テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
る あ 。
743
#イラスト投稿
鬼灯 哀雷⚔️🥀
3,827
361
スタートーー‼️
――午後10時45分。
月影アイランドの夜。
昼間の喧騒が嘘のように静まり、海岸沿いには冷たい風が吹いていた。
空には大きな月。
その光が、海面に一本の道を作っている。
「……本当に来るのかな」
美月は海を見つめながら呟いた。
手にはカメラ。
その隣にはコナンが立っている。
「予告には『午後11時』って書いてあった。あと15分だ」
「アルカディア号が……」
美月は昨日撮影した写真を見る。
そこには、確かにあの船が写っていた。
五十年前に消息を絶った豪華客船。
アルカディア号。
「でも、船が突然現れるなんて……」
「普通ならありえない」
コナンが答える。
「だからこそ、何か仕掛けがあるのかもしれない」
「やっぱり、偽物なのかな?」
「それもまだ分からない」
コナンは海を見つめる。
「ただ、一つだけ確かなことがある」
「何?」
「誰かが俺たちを、アルカディア号へ導こうとしてる」
美月は黙った。
地下の映写室。
五十年前の少女。
蒼月の涙。
そして――
『今夜、船は再び現れる。』
すべてが一本につながっている。
⸻
◆
午後10時58分。
海面に変化はない。
波が静かに揺れているだけだった。
美月はカメラを構えた。
「……あと二分」
「準備はいい?」
「うん」
コナンも双眼鏡を取り出す。
――午後10時59分。
月が雲の向こうへ隠れた。
辺りが、一気に暗くなる。
「……?」
美月が空を見る。
その瞬間。
海の向こうから――
ゴォォォォ……
低い音が響いた。
「今の音……!」
コナンが海を見る。
霧が出てきた。
白い霧が、海面をゆっくりと覆っていく。
美月はカメラを握りしめた。
「来る……」
そして――
午後11時。
霧の向こうに、
巨大な船影が現れた。
「……!」
美月は息を呑む。
船体。
甲板。
煙突。
船首。
そして――
船体に刻まれた名前。
ALCADIA
「アルカディア号……」
コナンも言葉を失う。
その船は、五十年前の写真に写っていた姿と完全に同じだった。
古びた船体。
しかし、沈没船のような傷みはない。
まるで――
五十年前から時間が止まっているかのようだった。
「どうして……」
美月が呟く。
「こんなこと……」
コナンは答えられなかった。
そして。
アルカディア号の甲板に――
一つの人影が現れた。
「……誰?」
美月がカメラを向ける。
月が雲から顔を出す。
その光が人影を照らした。
「……!」
美月の目が大きく開く。
そこに立っていたのは――
昼間、資料館で見た写真の女性。
白石澪。
五十年前にアルカディア号とともに消息を絶ったはずの人物だった。
「そんな……」
美月は震える声で言った。
「写真と……同じ姿……」
コナンは双眼鏡を覗く。
「待て……」
「どうしたの?」
「あの人――」
コナンの目が鋭くなる。
「写真と違う」
「え?」
「髪型も服装も同じに見えるけど……」
コナンは甲板を確認する。
「足元を見てみろ。」
美月が目を凝らす。
白石澪らしき女性の足元。
そこには――
薄い霧がまとわりついている。
「……足跡がない」
「そう」
コナンが呟く。
「本物の人間じゃない可能性がある」
その瞬間。
女性がこちらを向いた。
そして――
ゆっくりと手を上げる。
その手には、
蒼月の涙。
青い光が夜の海を照らした。
⸻
◆
「……あれ、本物なのかな」
美月が呟く。
コナンは海岸に置かれた監視カメラを見た。
「島の監視システムを確認してみよう」
「どうやって?」
「博士に連絡する」
コナンがスマートフォンを取り出す。
しかし――
圏外。
「……通信が切られてる」
「え?」
「島の通信設備が一時的に遮断されてる」
コナンは海を見る。
「誰かが計画的にやってる」
その瞬間。
アルカディア号から――
汽笛が鳴った。
――ボォォォォォ……。
そして船の側面に、一つの文字が浮かび上がった。
07
「また『07』……!」
美月が叫ぶ。
数字は青く輝き、すぐに消えた。
次に――
船の甲板に光が集まる。
その光が、一本の線になって海面へ伸びていく。
まるで、
船へ続く道。
「コナン君……」
「ああ」
コナンは真剣な表情で海を見つめる。
「俺たちを呼んでる」
「……行くの?」
「行かなきゃ、真実は分からない」
美月は少しだけ迷った。
だが――
カメラを強く握る。
「行こう」
二人は海岸に用意されていた小型ボートへ向かった。
⸻
◆
小型ボートが夜の海を進む。
アルカディア号は、少しずつ近づいてくる。
「近くで見ると……本当に大きい」
美月が見上げる。
船体には五十年間の時間を感じさせないほど、はっきりと文字が残っている。
ALCADIA
「この船が、本当に五十年前の船なら……」
コナンが呟く。
「五十年間、どこにいたんだ?」
その答えを出す前に――
ボートが船体に近づいた。
――ガシャン。
自動的にロープが降りてくる。
「……誰かが待ってる」
美月が呟く。
コナンが先に船へ乗り込む。
「気をつけて」
「うん」
美月も続く。
二人が甲板に立った瞬間――
汽笛が鳴った。
――ボォォォォ……。
船がゆっくりと動き始める。
「えっ!?」
美月が海を見る。
「出発した!」
「まずい!」
コナンが操舵室へ向かう。
しかし――
操舵室には誰もいない。
それなのに、船は動いている。
「自動操縦……?」
コナンが計器を見る。
「いや……」
速度計。
方位計。
航海灯。
すべてが正常に作動している。
「誰かが遠隔操作してる」
「じゃあ、私たちをどこへ……?」
コナンが航路図を見る。
船は――
東京湾の中央へ向かっていた。
⸻
◆
その頃。
月影アイランドの海岸。
一人の黒いコートの人物が立っていた。
手には通信機。
「乗ったようだな」
通信機の向こうから声が返ってくる。
『はい』
「ならば、予定通りだ」
人物は海を見る。
遠ざかっていくアルカディア号。
「五十年前の航海を……」
小さく笑う。
「もう一度、始めよう」
そして――
その人物の手元で、
蒼月の涙と同じ形をした青い装置が光った。
⸻
◆
アルカディア号。
船内。
美月とコナンは、誰もいない廊下を歩いていた。
壁には五十年前のままの案内板。
食堂。
客室。
大広間。
どこにも人の姿はない。
「本当に誰もいない……」
美月が小声で言う。
「でも、電気はついてる」
コナンが壁を見る。
「電力が供給されてる」
「じゃあ、誰かが管理してるってこと?」
「その可能性が高い」
そのとき。
――カシャッ。
美月のカメラが勝手にシャッターを切った。
「え?」
写真を確認する。
そこには――
今歩いている廊下。
しかし写真の奥に、
一人の少女が立っていた。
「……!」
美月は振り返る。
誰もいない。
「コナン君、これ……」
「……」
コナンも写真を見る。
「この少女……」
美月が呟く。
「資料館にあった写真の子だ」
五十年前の少女。
その少女が――
今の船内に写っている。
「そんなはず……」
コナンが写真を拡大する。
少女は廊下の奥に立っている。
そして――
こちらを見ている。
首には、あのペンダント。
三日月と涙の紋章。
その瞬間。
船内放送が突然入った。
――ザザッ。
『……聞こえますか』
「!」
美月が顔を上げる。
聞こえてきたのは――
少女の声だった。
『あなたたちが、この船に来ることは分かっていました』
「誰!?」
コナンが叫ぶ。
『お願いがあります』
少女の声は続く。
『どうか……』
一瞬、ノイズが入る。
『私たちの最後の航海を、終わらせてください。』
――プツッ。
放送が切れる。
美月は呆然とする。
「最後の航海を……終わらせる?」
コナンが考え込む。
「つまり、五十年前の事件はまだ終わってないってことだ」
その直後。
船が大きく揺れた。
「きゃっ!」
美月が壁に手をつく。
「何だ!?」
コナンが窓を見る。
海の向こうに――
巨大な青い光が浮かんでいた。
その光の中から、何かが近づいてくる。
船。
ではない。
もっと巨大な――
海底から浮かび上がる何か。
「……あれは……?」
美月が目を凝らす。
青い光に照らされて、その姿が少しずつ現れる。
古代遺跡のような巨大な構造物。
そして、その中央に刻まれていたのは――
三日月と涙の紋章。
コナンが息を呑む。
「まさか……」
アルカディア号が向かっていたのは、
東京湾の中央ではなかった。
そのさらに下――
海の底に眠る、謎の遺跡だった。
そして船内のどこかで、
誰かが静かに笑った。
「……ようこそ」
その声とともに――
アルカディア号の扉が、
ひとりでに閉じた。
――第6章・終――
次章予告
第7章「海底遺跡と蒼月の涙」
アルカディア号が向かった先に現れた、謎の海底遺跡。
五十年前、船が姿を消した理由は、この遺跡と関係していたのか?
そして美月たちは船内で、白石澪が残した最後の記録を発見する。
そこに記されていたのは――
「蒼月の涙」の本当の力と、アルカディア号が消えた夜の真実だった。
コメント
3件
いぬ🐶さん、第6章読んだわ!午後11時に霧と共に現れるアルカディア号、その甲板に立つ白石澪……足跡がないっていうコナンの指摘がゾッとしたね。しかも船内の写真に五十年前の少女が写ってて、「最後の航海を終わらせて」って放送が入る流れ、ミステリとしての緊張感が半端なかった。青い光の中から海底遺跡が現れるラストも次章が楽しみすぎる🔥 美月とコナン、無事に帰れるのか心配になりながらも続き待ってるよ!