが本当なら落とし主に返したほうが良いのではないかと指輪を観察し始めた。
B「んー…Load…か?」
N「盗品にしては使った形跡もないし…」
K「ね、不思議でしょ?」
ケイティは楽しそうに目をキラキラさせて語り始める。
K「あのね、一応最初に鑑定したし、魔力を探ったりしたの。
そしたら、この世界ではない世界の魔力反応があったの!」
ケイティはそこで言葉を止めて、息を吸い込んだ。
K「つ・ま・り!この世界の人じゃない人が助けを求めて作ったのがこの指輪ってこと。ということは、この指輪は異世界に行ける凄いアイテムってことになるよね!」
はしゃいでいるケイティとまた面倒事が増えそうだと頭を抱える兄弟。
異世界で人助けなんて面倒事以外の何物でもない。
しかし、三人は異世界を股にかける商売人(転売ヤーとも言う)。
もし、助けを求めるとすれば頼りになりすぎることだろう。
N「はぁ…まじかー…」
B「まぁ、キティに危険がないなら許してあげてもいいんじゃない?」
ブランは最近のケイティのヒキニートっぷりを鑑みて、何か活動することについては賛成だった。
N「んー…とりあえず話だけ聞いて来い。絶対その場で承諾するな。俺たちで判断する」
ノワールも指輪の向こうの世界に興味がないわけではなかったので、条件だけは聞いてやっても良いと思ったのだ。
K「ありがとう!じゃ、行ってくるね!」
ケイティは嬉しそうに指輪を嵌め、その姿は兄弟の前から消えた。
※猫はログアウトしました。
K「ん…」
意識が途切れて、目を覚ます。
鏡を使っての移動では味わったことのない感覚に眉を寄せた。
異世界に行く度に気絶していては寝込みを襲われかねない。
拠点にワープ用の鏡を設置しなくては、と考えて周囲を見回すと、一人の男性が立っていた。
K(魔力が強い…けど、何か変。まるで悪魔みたいな魔力…)
男性は恭しくケイティに頭を下げるとにっこり笑った。
🫖「はじめまして主様。私はベリアンと申します」
K「はじめまして、ベリアンさん。私はケイ、あ、えっと…ケイです」
魔法を使う者は他人に本名を知られてはいけない。
そんな言葉を思い出したケイティは慌ててケイと名乗った。
🫖「ケイ様ですね。よろしくお願いいたします。
あと、我々に敬称は必要ありません。ベリアンとお呼びください」
K「あ、はい…ベリアン。あの、一つ聞きたいのですけど、我々って、この建物にいる10人くらいのことで合っていますか?」
ケイティは魔力探知で建物内の人間の動きくらいは分かるのだ。
ベリアンはいきなり仲間の人数を把握しようとした主に驚きと困惑が浮かぶ。
🫖「主様…?あ、失礼いたしました。私を含め執事が18人おります。全員主様に仕える執事でございます。あと、敬語も必要ありません」
K「18人か…私もまだまだってことね…。うん、確かに18人だわ。でも、18人も執事がいるだなんて…随分多くない?」
🫖「はい、我々「悪魔執事」は天使を狩る者ですから」
K「え!?ちょっと待って!天使を!?狩る!?」
ケイティの認識では悪魔は人間の欲を増幅させて悪さをするものであり、天使は神の使いで悪さはしないものである。
K「どうしてか、聞いても良いのかな…?」
🫖「はい、天使は人類を脅かす存在です。天使が人々を襲い、消していく。それを阻止するのが我々悪魔執事です」
K「えーっとぉ…じゃぁ私は何をすれば…?」
🫖「主様には私たちの力の解放をお願いしたいのです。
勿論執事たちが命懸けで主様をお守りしますので、主様を危険に晒すことは極力なくすつもりではあります」
K「あー…これはお兄ちゃんたちに聞かないとかな…。
あの、大きな鏡ってあったりする?できればあんまり使ってないやつ」
🫖「え?はい、ございますが…」
状況を理解できないままベリアンが部屋の壁に掛けられている姿見を指す。
K「一旦帰る!で、保護者を連れてくるから説明よろしく!」
🫖「え?主様!?えっ!?」
ケイティはソファから飛び降りると姿見に向かって短く呪文を唱え、鏡の中に飛び込んだ。
K「ただいま!お兄ちゃんたち、すぐ来てくれる!?」
骨董品店の中に並んでいた大きな鏡が光ってケイティの姿が現れた瞬間これだ。
ノワールとブランは脱力しそうになるのを堪えて、ケイティが出てきた鏡に向かった。
N「それで、どうだったんだ?異世界ってのは」
K「大きなお屋敷で18人の執事がいたよ」
B「へえ、またすごい世界に行ったんだね」
K「うん!それで天使を狩るんだって」
NB「「は?」」
K「極力危険がないように守るって言ってくれたけど…」
B「それで僕たちを呼びに来たってことか」
K「うん、説明の途中で来たの」
話は最後まで聞きなさいと叱るべきなのか、危険があると知ってすぐに兄達を呼びに来たのを褒めるべきなのか…。
兄弟は微妙な顔をしながら鏡をくぐり抜けた。
N「おー、すげーな、異世界」
B「客室とかかな?すごく立派だね」
兄弟は主の部屋を見回して感心したように頷いた。
ちょうどそこに室長を集めてきたベリアンが入室し、魔法使い側と悪魔執事側との顔合わせになった。
K「先頭がベリアン。あとは知らない」
NB「「わかった」」
兄弟は室長たちを品定めするように見て、ブランは笑顔で、ノワールは仏頂面で歩み寄った。
B「はじめまして、執事さんがた。18人いらっしゃると聞いていますが、みなさんがその代表ということでよろしいですか?」
🫖「はい、その通りでございます。保護者様、どうか敬語などお使いにならないでください」
N「それは助かる。それで、ケイトに何をさせるつもりだ?」
🫖「はい、それはこちらのルカスから説明をいたします」
🍷「ではまず、我々の敵である天使について説明を」
ルカスは簡潔に天使狩りについて説明した。
天使狩りは命懸けで、主にも危険があるかも知れないといったリスクに至るまで説明を聞き、兄弟はどうしたものかと顔を見合わせた。
N「で、天使狩りに協力するとして、こっちにメリットあるのか?」
ノワールはリスクばかり大きいお願いに、承諾するべきではないと判断した。
ブランも口には出していないがその言葉に頷いた。
✝️「メリット…ですか…」
🕯️「それについては私が。我々は協力してくれる主様のために精一杯忠義を尽くすことを約束するよ。日常生活のお世話やおもてなしをメリットにしてもらえないだろうか」
💮「とにかく何不自由ない快適な暮らしを約束する。その対価に天使狩りに協力するってことでどうだ?」
暫しの沈黙のあと、ブランが口を開いた。
B「…僕は反対だ、メリットが少なすぎる」
N「俺も。でもケイトがやりたいって言うんなら止めねぇよ。
ヒキニートが少し外出るようになったら良いじゃねぇか」
B「それはそうかも」
兄弟はクスリと笑ってケイティに問う。
NB「「どうする?」」
K「やりたい!」
兄弟は優しく頷いてケイティの後ろに立った。
兄弟はケイティの意思を尊重し、やりたいようにさせてあげようと思ったのだ。
🫖「ありがとうございます!誠心誠意主様にお仕えするとお約束いたします!」
深々と頭を下げた執事たちに、ケイティは満足そうに笑った。
他の執事たちへの顔合わせをしようと部屋を出た途端、天使が現れたというサイレンが鳴りだした。
🫖「こんなときに…」
✝️「仕方ありません、行きましょう!」
K「天使!?天使狩りするの!?」
緊迫感のある会話が飛び交う中、ケイティだけははしゃいでいた。
空気読めよ、と言いたげな目線を数名から浴びるがケイティは気にした様子もない。
🍷「主様、こちらの本を。それで力の解放ができます!」
魔導書好きなケイティは分厚い冊子をパラパラ捲り、ものすごい速さで理解していく。
K「あぁ、こういう感じかぁ…へえー…
【解放せよ】これでいい?」
別の言語で呟かれた短い呪文。
しかし、それで体中に力が湧いてくるのが分かった執事達は混乱する。
?「ベリアンさん!天使が!あと力が!」
そして、急に力が解放されて混乱している執事が一人ベリアンを呼びにやってきた。
🫖「落ち着いてください、ロノ君…主様の前ですよ」
🍽️「えっ主様!?…ちっちゃ!大丈夫なんですか!?」
K「ちっちゃ…」
🫖「ええ…恐らく…とにかく天使を倒しましょう」
室長達とロノ、ケイティと兄弟は森を駆け抜け天使が現れた場所へと急行した。
🍽️「いやがった!天使です!」
K「あれが…」
NB「「本当に天使なんだな…」」
ケイティは宙に手を翳して杖を呼び出すと、宙に浮いた。
K「【貫け。我が敵を滅せよ】」
その瞬間、杖から眩い光が放たれ、天使に向かっていく。
その光が天使の半身を抉るように貫くと、天使は何か言いながら消えていった。
K「これでいいの?」
🐏「はぁ??」
K「?」
地面に降り立ったケイティはなぜ忠義を約束してくれた執事たちに「はぁ??」と言われなくてはいけないのかと不満げだ。
B「やっぱり話をちゃんと聞くように言わないとだね…」
N「お前は守られてれば良いんだよ、戦わないの」
K「戦わないの…?守られるだけ…?そんなの嫌!」
ケイティは自分だって戦える、執事たちの役に立てる、と言いたげな目で兄弟を睨む。
💮「そうはいっても…なぁ?」
✝️「そう…ですよね…」
🫖「えぇ…」
そんな気まずい空気の中、ロノが宙を指さした。
🍽️「主様、あれ!何か落ちてきます!」
K「えっどこどこ!?」
ケイティはくるりと向きを変えて空から落ちてくる箱を目で追う。
その瞬間ケイティの姿が消え、箱の近くに現れて消え、また元の場所に戻ってきた。
🐏「…??」
K「開けて良い?」
混乱している執事たちなど目もくれず、ケイティは抱えた箱を開けようと下に置いた。
🍽️「駄目です!主様、何か危険なものが入っているかも知れませんから俺が開けます」
ロノは箱とケイティの間に体をねじ込み、箱を開ける。
ケイティはロノの肩越しに箱を見つめた。
箱の中にはもふもふした黒い何かが入っていた。
K「!可愛い!」
🍽️「これは…豚か…?」
ロノがもふもふを持ち上げると、パチリと大きな目が開いた。
🐈⬛「違います!猫です!」
全員「猫が喋った!?」
全員、その猫から発せられた言葉に驚き猫を見つめた。
K「飼いたいっ!飼っていい!?いい!?」
ケイティは喋る猫をいたく気に入ったようで、飼いたいと言い出した。
🍷「うーん…屋敷で飼うのは…」
しかし、屋敷には猫嫌いな執事もいるかも知れない。
何より衛生面が…と渋るルカスに黒猫はさらにびっくりすることを言い出した。
🐈⬛「じゃぁ、僕を雇ってください!」
🫖「うーん…主様も気に入っていらっしゃいますし…」
ベリアンが渋々と言った様子で頷くと、ケイティは嬉しそうに黒猫を抱きしめた。
K「あっ名札ついてる…むー…?ムーっていうのかな?」
🐈⬛「多分そうだと思います!」
可愛いねぇと頬ずりされながらムーが答える。
ムー曰く記憶がないとのこと。
やはり連れて帰って正解だとケイティは嬉しそうにムーを抱き直した。
かくして18人と一匹の主となったケイティ。
彼女はこれからの生活に心躍らせ、楽しくてたまらない様子で笑っている。
年相応に見えるその様子にさっきの攻撃のことは忘れようかなと思う執事たちとこれから振り回されるんだろうなと諦めはじめた兄弟。
これからどうなるのかはケイティの気分次第…