テラーノベル
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「しゃ、社長。……教えてください。私の父は、どんな人だったんですか?」
母がいれば満足だとは思っていたけれど、知りたくなかったわけじゃない。ただ、深く考えるのが怖かっただけ。
大好きな母が愛人という立場に収まっていたことを信じたくなかったし、彼女が持つどす黒い部分を知るのが怖かった。
嫌な部分を見たくなくて、何年もうつむいたまま目を閉じていた。
思えば、なんて弱虫だったんだろう。
遠田社長は大きく息を吐き出した。
「攻……弟は、私とは違って、情熱的な男だったよ。……まあ座って話そうか」
遠田社長がソファに腰かけたのを確認してから、深山さんに勧められ、私はその向かいの下座に腰かけた。
「君のお母さん……桐子さんとの出会いは見合いの席だ。彼女の父親は資産家でね。会社を大きくするために元手が欲しかった私の父は、伝手を頼って無理矢理、当時二十七歳の私とまだ二十歳の彼女との見合いをセッティングした」
「見合い?」
「取引先に彼女の父親の友人がいてね。彼は私を気に入ってくれていた。だから積極的に味方になってくれたんだ」
遠田社長は昔を懐かしむように遠くを見る。
「父は結婚と同時に、私に会社を譲る気だったらしい。元々あまり経営手腕はない人間だったからな。疲れていたんだろうと思う。私は、社長の座が欲しかったし、会社の資金も欲しかった。容姿も性格もどうでもいい。ただ金のために結婚したい。そう思って見合い写真も見ずに見合いに臨んだ私は、彼女に会って頭を叩かれたような衝撃を感じたよ。綺麗で機転の利く人で、その場で一目ぼれしてしまった。……だが、彼女のほうはそうではなかった。もっとやりたいこともあるのに、なぜ結婚なんかで縛られなきゃならないのかと不満そうだった」
私は、母なら言いそうだと思ってしまった。
二十歳ならまだ、やりたいことのひとつもやれてなかっただろう。
コメント
1件
第37話、読み終えたよ。 主人公がずっと目を背けてきた「父」の話を、ついに遠田社長から聞く場面、なんか苦しくてでも目が離せなかったな。自分を弱虫だったって認めるところとか、胸にくるわ。 母・桐子が「結婚なんかで縛られたくない」って思ってたっていうの、当時の事情を考えるとすごくリアルで切ない。社長の一方的な一目惚れだったってのも、なんだか複雑な気持ちになるな……。次も気になる🔥
鷹槻れん

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鷹槻れん

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