テラーノベル
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短編(?)
高校生の設定です。
#mtp
#ご本人様に関係なし
地雷の方はブラウザバック
梅の花が散っていく。
桜が咲いたら俺たちは別れる。
高校生カップルあるあるだと思う。
受験期に2人の間に綻びが生じて〜みたいなやつ。
別に、俺たちの間に綻びが生まれたわけじゃないけど、進む道があまりにも違うから。
俺は音楽の道へ。
若井は大学へ。
「若井、別れよう。
いきなりだってことはわかってるけど。やっぱちゃんと将来を考えて、一旦そうした方が」
「ちょっと、待って待って。わかってるけどじゃないよ。」
遮られてしまった。
「俺の気持ちは?別れた方がいいって元貴が思ってることはわかったよ。でもさ、俺はまだ元貴が好きだよ。もときはもう俺のこと嫌い?」
「いや、そういうわけじゃ」
「だよね。それは知ってた。」
狼狽えるわけでも、涙を流すわけでもなく、芯の通った瞳で僕を射抜く。
ああ、こいつのこういう所が好きなんだよ。
若井の言葉を最後に、俺たちしかいない教室に沈黙が流れる。
別に気まずくはない。
本当に気が合うからかな。
なんて、思ってみたりする。
中3からの付き合いだ。熟年カップル顔くらいさせてくれ。
「猶予が欲しい。」
「猶予?」
「うん。別れるまでの時間を決めたい。」
なるほど。
「いいよ。若井が決めて。」
また沈黙が流れる。
遠くでサッカー部の声が聞こえる。
風が揺らいで、カーテンがしゃらっと音を立てて影を作る。
若井の綺麗な顔がカーテンで見えなくなる。
波が引いて若井の顔が見えた時。
その口が開いた。
「一週間。一週間がいい。」
一週間か。思ったより短いな。
でも、若井がそう言うならそれがいいのだろう。
「わかった。あと一週間、よろしくね。」
「うん。」
なんで今になってそんな泣きそうな顔するんだよ。
こっちまで悲しくなってきちゃうじゃんか。
おまえが、若井が一週間だって言ったんだ。
ずっと一緒に居たいのは僕だって一緒なのに。
1、2、3、4。
限りある数字は減るというのがこの世の摂理。
それに反比例して生きた日にちは増えてゆく。
若井はこの四日間、俺のいろんなところにキスをした。
1日目、指先。
2日目、腕。
3日目、頬。
4日目、瞼。
どんどん唇に近づいてくる。
本当は僕からもキスしたい。
でも、別れを切り出した俺から何かアクションを起こすのは何か違う気がしている。
今日はどこに口付けられるのだろうという高揚。
そして、唇と唇が触れ合った後の未来への不安。
ほらね、僕はやっぱり意気地なし。
自分から始めたくせに、終わるのが怖い。
「今日は元貴ん家いく。」
そういう若井を連れて帰宅する。
「おじゃまします。」
律儀だよな。
今日は母さんも兄貴もいないってのに。
とんとんと音を立てながら階段を登り、慣れたように俺の部屋に入る。
「はぁー、久しぶりだな、もときの部屋。」
心なしか嬉しそうに見える横顔。
若井の受験期ーーーとはいえ推薦だが。まあ、プレゼンやら面接やら、学力試験やらがあると言ってお互いの家へ行くのをやめていた。
確かに、若井を家にあげたのは久しぶりかもしれない。
これが、最後になるのかな。
なんだか悲しくなった。
「もとき、」
「わっ」
若井が俺のブレザーを引っ張って倒れ込む。
ぽす、と音を立てて若井の背中がベットに着地し、髪の毛がはらりと散らばる。
顔の横に手をついて、時が止まる。
初めてしたときも、こんな感じだったっけ。
いや、逆か。俺が押し倒したんだっけ。
若井の腕が僕の後頭部に回って、距離が近くなる。
あ、キス、される。
目を閉じて、感覚を研ぎ澄ます。
きっと、これが最後になってしまうから。
若井の唇が、どんな形だったのか、
どんな温度で、どんな味がしたのか、
俺は覚えていないといけないから。
ふに、と柔らかい感触。
ああ、全部終わっちゃう。
この4年、一旦鉤括弧がつくのかな。
いや、終わらせちゃいけない。
変に遠慮するのはやめだ。
俺も若井の後頭部に手を回す。
何度も、何度も。
唇のその先まで。
「わかい、わかいっ、すき、すき、だいすき、わかれたくない、すき、」
「んぁ、も、とき、ふ、ぅんっ、お、れもっ、ぁ、んんっ」
俺の口の中で若井の声が割れるたびに止められなくなっていく。
「うぅ、む、あ、ふ、ん、すき、もとき、」
滅多に泣かない若井の目が水の膜で覆われている。
「もとき、なかないで」
あぁ、なんていい奴なんだろう。
こんなときも、俺の心配をしてるの?
お互いに息が上がったまま時は過ぎる。
夕焼けこやけが流れて、茜空もだんだん紺になっていく。
「ぉ、おれっ、やっぱり、別れたくないよぉ、やだっ、ずっと一緒にいて、おれに人生ちょうだいよぉっ、」
いつも男らしくて、スパスパと物事をぶった斬る若井が、駄々を捏ねている。
なんて愛しい生き物なんだ。
若井のためなら命だって擲てる。
「ごめん、ごめん、不安にさせてごめん」
「うぁ、あああああん、うわあああ」
がっちり、ぎっちり、細い身体を抱きしめて、
流れる涙を拭って。
やっぱりこいつじゃないと、ダメなんだなぁ。
と、再確認させられた。
あと2日、あったはずなんだけど。
5日目で計画は頓挫した。
あんな計画、遂行される方がまずかったんだ。
桜はまだ蕾。
恋人と二人で4度目の桜を見る権利を得たのだった。
どうだったでしょうか?
バイバイ👋
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