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『昼寝してる風間君を見つけたら、しんちゃんは止まれない』
放課後の図書室。
テスト前で人は多いけど、夕方になるにつれて静けさが増していく。
その隅の窓際で、風間君は開いた教科書の上に腕を置き——
こてん、と眠ってしまっていた。
頬に夕陽が当たって、
まつげが影を作っている。
「……あ〜、これはかわいいゾ」
しんのすけは小声でうっとりしながら、
風間君の向かいの席に座る。
動く気配なし。
完全に寝ている。
(風間君、疲れてたもんな〜。
こういうときは……)
しんのすけは風間君の前髪をそっとかきあげる。
「今日の風間君、ちょっとがんばりすぎたゾ」
耳まで赤くなりそうなほど近い距離で、
ひっそりと見つめる。
すると——
「……しんちゃん……?」
微かに目を開けた風間君が、
半分寝たままの声で名前を呼んだ。
しんのすけは思わず口元がゆるむ。
「ん、ここだゾ〜」
「……なんで……そんな近いの……」
「かわいいから」
「っ……寝れない……よ……」
そのひと言だけで、風間君の眠気は全て吹き飛んだ。
心臓だけがふわふわ揺れている。
しんのすけは静かに笑って、
風間君の頭をそっと撫でた。
「もう少し寝ていいゾ。
風間君が寝てる間は、オレが見とくから」
「……見とくって……
なんか……恥ずかしい……」
「じゃあ、“見守る”にしとく?」
「……どっちも恥ずかしい……っ」
結局、風間君はそのまま眠れなかった。
でも——
胸の奥がふわっとして、
今までで一番あたたかい“放課後のお昼寝未遂”になった。