レコーディング休憩のひととき、夕暮れの部屋。いふは壁にもたれかかって、スマホをぽちぽちといじっていた。
「……まろちゃん」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げると、初兎が真剣な顔で立っていた。
「ん?」
「目ぇ閉じて」
「え、なに? 突然どうした」
「いーから」
戸惑いながらも目を閉じると、足音が一歩、近づいてきた。
――そのあと、沈黙。数秒の間。
(……ん?)
不意に、胸元あたりに柔らかい感触。
そして、なにかがピタリと止まる。
目を開けると、初兎がつま先立ちで必死に顔を近づけようとしていた。
「……届かない……っ、背高すぎ…!」
「……何してんの、かわいすぎ」
「キスしようとしたの! 文句あんのか!」
「いや、文句ないけど……」
いふはゆっくり壁から離れる。180cmの彼がちゃんと立つと、目の前の初兎との差がさらに広がる。
「なあ、初兎。自分がどんだけ可愛いことしてるかわかってんの?」
「……っ、わかんない」
「そっか。じゃあ俺が教えてやる」
そう言って、ほんのギリギリ、唇が触れそうな距離まで顔を近づけた。
初兎の目が、わずかに揺れる。
「……キス、するの?」
「しないよ。だって――」
耳元に囁く。
「初兎から、ちゃんと届くまで我慢してやる」
「……っ、ばか……!」
悔しそうに顔を赤くしてそっぽを向いた初兎に、
いふはにやけながら、頭をぽんと撫でた。
「…バカって言いすぎ」
届きそうで、届かない。
その距離が、2人のドキドキをもっと育てていく。
コメント
2件
コメントありがとうございます!読んでくださって嬉しいです🥰 無事しねたなら本望です!(笑)
青白ぉぉぉぉぉぉ🫶🏻️︎ ありがとうございます🥹🫶🏻🤍 無事しねます😇😇😇😇😇