テラーノベル
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『押し入れの中』
引っ越してきたばかりの男は、毎晩午前2時になると、
押し入れから「コン、コン」と音がすることに気づいた。
最初は気にしなかった。
でも、何日経っても同じ時間に鳴る。
気味が悪くなった男は、ある夜、思い切って押し入れを開けた。
中には布団と段ボールがあるだけだった。
「なんだ、何もないじゃん!」
そう言って閉めようとした瞬間、
「コン、コン」
今度はすぐ目の前から聞こえた。
男は驚いて押し入れの奥を見る。
すると、壁に小さな穴が開いていた。
穴の向こうは真っ暗だった。
男がスマホのライトを向けると、向こう側に誰かの顔が見えた。
男は悲鳴を上げて、すぐに大家へ電話した。
事情を聞いた大家は、しばらく黙ってから言った。
「……その押し入れ、開けないでください」
「でも、壁の向こうに人がいます!」
「そんなはずありません」
大家は震えた声で続けた。
「あなたの部屋の押し入れの裏には、部屋なんてありませんから」
男は恐る恐る押し入れを見る。
すると、さっきまで開いていた小さな穴が消えていた。
そして、押し入れの中から、
「コン、コン」
と音がした。
今度は音と一緒に、男の名前を呼ぶ声が聞こえた。
**「……もう逃さないよ。」**
コメント
1件
「コン、コン」って音から始まる静かな不気味さが、最後のセリフで一気に恐怖のど真ん中に持って行かれました…。押し入れの奥の穴が消える、裏に部屋がないと言われる——その“あるはずのない場所”から名前を呼ばれる絶望感、ぞっとしました。短いのに、読後にじわじわ来るタイプのホラー、すごく好みです。続き、読みたい気持ちと怖い気持ちと…(笑)🌙