テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第5章 放課後の約束
チャイムが鳴り終わり、ざわめきが一気に廊下へあふれ出す。
かばんを閉じたところで、隣から声が飛んできた。
「なあ、〇〇。今日、一緒に帰んのアリだろ?」
「……アリってなに。普通に“一緒に帰ろう”でいいじゃん。」
「いや、なんか素直すぎると俺っぽくねー気がして。」
「ふーん。強がり?」
「ちげーし。」
そんなやり取りをしていると、前の席の友達がくすっと笑い声を漏らす。
「なにその会話。カップルかよ〜。ねぇ亮くん、素直に“一緒に帰りたい”って言えば?」
「うるせぇ。余計なこと言うなよ。」
「図星〜?〇〇も嬉しそうじゃん。」
「えっ!? べ、別に!」
必死に否定してるのに、友達はにやにや顔でこっちを見てくる。
「はいはい、二人ともごちそうさま〜。……で?今度は休日デートでもするの?」
「はあっ!?な、なんでそうなるの!」
「ちょ、やめろ!……まだ決まってねぇし。」
「“まだ”ってことは、そういうつもりはあるんだ?」
「……っ!」
亮くんの耳の先が赤くなるのを見て、私まで胸が熱くなる。
「ま、いいや。とりあえず二人でイチャイチャしてきな。……報告はよろしく!」
「しねーよ!」
「バイバーイ、幸せ者たち〜!」
友達がひらひらと手を振りながら教室を出て行く。
取り残された私たちは、妙に気まずくて視線をそらした。
「……あいつ、ほんと余計なことばっか言うよな。」
「……でも、ちょっと当たってるかも。」
「え?」
「ほら……休日、どこか行くって。」
「……あ、まあな。」
亮くんがわざとらしく咳払いして、ぽつりと続ける。
「次の休み、一緒に出かけようぜ。……俺、ちゃんと考えとくから。」
「……うん。じゃあ、私も考える。」
「ふふ、勝負だな。どっちがいいプラン出せるか。」
「勝手に勝負にしないでよ!」
「負けたら罰ゲームな。」
「え、なにそれ!?」
「そのとき考える。楽しみにしとけよ。」
夕焼けの中、隣を歩く亮くんの横顔は、悔しいくらい眩しくて。
胸の奥がじんわりと熱を持つのを、必死に誤魔化した。