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梅雨に入った6月。遂に式場パンフレットの完成した。と言っても、少しトラブったらしく、遅れて出版された、というより無料なのだけれども。
「「やっば綺麗!格好いい」」
メンバー揃ってそう言う。
「めっちゃ恥ずかしい」
どうしてだろう。パンフレットが完成されるまでは見てほしくてワクワクしてたのに、いざ見られると凄く恥ずかしい。勿論見られる恥ずかしさもあるのだけど、一番は彼氏でもある西君と写っている写真を見られている事だ。これに恋愛が絡んでいなかったら全然気にしてなかったかも知れないんだろうけど…
「いゃなんでよ(笑)凄く見せたがってた癖に」
そう言う伊織。
「いゃそうなんだけどさー?いざとなるとやっぱり恥ずかしい」
「にしてもさぁ、記念撮影の時にも言ったけど、新郎役の人めっちゃ格好いいよね?」
「ん?そう言えばその人、初ライブの千秋楽で来てた人なんだよね?咲ちゃん?」
「「へぇー」」「んぐっ!」
私はまさかの問いに驚きを隠せず、みんなに合わせる様に思わず変な声が出た。因みにそう尋ねたのは玖瑠美だ。まさかこんな形で急な暴露をするなんて思わなかった。
「何々?何処か殴られた?(笑)」
しっかりと聞いていた伊織は、やはり良いツッコミを見せる。
「ち、違う違う(笑)。急に尋ねられたから」
私は戸惑いを隠すように苦笑いをしながらそう言った。
「そのさ、握手会に来てたって言うのは高身長で一際目立ってた人?しかも咲ちゃん推しの?」
「そうだよ?」
嬉々の問いに対して私は、玖瑠美がどういう意図でその話をしたのか少し怖さを覚えた為、取り敢えずここは真実を話す。
「へぇー凄いじゃん。ていう事は、この人と式場の撮影もそうだけど、観光雑誌の撮影も一緒だったって事だよね」
…まぁそういう結論に至るよね。
私はそう思いつつも苦笑しながら”そうそう!”と元気よく言った。すると話に乗っかる様に美希が
「え、待って凄くない?その人は咲ちゃんの事好きなんでしょ?それって丸で運命みたいなもんじゃん!」
その運命で付き合い始めた身の私。凄くピンポイントで話す美希にただただ驚いてしまう。
「うんそうみたい。凄く幸せですって言ってた」
それに対して美希が
「そりゃそうだよー、推しと一緒に仕事が出来たんだよ?幸せの極みでしょう」
「何その痛恨の極みみたいな(笑)」
「くそー先言われたー」
「いゃ可笑しいだろ悔しがるの(笑)」
私の痛恨の極みに対して何故か悔しがる伊織。
「丁度いいから聞きたかったんだけどさ、その人とこの前の雑誌撮影で偶然出くわしたんだけどね、カメラマンみたいな人は居たんだけど、他にスタッフは居なかったの?それに撮影の割には二人の時間が異様に長かったのは何だったの?」
そう玖瑠美が聞いてきた。やはりあの後も様子を見ていたようだ。実は旅行雑誌撮影はこの前が初めてではない。人気になる少し前に大きな仕事として春夏限定契約で雑誌を撮ったことがある。その時はrainbow全体だったんだけど、撮影はスタッフやカメラマンだけで総勢10名居て、しかもrainbowが7名なので、デビューしたてで小型バスを使ったのを今でも鮮明に覚えている。それに比べて今回は3人。違い過ぎて聞きたくなるのも無理はない。
「さては見てたな~?」
「だって行くとこ行くとこ居るんだもん。それに、凄く楽しそうというか、私達って周りは女ばかりだから、男性との関りが新鮮でね」
今まで男性との仕事は西くん以外は居ない。新鮮なのは確かだ。玖瑠美はあー言ってるが、何処まで怪しんでいるかわからい為、念には念をで私は本音も交えて誤魔化す事にした。
「そう言えばそうだよね。今回のテーマがデートプランてのもあったんだよね。それもあってしかも、初めての異性とのデートで舞い上がったのは確かかも。2人きりが多かった理由はカメラマン的によりリアルを求めたいって要望があって、それである程度コースは決めた後は私達に任せるって事になって。だから必然的に長くなってたと思う」
「いいなぁデート。私達ってアイドルしている以上、したくても出来ないから超羨ましいんですけど~。仕事でも良いからデートを経験してみたい」
そう有希が言った。その言葉の後に一息付いた玖瑠美の反応に愛花が
「どうしたのクルミン?」
「ん?いゃ、なるほどねーって思うのと同時に、有希と一緒でデートっていいなぁって思ってね」
そう言いながら少し考え込む表情を見せる玖瑠美。
何?何を考えてるのクルミンは?
「ねぇ、凄く変な事聞いていい?」
そう玖瑠美が私に聞く。その一言に凄く緊張する。
「な、なに?」
流石の私も少し言葉に詰まりながらも聞き返す。
「咲ちゃんって、その彼の事好きだったりしないよね?」
ドキッ!勘が鋭いというかなんというか、確か前に人間観察が好きだと言ってたのを思い出す。まさかここで発揮するとは思わなかったけど…
「な、なんでそんな事聞くの?」
「いゃなんとなく?彼イケメンで咲ちゃんのファンなんでしょ?それに何度も仕事してれば惚れるのかなって?」
ここで焦ると変に怪しまれる為、私は誤魔化す。
「まさか~。向こうは確かに私のファンだけど、アイドルのファンの関係性をしっかりと保っている真面目な人だから大丈夫だよ?私も私でファン相手ではあるけど、仕事相手としてしか見てないから」
「本当に?」
「何々?めっちゃ怪しむじゃんクルミン?もしかして、クルミンがその彼の事好きだとか?(笑)」
そう間に割ってきたのは嬉々だ。恐らく気を遣ってだろう。とは言え、その言葉は心に刺さるっていうか、好きになったら困るから、出来れば別の冗談で対応して欲しいと思う今日この頃。
「んな訳ないじゃんばっかじゃないの~?」
凄く早口で冗談で言うなよ的な感じで話す。至って玖瑠美は真剣な様子の為、嬉々は”ごめん”と言ってそれ以上言わなかった。ただ以外にもこの効果はあった様で、玖瑠美は続けて
「まぁともかく、初めての異性との仕事、しかも連続でお呼ばれするなんて、いくらカメラマンに気に入られたとは言え、変な話し虫が良すぎるっていうか。ただでさえウチは恋愛に厳しい事務所で、今までにない事だったからね。何もないならいいんよ、変に怪しんじゃってごめんね」
「ううん、いいよ」
玖瑠美の言葉に私がそう反応した途端、丁度控室の扉をノック音が聞こえた。扉が開かるとマネージャーの菊池さんで、実はとある国民的アニメのゲスト声優としてオファーが来ている、玖瑠美と嬉々を連れて控室を後にした。