※犯罪者のモブが出てきます
※🏺が全く可哀想じゃありません
本人は何処吹く風の中署員だけが気を揉み、心配する生活が1週間過ぎた頃事件は起こった
とっくに発情期も終わりを迎え、ご機嫌にパトロールを続けるつぼ浦に一本の電話が入った
相手は非通知
出るとボイスチェンジャー特有の、特徴を消された高い声が聞こえた
「はい、こちら特殊刑事課つぼ浦ぁ」
「あぁ、つぼ浦さん?」
「そうだぜ?お前は誰だ」
「私、先日の事件でつぼ浦さんに助けていただいた者なのですが。本当に助かったのでお礼をしたくて…」
「あぁ?事件つったってどれかわかんねぇな。特殊刑事課は優秀だからな」
「そうですよね。会って姿を見せればわかるのと思うので、どこかで落ち合えませんか?」
「あー、まぁ今ちょうど暇だから別にいいけどよ…あんた名前は?」
「名前を言ってつぼ浦さん分かるんですか?」
「多分わからん。ちくしょうやられたな。まぁいいや、場所はどこだ」
電話の相手に伝えられた場所は西海岸付近のコンビニ
わざわざ市街からズレた指定場所にボイスチェンジャー、更には名前を名乗らないとはかなり怪しいヤツだ
だが怪しいヤツとなればこそ、特殊刑事課の出番
つぼ浦はすぐに向かうと伝え電話を着ると、砂色ジャグラーのアクセルを勢いよく踏んだ
到着すると案の定といった所で、怪しい仮面をつけた2人組が早々につぼ浦に手錠をかけ誘拐
頭には黒い袋を被せられ、車の後部座席に押し込められた
「あ゛〜〜!!助けてくれ〜!!こいつら誘拐犯だ!!!」
「うるせぇな!静かにしろ、どうせ騒いだって今から行くところに人はいない」
「あぁ?どこに連れてこうってんだ」
「お前をゆっくり痛ぶれるところだよ。おい、警察の退勤は出来たか」
「あぁ、多分これで大丈夫だ」
「おい、勝手に触んな」
運転席にいるやつが実行犯のようで、隣に座るやつは命令通りつぼ浦の持つスマホと無線を使い、勝手に退勤にしてしまった
これでは警察のGPSにつぼ浦の所在はもう乗らない
「あー、で、何が目的だ」
「それは着いてからのお楽しみだな」
運転手は全く動じていない様子のつぼ浦の顔がどのように歪むのかと想像しながら目的地へ走り続けた
かなりの間車を走らせ、ようやく目的地に着いたようだ
車から無理やり出されて歩かされた先は小さな掘っ建て小屋で、目隠しを外され周りを見渡すが随分と簡素な作りのようだ
目の前の2人も先程と変わらず仮面を被っており、誰かわからない
「で?俺に何の用だよ」
手錠をされ、誘拐された状況でもなお強気な姿勢のつぼ浦に犯人は少し下品な笑いを浮かべながら応えた
「ハハッ、つぼ浦。お前どうやらオメガらしいなぁ」
おめが。オメガ。そうだ、そういえば少し前に救急隊の奴らがそんなこと言ってたな
かなりの間を作りながらもどうにか記憶を手繰ったつぼ浦は自信満々に言った
「あぁ。らしいな」
「…え?」
「ん?なんだ?」
「いや、…オメガなのか?」
「あぁ、俺はオメガってやつらしいぜ」
「お前自分がオメガって知らなかったのか」
「知らないも何も、この間急に言われたんだよ」
犯人は膝から崩れ落ちる
沢山の金と人脈を使いやっと手に入れたつぼ浦の秘密
絶望の表情を浮かべるつぼ浦を脅して心ゆくまでゆすってやろうと考えていたのに、当の本人はどこ吹く風…どころか未だにオメガの自分が今置かれた状況を1ミリも理解出来て居ないようだ
「おまえ…やばいな」
「ヤバいのはお前の方だぜ。このロスサントス市警で一番の実力を持つこの俺を誘拐したんだからな。もう今頃署内全員で血眼になってお前を探してるだろうよ」
嘘まみれのいつもの発言も、去勢を張っているようには見えない
「はぁ、仕方ねぇ。これは使いたくはなかったんだが…おい、あれを出せ」
もう1人に命令をすると持ってこられたのは仰々しい箱にしまわれた小瓶
「これはなぁあの、餡ブレラが開発した“発情期誘発剤”だ」
「ん?あぁ、あの悪徳製薬会社か」
「お前、餡ブレラに対してそんな認識なのか…でも舐めてると一溜りもねぇぞ!薬の効果は確かだからなぁ」
「どんな効果なんだ?」
「いや、名前の通りだよ!お前も発情期くらい知ってるだろ」
「発情期?あぁ、なんか定期的にくるやつがそうらしいな」
「んん、まぁそうだ。この液体の匂いを吸うと、強制的に発情期がやってくる」
「なんだと!?」
「ようやく事の重大さに気づいたようだなぁ!!」
初めて動揺を見せるつぼ浦に対して、悪役になりきって声を高らかに楽しむ犯人だが、つぼ浦が想像する発情期とはいつも来ている微熱の事だ
たかが3日間の体のだるさを発情期の本質と勘違いしているつぼ浦は、こよなく愛する自由を制限されるためにかなり嫌悪していた
そうとは知らず、初めから怯えて懇願すると疑わなかった犯人はようやく自分の筋書き通りとなり嬉々としてつぼ浦に迫る
「やめろ!あれは好きじゃない!」
「ふはは!好きか嫌いかなんて聞いてないんだよ!恨むなら好き勝手しまくった過去の自分を恨むんだなぁ」
「なんだ、俺はお前とどこかで会ったことあるのか?」
「お前は覚えてないだろうなぁ。でも俺はあの時の屈辱を忘れた日は無い。そう、無抵抗の状態でお前にロケランぶっ込まれたあの日をなぁ!」
「あぁ?どれだ身に覚えがありすぎてどれかわからん」
「なんでわかんねぇんだよ!!」
犯人は仮面の下でゼェハァと荒く呼吸をしている
コホンと咳払いをすると話を戻した
「お前と話したって無駄なことはよく分かった、さっさとお楽しみタイムへと入ろうか」
どうにか気持ちを切り替えたようで、キュポンと音を立てて小瓶の蓋を取った
「あぁ、お前がこの薬を嗅ぐとどうなるか楽しみだ。なぁ?つぼ浦」
ハンカチを小瓶の口に当てるとゆっくりとひっくり返す
ピンク色のとろみのある液体がじんわりとハンカチに染み込んでいく
「…こんなことしても多分俺は変わんねぇぜ。お前を思い出すこともない」
「そうだなぁ。だからこれからは二度と忘れられないようにしてやるよ。発情期に入ったお前の痴態をしっかりと記録に残してなぁ?」
つぼ浦はこの場にもう1人にいることを思い出し部屋の端のほうを見ると、男はカメラをいじって電源を入れていた
「この映像が出回れば警察署には居られなくなるかもなぁ?」
「え、そうなのか?」
微熱で解雇なんかあるのか?と思うが、ただでさえ普段からやらかしまくってるつぼ浦だ
可能性はあるか?と勝手に1人で納得してしまう
「やって見たらわかるだろう。出来が良かったら街全体で公開してもいいなぁ」
「なに!?やめろ!何が目的だ!」
何度もいうが、つぼ浦は発情期の事を微熱だと思っている
弱った姿をロスサントス全域で公開するなんてとんでもねぇ!
なんてつぼ浦が思っているとは知る由もない犯人は、メス猫のように痴態を晒して媚びてくれば抱いてやってもいいな、なんて下卑た妄想に浸っている
「目的?そんなものはねぇ!ただお前が惨めに喘ぐ姿を見るのが心底楽しみなだけだよ!」
そういうと勢いよく薬の染み込んだハンカチをつぼ浦の口元に押し付けた
始めは息を停めたり首を振って抵抗していたつぼ浦だが、やがて酸欠になり咳き込みながら薬を吸い込んでしまう
「……がはッッ!ふぅッ…げほげほ!!…」
「はッ、ハハハハ!!どうだ体の調子は。この薬は即効性が強いらしいからなぁ。初めは体が熱もってくるらしいぞ」
「……ふぅ…ふぅ、ぉ…なに……がする」
「あ?なんだって?」
ハンカチの中で声をくぐもらせながらつぼ浦が何かを訴えている
もう十分薬も回っただろ
早く悲痛に満ちたつぼ浦の懇願を聞きたいと犯人はハンカチを離した
「はぁ…はぁ………ぉいしそ…な、…にぉぃが…する」
ぜぃぜぃと酸素を取り込みながら犯人の望んだ通りに何かを訴えるつぼ浦
しかし内容は噛み合わない
「ん、なんて言った」
「は、うまそうな…におぃがすんな、これ…どっかでかいだことがある」
美味そうなにおい、そう言ったか?こいつ
犯人は耳を疑いながらも性的興奮をそういう風に表現するヤベー奴か?と思っていた所つぼ浦は続けてこう言った
「あぁ…あれだ、おもいだした。うなぎの蒲焼だ。日本の飯だな。あー、じゃぱにーずふーどってやつだ」
うなぎ
うなぎの蒲焼…
いやいや存在は知っているが…手が出るかぎりぎりの大金をはたいて手に入れた餡ブレラ秘蔵の秘薬が…蒲焼?
「うな丼でもいい、まぁあの美味そうなタレの香りだな。腹が減ってきた」
いつの間にか元の調子に戻ったつぼ浦はよっこいせと手錠のまま立ち上がる
「手錠もかかってるし、手持ちに飯もないからさっさと帰って飯屋行かねぇと餓死しちまう。それじゃあな」
「…おい。ふざけんなよ、お前。どれだけ俺の事をこきおろしたら…もういい、こいつをボコボコにして二度と舐めた口叩けなくしてやる!」
激昂した犯人はもう一人の男に合図をすると二人がかりで掴みかかり拳を振り上げた、その時
バチンッ
大きな音と共に倒れ込む男たち
入口から差し込む光と共に目に映ったのは、いつもの気だるげな鬼の仮面
いや、よく見ると急いで来たようで肩を上下に揺らしている
「はぁ、危なかった。犯人に対して煽るようなことするなよ」
「いや、大丈夫すっよ。プロペラの音聞こえてたんで」
犯人2名に手錠をかけながら、青井は小さくため息を吐いた
次で終わりです
やっとアオセンがいっぱい出ます
犯人役はジョーカーとかキミトスとキャプテンわきをとか、色々候補はあったんですが
役回りがあまりにもクズ過ぎたので勝手に解釈違い起こしてモブになりました
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