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K-Takasaka
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#スクラッチャーズ
#K-T
K-Takasaka
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K-Takasaka
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地下施設周辺の確認を終えたK-Tたちは、警察車両へ戻っていた。
五人組はすでに移動している。
道路の向こうへ消えていく車を見送りながら、ルノーが腕を組んだ。
「彼らは、君の知り合いではないんだな?」
K-Tは防護ヘルメットを外し、後部座席へ置いた。
「知り合いだ」
「やはりそうか」
「ただし、任務には関係ない」
「それはもっと複雑だな」
ルノーの隣にいた警察官が、腕を組んだまま口を開いた。
先ほど五人に職務質問をしていた、強面の警察官である。
名前はジャン。
「彼らは何者だ?」
「共同生活をしている仲間だ」
「共同生活?」
「日本から来た」
「君を追って?」
「おそらく」
ジャンの目が大きく開いた。
「家出したのに追われているのか!?」
「家出ではない」
K-Tは即座に否定した。
「勤務で来ている」
「置き手紙には、何と書いた?」
「色々あったのでフランスへ行ってきます。探さないでください」
ルノーが黙った。
ジャンも黙った。
少し離れた場所で無線を確認していた警察官まで、こちらを振り返った。
「それは、ほとんど家出ではないか」
「違う」
「しかも、探さないでくださいと書いて、実際に探されている」
「想定していなかった」
「想定しろ」
ジャンが重々しく頷いた。
「よし。協力してやる!」
K-Tはゆっくりとジャンを見た。
「必要ない」
「必要だ。家出人を守るのも、警察の大切な仕事だ」
「家出人ではない」
「なら、追跡されている警察官を守る」
「それも必要ない」
ジャンはルノーに向き直った。
「彼らが前に現れたら、我々が身分を隠して時間を稼ぐ」
「なぜ身分を隠す必要がある?」
「彼らはK-Tを探している。なら、K-Tが別人に見えればいい」
ルノーがK-Tを見た。
「変装するのか?」
「偽名を使う」
ジャンが真剣な顔で言った。
「今日から君は、トマだ」
「なぜトマ?」
「フランス人らしい名前だからだ」
「単純すぎる」
「単純なほうが疑われない」
K-Tは断ろうとした。
しかし、ルノーが苦笑しながら肩をすくめる。
「彼らは、君が警察官だと気づかなかった。偽名まで使えば、もう絶対に分からないだろう」
「すでに分かっていない」
「なら、念のためだ」
ジャンがK-Tの肩を叩いた。
「安心しろ、トマ。俺たちが協力する」
K-Tはしばらく黙った。
「……好きにしろ」
「よし、決まりだ!」
それから数時間後。
五人はパリ市内のカフェにいた。
地下施設で見つけた狐面の暗号通信は、すでに消えていた。現場へ向かった頃には、警察が周辺を封鎖し、調査を終えていたのである。
「また一足遅かった」
マサカゲが苦々しく言った。
「Kさんが先に来たんだ」
カキはテーブルを叩いた。
「絶対にそうだ!」
「K-Tだと断定する理由は?」
「俺たちより先に事件現場へ行ける人は、Kさんしかいない!」
「パリには警察も消防も救急隊もいる」
「でも、Kさんは全部できる!」
メバルがため息をつく。
「K-Tを探すなら、もっと慎重に行動しないと。今のままだと、警察に止められてばかりだよ」
「分かった。次は静かに探す」
カキは姿勢を正した。
「静かに、叫ぶ」
「それは静かとは言わない」
そのとき、店の外を一台のパトカーが通り過ぎた。
カキが椅子から立ち上がる。
「Kさん!」
カフェ中の客が振り返った。
メバルがカキの服をつかみ、無理やり椅子へ戻す。
「声を抑えて!」
「今の車、地下施設の方向から来た!」
「だから?」
「Kさんが乗っている!」
「だから、パトカーを見たら全部K-Tだと思わないで」
マサカゲが窓の外を確認する。
「車両番号は?」
「見てない!」
「乗っていた警察官の姿は?」
「見てない!」
「では、何を根拠に?」
「パトカーの雰囲気!」
アオノが端末に記録する。
「新しい情報です。市内の警察車両の巡回予定が公開されています」
「Kさんの車両は?」
「判別できません」
「全部確認するぞ!」
「しないでください」
その頃、別の通りでは、K-Tがルノーとジャンとともに巡回していた。
今回は防護装備ではなく、通常の制服姿だった。
ただし、五人と遭遇する可能性を考慮し、ジャンが無線で周辺の警察官へ連絡している。
『全員へ。対象の五人組を確認した場合、K-Tの名前を出すな。彼女はトマだ』
無線の向こうで、別の警察官が尋ねる。
『トマとは誰だ?』
『K-Tだ』
『それは偽名になっていないのでは?』
ジャンは無線を切った。
「今のは忘れろ」
「名前を言った」
ルノーが指摘する。
「現場では誰も聞いていない」
「無線は全員に届いている」
「細かいことは気にするな」
K-Tは何も言わず、窓の外を見ていた。
通りの先に、五人の姿がある。
カキは地図を逆さに持ち、メバルに直されている。
マサカゲは建物の入口を確認し、アオノは周辺の電波を調べている。
ミステーは露店の店員から、なぜかパンを一つ受け取っていた。
「いたな」
ジャンが言った。
「どうする?」
「別の道へ行く」
「いや、協力すると言っただろう」
「近づかないことも協力だ」
しかし、ルノーはすでに速度を落としていた。
五人の前を通り過ぎる際、ジャンが窓を開ける。
「道を尋ねてもいいか?」
フランス語で、非常に低い声が響いた。
カキたちは振り返った。
運転席にはルノー。
助手席にはK-T。
後部座席にはジャン。
K-Tは自然なフランス語で、ジャンに話しかけた。
「北側の通りは混雑している。次の交差点を右へ」
発音は完璧だった。
言葉の速さも、抑揚も、現地の警察官と変わらない。
五人には、K-Tが何を話しているのかまったく分からない。
ジャンが頷く。
「なるほど、トマ。助かった」
カキが窓へ近づく。
「すみません!」
K-Tは、フランス語で返した。
「何でしょうか?」
その声も、発音も、普段の低い声とは違って聞こえた。
カキは固まる。
「えっと……Kさんを知りませんか?」
K-Tは一瞬だけカキを見た。
「Kさん?」
ジャンが横から通訳するふりをする。
「この人は、迷子の知人を探しているらしい」
K-Tはフランス語で返した。
「私はトマです。Kという人物は知りません」
ルノーが吹き出しそうになる。
カキは目を細めた。
「トマさん?」
「はい」
「本当に?」
「本当です」
「Kさんじゃない?」
「違います」
「声が似ている」
「よく言われます」
K-Tは、完璧なフランス語で答えた。
さらに、フランス人らしい自然な身振りで肩をすくめる。
カキは混乱した。
「フランス語、めちゃくちゃ上手ですね」
「警察官ですから」
「Kさんも、フランス語が話せるのかな」
「知りません」
「でも、Kさんも外国語が得意で――」
メバルが横から割り込んだ。
「すみません。この人、誰でもK-Tに見えてしまうんです」
「誰でもじゃない!」
「パトカーに乗っている人は全員だよ」
マサカゲが冷静に補足した。
K-Tは少しだけ眉を寄せた。
その表情に、カキが反応する。
「今、眉を寄せました?」
「フランスでは、よくある表情です」
「そうなのか?」
カキはメバルを見る。
「フランスの人は、みんなああいう顔をするの?」
「しないと思う」
「トマさん、Kさんに似てる」
「似ていません」
K-Tはフランス語で答えた。
五人には、その否定がいつものK-Tと同じ意味に聞こえなかった。
ただの外国人警察官が、丁寧に返事をしているようにしか見えない。
ジャンが窓を閉める。
「では、我々は行く」
「待ってください!」
カキが呼び止める。
K-Tは振り返った。
「何でしょうか?」
「トマさん。もしKさんに会ったら、伝えてください」
「何を?」
「俺たちは、追いかけてるんじゃない。迎えに来たんだって」
K-Tは黙った。
カキは続ける。
「それから、勝手にいなくなるなって」
「探さないでください、と書いてあったのでは?」
K-Tはフランス語で尋ねた。
カキは驚いた。
「え?」
「何でもありません」
K-Tは視線を前へ戻した。
「伝えておきます」
「本当ですか?」
「はい」
パトカーが走り出す。
五人はその場に残された。
「いい人だったな」
カキが言った。
「警察官だからね」
メバルが答える。
「フランス語も上手かった」
「フランスの警察官なら普通なのでは?」
マサカゲが言う。
アオノが端末を確認した。
「警察車両の登録情報を調べました。助手席の警察官の名前は、トマではありません」
カキが振り返る。
「じゃあ、偽名だったのか!」
「そこに気づくのが遅い」
五人はパトカーを追って走り出した。
しかし、K-Tはすでに次の角を曲がっている。
車内で、ジャンが笑いをこらえていた。
「見事だったぞ、トマ」
「やめろ」
「家出人を守るためなら、偽名くらい使わないとな」
「家出ではない」
「そうだったな。勤務中に、仲間から追跡されている警察官だ」
ルノーが尋ねる。
「彼らは、最後まで君に気づかなかった」
「フランス語で話したからだ」
「それだけか?」
「それだけだ」
K-Tは窓の外を見た。
遠ざかっていく五人の姿が、建物の向こうへ消える。
「……あいつらは、俺がフランス語を話せるとは思っていない」
「実際は、かなり上手いな」
「必要だった」
「何に?」
「隠れるために」
ジャンが満足そうに頷いた。
「よし。今後、君はトマだ。五人の前では絶対にK-Tと呼ばない」
「分かった」
その直後、無線が入った。
『トマ、次の巡回区域へ向かってくれ』
K-Tは無線を取る。
「了解」
返事は、完璧なフランス語だった。
後部座席のジャンが笑う。
「似合っているぞ、トマ」
K-Tは無言で無線を戻した。
一方、五人はカフェへ戻り、さきほどの警察官について話し合っていた。
「トマさんは、Kさんではない」
カキが言う。
「ようやく納得したの?」
「うん」
「どうして?」
「Kさんなら、あんなにフランス語が上手いわけがない」
その頃、遠くのパトカー内で、K-Tが無線に向かって流暢なフランス語を話していた。
完璧な発音で、淀みなく、現地の警察官と何一つ変わらない声で。
五人はまだ、K-Tが警察官として目の前にいることに気づいていなかった。
そしてK-Tは、今日から正式に「トマ」となった。
コメント
1件
第4話、めっちゃ面白かったわ!K-Tがまさか偽名トマで警察官やってるとはね…。フランス語ペラペラでカキたちをまんまとかわすところ、痛快すぎたw でも最後の「迎えに来たんだ」ってカキの台詞にはグッときたな。あの言葉、ちゃんとK-Tに届いてるといいな。追う側と逃げる側、どっちも応援したくなる展開ずるいわ🔥