「っ、、、」
私、太宰治。ただいま大ピンチでございます___!
中也と休暇が被り、
『久しぶりにどこか遠い所に出掛けたいね』と二人で出掛け、電車に乗り込んだのは良いものの、、、
「まさかこんなに混んでるとは、、、」
運悪く満員車両に乗り込んでしまったようだ。もう秋なのにこの気温だから仕方は無いが、少々汗臭い、、、。
そして私が大ピンチに瀕している所以、後ろのおじさまの持っている物だか身に付けている物だか分からないが、なんだか硬い物がお尻に当たっている気がする。
「、、、んッ、ふ」
とある理由で恥ずかしくもお尻が少々過敏と言うか、神経が集中してしまっていると言うか。ともかく、妙に反応してしまう。理由はご察し頂きたい。
我慢すればいい事ではあるが、正直無理だ。屈辱ながらも。
ガタンゴトン!
ガタンゴトン!
電車が揺れる、はち切れそうなくらい人が詰め込まれた車内はおしくらまんじゅうの様な状態で、嫌でも周囲の人と体が接触してしまう。
「、、、ふっ、ぅ 」
ズリっと布が音を立てて擦れる。揺れた事で後ろのおじさまとの距離が少し縮まってしまう。先程当たっていた硬い物がなんだか更に押し付けられているような気が、、、
「、、、太宰、もうちょいこっち寄れ」
ふと中也が私の手を引っ張る、後ろに感じる気配が妙に気持ち悪くてそそくさと中也の方へ寄った時、後ろのおじさまが私の腰を軽く引き寄せた。ヒクリと喉仏が上下した。
気持ち悪い、なんで、何がしたいの。
怖くて俯いたら、耳元に湿った吐息が掛かった、地を這うような、獣の息。
ククッ、とその男が笑った気配がした。
喰われてしまうような、気がした。
「ぅっ、、、!?」
腰に添えられた手に、グッと力が籠った。太い指が鼠径部近くをスリスリと撫でる。
売女を扱うかの如く、欲を隠す事も、慈しむ様な事もせずに。ただ獲物を引き寄せて喰らうために、男はその手に力を込めた。
ゾッと震える目の前の青年の肩が怯えた兎の様で、思わず口許から笑みが零れる。キュートアグレッションに浮かれてしまった脳味噌が、もっと、もっと、と目の前の獲物を求める。
グッと力を入れて引き寄せられ、背後の男のモノが臀に押し付けられる。
傍から見れば大人しくしているが、今にも後ろの男を殴り飛ばしたかった。だってその男にこんな行為を許してなんかいないし、気持ちが悪くて仕方がない。耳にかかる吐息も、腰を引き寄せられるのも、全て彼にされたい。彼にしか許さない。中也だけの特別なのに。
「うぅ、、、っ」
見知らぬ悪漢に軽々しくそんな事をされるなど、屈辱でしか無かった。だが、怖くて怖くて拒絶しきれない自分が居るのもまた確かであり、事実で。そんな自分なのが情けなくて、吐き気を催した時みたいに、視界がぐわりと滲んだ。
「かわいいね、、、」
「いっ、、、!?」
耳元に不快な声がボソッと落ちた。愛でる様な物じゃなくて、下心丸出しのケダモノのような、涎が今にも垂れてきそうな汚らしい声だった。
本当に吐いてしまいそうな程息が詰まる、ダメだ、このままじゃこいつの好きにされるだけ。
「ちゅうやっ、、、!」
目の前で窓を眺めて居た彼の黒外套の裾をそっと握って、小さな声で助けを求めた。
「あ?」
いつものように首を傾け、私の方を見ると、その顔が段々怒りに歪んでいった。どうにかしてくれ、と未だに涙で潤んだ瞳で訴えた。
すると、身長の割に大きく無骨な手が私の腰を掴む男の手首へと伸びた。
「、、、重力操作」
バキンッ!
金属が折れる様な音が背後で鳴った。腰を掴んで居た手の力が抜け、中也が私を引き寄せる。
「チッ」
私の背を抱き、彼が男を睨みつける。知らぬ間に腰を抜かして居たようだ、彼の方が小さいはずなのに、中也の顔が頭上にある。
「ぃいっ!?」
先程の男が手首を抑えて唸り声を上げるのが聴こえたが。丁度私達が降りる駅に着いていた。
「太宰、立てるか?」
男に見せた表情とは相反して、優しい顔で私の手をとった。
「、、、うん」
「じゃ降りるぞ」
手を引いて私を連れ出す中也に、王子様みたいなんて乙女じみた思考が脳裡を過ぎる。
背後で騒ぎ出す民衆を他所に、私達は駅のホームを後にした。
「、、、ねぇ中也、なんでずっと私のお尻触ってるの、、、?」
「手前が知らねぇオッサンにケツ触られてたから俺はその倍は触んなきゃだろーが」
やはり王子様は違ったようだ。
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めっちゃいいです♪ オチが良くて好きです‼️ 私に語彙力があればもっと絶賛できるのに(⸝⸝o̴̶̷᷄ ·̭ o̴̶̷̥᷅⸝⸝)❤︎