あべふか
阿部side
『阿部ちゃ~ん…』
「えぇぇほんとにどしたの」
『ちょっとねぇ、色々あって』
「…そっか〃、まあみんな色々あるよね。俺も色々あったもん笑」
『だろうねぇ、わら』
「だろうね…?笑」
雪崩れ込むように自宅に訪問してきた彼はなんだか衰弱しているように見えた。何かあったのかな、聞きたいけど俺が聞いても良いことなのかな。とりあえず俺が今出来ることは弱ってる彼を支えること。一緒にいて、って言おうかと思ったけれどそんなことを言う必要は無さそうだったからその言葉は胸の内にしまった。
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目黒side
【…はぁ、】
「なーにおっきいため息ついてんの笑」
【あ、阿部ちゃん。いやちょっと昨日ねぇ…】
「あー…佐久間のこと?」
【え、何で知ってんの?】
「合ってた笑 勘だよ勘。振り向いて貰えそうにないんだ?」
勘でそんなのわかるもんなんだ。あ、でもラウール前俺が佐久間くんのこと好きなの知ってたし阿部ちゃんとそういう会話してたのかな。その線全然ありそうな気がする。そんなことを考えていたら問い掛けが飛んできて静かに頷く。阿部ちゃんはこういう悩み無さそうで良いよなあと思っていた矢先に聞こえてきた発言は意外だった。
「辛いよねぇ、わかるわ…」
【…?あぁ過去の話?】
「…んーん、全然今。めめにだから言うけど俺今好きな人いんの。絶対叶わないけどね」
意外?なんて笑う彼の目は恋をしているとき特有のキラキラしたものではなくて、それをも超越したような落ち着いたものだった。ずっと一緒にいる人のことを好きになったのだろうか。それとも好きな気持ちに何年も蓋をして、今溢れだしてしまったからだろうか。彼のことだからきっとどちらもだろう。ぁ、と小さく声を漏らす彼の目線の先に居たのは
【ふっかさん…】
「…内緒ね、」
【え、あ、ふっかさんなの?】
「そう。いつからとか今になったら何処を好きになったかもわかんないんだけどさ、ムカつくくらい愛してる」
彼みたいに真っ直ぐな言葉を言えたなら、俺も…。そう思ったけれど彼は彼で本人にはこの想いを伝えられないことをもどかしく思っているらしい。阿部ちゃんの長い恋が実るといいな。そう思った直後に目に入った、”あざとい”に定評のある彼の獲物を狙った肉食獣のような眼が忘れられない。
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阿部side
『多分もう望みないんだろうなぁ』
「それは…そうかもね、辛かったよね」
『…うん。まーでも照は自分で幸せ掴むタイプだろうし、たまたま相手俺じゃなかっただけだし。仕方ねえわ』
話を聞いているとどうやら照と何かあったらしい。ふっかは照のこと大好きだもんなぁ、知ってるけどどうしても諦めらんない。詳しくは聞けなかったし完全に振られたとかじゃないけれど、自分意外に好きな人が居ることに確信が持ててしまう出来事があったらしい。…俺なら、そばにいるときは安心をあげられるしいない時でも心配はさせないのに。こんな時間に、深夜2時に彼が俺に二人で会いたいと言ってきただなんてそう受け取ってしまっていいのかな。彼の顔が近付いてくる。そしてそのまま唇が触れた。…俺の手のひらに
「…ふっかダメだよ、俺は照じゃないから。」
『…じょーだんだって、わら』
「うん、その代わりって言ったらあれだけどさ」
言わなきゃ、変わらない。この関係の答え合わせをしたい。
“ぎゅってして、いい?”
言いたかったのに、言えなかった。あの後俺が何を言ったのかはあまり記憶にないし、結局俺と居ても一人で居るときと変わらないと思ったのか彼は帰ってしまった。彼との関係に名前はつかなかったし、彼との溝は埋めきることが出来なかった。空欄があるままの回答用紙はいつになったら埋まるのだろうか、テストの時間はいつも限られていると言うのに。
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深澤side
阿部ちゃんには悪いことしたなぁ。一人で居たくなかったからこんな時間に押し掛けても怒らなさそうな彼の元へ行かせて貰ったけれど、申し訳なくて出てきてしまった。深夜3時に外に一人でいるとか俺怪しすぎんだろ。もう出てきちゃったから仕方ねえけどさ。数時間前は幸せだったのに、俺なんであんな質問しちゃったんだろ。聞かなきゃ良かったな、間接的に自分の首絞めちゃっただけじゃん。上を向いて歩いてみたけれど、一筋だけ何かが頬を伝ったような気がした
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