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「っ……ん、はぁ……♡ びぃ……♡」
潤んだ瞳の奥で、快楽に震えるシキ。
白い脚が絡む。指が揺れる。
意識が、互いの身体の奥に沈む──そんな時だった。
──ピリリリリ……ピリリリリ……。
音。電子音。
まるで“現実”が二人に突きつける、冷たいナイフのように。
「……っ」
Bは動きを止めなかった。いや──止める気がなかった。
右手はシキの太腿に添えたまま、左手で携帯を引き寄せる。
ディスプレイに映る、“No Caller ID(非通知)”。
Bは笑った。
そして、応答ボタンを押す。
「Hello, L. Bad timing.」
(やぁ、L。タイミング最悪だな)
【……You answered faster than I expected.】
(思ったより早く出ましたね)
「I’m a little… busy right now.」
(今ちょっと…忙しくしてる)
Bは腰を揺らしながら、指を口元に当ててシキに“黙っていろ”の合図をする。
どうやら、今Lが追っている事件について──仕事の電話らしい。
シキは唇を噛んで、必死に声を抑えた。
【Twelve people died in Nevada. Southern Cross Hotel.Explosion. But no bomb. No gas.Cameras stopped for exactly 66 seconds.Every victim booked through the same travel agency──】
(ネバダで12人が死亡した。サザンクロスホテルでの爆発だ。だが爆弾もガスもない。監視カメラはちょうど66秒間だけ止まっていた。被害者は全員、同じ旅行代理店を通じていた──)
「That sounds boring.」
(つまらなそうだな)
「If it’s just an accident, call the police.」
(事故なら警察に頼ってくれ)
しかし──
【Put her on the phone. She’s there, isn’t she, Shiki?】
(彼女を電話に出してください。そこにいるんでしょう、シキ?)
Bは顎をわずかに引いて、視線だけでシキを見やった。
「……だとさ」
「……む、りぃ……♡」
シキは耳まで赤く染まり、かすれた声で拒絶する。
だがBはお構いなしに、シキの耳元にそっと携帯を押し当てた。
「は、はい……シキ、です……♡」
【Shiki. I am L. I’ve sent you the data.】
(シキさん。私はLです。事件のデータを送りました)
【I want you to solve it. It’s a test.】
(解いてください。これは“試験”です)
「……ん、ふ……あ、はい……」
“試験”という言葉が、かろうじて思考を戻す。
Bはシキの背中に指を這わせながら、唇を寄せる。
「しっかりしろ、シキ。こっちはLとの勝負なんだ」
その声が耳に届く頃には、シキの頭の中にホテルの見取り図と監視記録、そして生存者の供述が表示されていた。
【Who do you think the culprit is, Shiki?】
(犯人は誰だと思いますか、シキさん)
【You’ve seen the data. Surveillance, floor plan, witness testimony.Give me a name. Now.】
(データは確認済みでしょう。監視記録、見取り図、生存者の証言──今、名前を。答えてください)
「ぁ、っ、あ……あう、え、えっと……」
Lの声は容赦なかった。
冷静で、機械のように、ただ正答だけを求める。だがシキは──意識が揺れていた。
「び、ぃ……っ、そんな……いま……だ、め……♡」
「いいから、Lが待ってる」
「っ、う、うん……でも、でもぉ……♡」
【You’re hesitating. Is there a problem?】
(躊躇っていますね。問題でも?)
「い、いえっ……だ、だいじょうぶ、ですっ……♡」
【Then speak. The name, Shiki.Who killed those 12 people?】
(では答えてください。名前を。12人を殺したのは誰ですか)
「んんっ……!」
シキの背筋がびくんと跳ねる。
Bの指が深く沈み、下腹部がひくつく。
快楽が神経を溶かし、思考の回路がショートする。
【Shiki. Focus. We’re running out of time.】
(シキさん、集中してください。時間がありません)
「は、ぁ……ご、ごめんなさい……っ♡」
Lの声が、遠くで響いているように感じる。
まぶたの裏が熱くて、指先がじんじんしてる。
「──誰だ? 誰が12人を殺した?」
Bの声が、耳のすぐ横で囁く。
「言って?シキ」
「うっ、うぐっ……わか、んない」
涙混じりの声で、シキはかぶりを振る。
Bはシキの耳朶をくすぐるように、低く囁いた。
「ヒント。“同じ時刻に、ロビーを横切った赤いコートの人物”──カメラには映ってるのに、宿泊名簿には名前がない」
「ぁ……っ、それ……っ」
【Who is it, Shiki? Who is the person in the red coat?】
(誰ですか、シキさん? 赤いコートの人物は)
Bの指が、ずぷ、と深く沈む。
「くくくくっ、言えたら、ごほうび。言えなきゃ──そのまま、イかせてあげる」
「ん、っ♡♡ ま、ってぇ……♡それじゃ……ちが……♡♡」
呼吸が乱れる。視界が揺れる。脳が、身体の中で、甘いノイズに満たされていく。
「え、エレナ……・グローヴァ……っ!♡」
【……What? Repeat that.】
(なんですって? もう一度言ってください)
「エレナ・グローヴァ……9年前の、コロンビアの爆破事件の……っ♡」
【……That’s right. You found her.】
(正解です。彼女が犯人です)
その瞬間──Bの手が、躊躇なく、最後の一点を突いた。
「──ぁ、んっ♡♡♡♡っ、あぁぁぁ♡♡♡」
背中が跳ねる。
指がベッドを握りしめる。
白く崩れていく身体の奥で、シキの脳だけが、やっと一つの名前にたどり着いた。
【You did well, Shiki. I’ll remember that name.】
(よくできました、シキさん。その名前、覚えておきます)
「ぁ、ああっ♡ やぁ……♡ びぃ……っ♡♡」
シキの身体が震える。
快楽と痛覚の狭間を、Bは容赦なく突き上げていた。
ぴしゃん──ぴしゃんっ……
湿った音がシーツの中に響く。
Bの動きは一定ではなく、わざと突く深さと速さをばらけさせて、シキの理性を削り取っていく。
【Shiki. Are you still there?】
(シキさん、まだ応答できますか?)
「は、い……ぅ……っ♡」
【Good. I’m sending the second data file.
Tell me what’s wrong with the camera on the 21st floor.】
(第二データを送りました。21階のカメラに、どんな不自然さがあるか答えてください)
「っ、はぁ……カメラ、が……?」
Bが耳元に囁く。
「ヒントがほしいなら、“もっと奥までください”って、言ってみて、シキ」
「や、やだ……っ♡♡ そ、そんなの、いわ、ないっ……♡」
ぴしゃんっ、ぱんっ──ッ!
腰が跳ねた。目尻から、涙がひと粒、落ちる。
でもBは止めない。シキの知性を壊すためではなく、“削った上で生かすため”に。
「言え。──じゃなきゃ、そのままLの前で絶頂させるぞ」
「っ♡♡あっ、うっ……も、もっと、おくまで、くださ、い……♡♡♡」
Bが応えるように、深く、えげつなく突き込む。ぬちゅっ、と音が奥で響き、シキの喉からひゅっと息が抜けた。
「カメラ、えっと……」
【I’m waiting, Shiki. What’s the inconsistency?】
(待っていますよ、シキさん。不自然な点はなんですか?)
「映像が……ぜんぶ、真上から……撮られてる……っ♡でも……21階の廊下のカメラは、横向きのはず……っ♡♡」
【Good. Keep going.】
(いいですね。そのまま続けて)
「つまり……そ、れって……あ、あとから……編集されてる、可能性が高……ひぁ♡♡♡」
Bがぐ、と奥を抉るように動く。
「そう。──じゃあ、誰が“編集できる立場”にいた?」
「…………ふ、ふぁいっ♡♡ホテルの……管制室、に……入れた人間……N.S.ナンバーで登録されてた、仮名の職員っ……♡」
【Which one? Name?】
(どの人物ですか? 名前を)
「っ、アリソン・クレイ──監視オペレーターっ……!ぜんぶ、あの人が、やって……っ♡♡♡♡」
【……Correct, Shiki-san.】
(正解です、シキさん)
「ぅ、んっ♡♡ や、あっ……♡ びぃ……♡♡」
震える腰。ぴしゃん、ぴしゃん、と深く突き上げられるたび、
シキの瞳はとろんと濁り、舌がもつれる。
【Shiki. The final question.】
(シキさん、最後の質問です)
【The elevator stopped at the 19th floor.
Yet the bomb detonated on the 21st. Why?】
(エレベーターは19階で止まっていました。
ですが爆発は21階。なぜですか?)
「っ……え……? う、うそ……っ、ちょ、まって……」
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ……っ!
腰に、太腿に、腹に、全身に突き上げがぶつかる。
思考が混線し、言葉が泡になってこぼれる。
「び、ぃ、やぁ、もう、だめぇぇ……♡♡♡」
Bは笑った。
「もうちょい。あとひとこたえ、──正解したら、とばしてあげるから」
「と、ぶ……?」
「そう、“イっちゃっていい”のは、正解のあとだけ」
【You’re stalling. Focus, Shiki. Why stop at 19?】
(遅いですよ、シキさん。なぜ19階で止めたのか?)
「っ、っ……そ、それは、き、きかいごしゃ……機械誤作動にみせて……ぇ♡」
「もっと核心を突け」
「そ、それって、そ、そうしないと……非常階段を使わせて……21階に“歩かせた”んだ……っ♡自分の足で、死ぬ場所まで……!」
Bの動きが、一瞬、止まった。
「──正解」
そして──その直後、何の予兆もなく、一撃が落ちた。
ずんっ──ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
怒涛のように、容赦のない突き上げが重なり、全ての思考が消し飛んだ。
「ぁ──あ♡♡♡♡♡♡っ♡♡♡♡♡♡♡♡びぃっ♡♡♡とんじゃうっ♡♡♡とんじゃ……♡♡♡♡♡♡」
──感覚が、白く、ぶつんと途切れる。心臓の音が遠のき、光が爆ぜ、脳が真っ白になる。
「……っ♡……は……♡♡」
びくっ、びくっ……。
脚をくの字に折りながら、シキはBの背にしがみつく。喉から漏れる声は、もう言葉になっていなかった。
通話機の向こうから、ぽつりとLの声が落ちる。
【……She’s surprisingly capable.】
(……彼女は驚くほど優秀ですね)
Bは笑った。
そして、英語で淡々と返す。
「Of course. Otherwise, she wouldn’t be a candidate for the second B.」
(当然だ。──じゃなきゃ2代目B候補にしない)
【……Shiki-san, your breathing has been irregular for some time. Are you alright?】
(……シキさん、先ほどから呼吸が乱れていますが、大丈夫ですか?)
【You sound… distressed.】
(苦しそうです)
「ッ……っ♡♡」
シキは顔を覆ったまま、小さく身体を震わせる。呼吸は荒く、上ずった吐息が何度も漏れてしまう。
Bは、その背後で──ぱんっ……ぱんっ……と、わざと音を立てながら腰を動かしていた。
【……B? What’s going on?】
(……B? 何が起きていますか?)
Bはすかさず、すっと笑って返した。
「Actually, I think she’s just happy to hear your voice, L.」
(実のところ、彼女は君の声が聞けて嬉しいみたいだよ、L)
その瞬間、スピーカー越しに、微かな沈黙が流れた。
【……I… see.】
【That’s… unexpected.】
(……そ、それは……予想外です)
【I didn’t think… she would feel that way.】
(まさか、そんなふうに思っていたとは)
Bはにやりと笑った。
「L,surprisingly charming when flustered.」
(L、困ってる時のほうが可愛いな)
【I am… not sure how to respond to that.】
(それには、どう返すべきか分かりません)
Bは、耳元のシキに囁くように言った。
「──なぁ、シキ。Lに言いたいこと、あるんだろ? 言ってあげて」
「っ……な、い、そんなの……っ♡」
必死に否定する声は弱く、Bの腰の動きでかき消されていく。
「あるってさ、L。──なあ、シキ。ちゃんと伝えてやれ。“好きです”って」
「やっ、ちが……そ、そんなんじゃ……っ♡♡♡」
【……Shiki-san?】
Lの声が、少しだけ不安げに響く。
Bが、シキの髪を撫でながら笑った。
「──言わないと、止めてあげない」
「……っ♡♡♡」
しばらくの沈黙のあと、シキは震える声で言った。
「……だ、いす……L……っ、だい、す……♡」
その瞬間──Bが彼女の唇を、深く、激しく奪った。
「──んんぅっ♡♡♡♡♡♡」
キスにすべてを奪われ、
言葉は泡のように弾けて消えていく。
スピーカーから、Lの微かな声だけが残った。
【……I… didn’t catch that.】
(……今のは、聞き取れませんでした)
Bは唇を離し、涼しげに返した。
「She said she admires your deduction. That’s all.」
(“あなたの推理がすごい”ってさ。──それだけ)
シキの瞳は潤んだまま、涙と恥で震えていた。
でも、その唇からはもう、何も言葉が出てこなかった。シキの肩が、びくびくと小さく震えている。
唇はうっすら赤く腫れ、吐息はまだ熱を帯びていた。
Bはそんな彼女の頬に触れ、いたずらっぽく目を細めながら、マイクの近くに口を寄せた。
「シキ。Lにもっと、ちゃんと伝えたらどうだ?“あなたの声を聞くと、変になっちゃう”ってさ」
「っ……や、だっ……そんなの……っ♡」
顔を真っ赤にして、シキは首を振る。
【…B? What are you trying to make her say?】
(……B? 彼女に何を言わせようとしているんですか?)
Lの声が、ほんの少しだけ揺れた。
それが動揺だと気づかれないように抑えているのが、逆に伝わる。
Bは笑った。そして、シキの耳元で囁く。
「言って。シキ、じゃなきゃ、今度は声をスピーカーに乗せてイかせてもいい」
「っ♡♡♡」
震える唇が何かを言おうとして、でも……何も言えなかった。
ただ、うるんだ目でBを見上げるだけ。
──沈黙。
その重さを切り裂くように、Bが口を開いた。
「She said──」
ほんの一拍、間を空けて。
「“She dreams of holding your hand while solving cases.”」
(“いつかあなたと手を繋いで事件を解いてみたい”だってさ)
【…………】
しばらく、Lは何も言わなかった。
【That’s… rather poetic.】
(それは……なかなか詩的ですね)
「可愛いでしょ?」
【…Yes. It is.】
Bは、唇を緩めると、シキの髪に顔を埋めながら、小さく囁いた。
「──本当は“あなたの声でイかされました”って言わせたかったけどなぁ、ふふふふふふ」
「ば、か……っ♡♡♡」
シキは顔を覆いながら、声を震わせていた。
恥ずかしくて、壊れそうで、それでも……。
そして、ふと。
彼女の口元が、真剣な色に変わった。
「L……」
【Yes?】
(はい?)
深く息を吸って、
Bの支配から一瞬だけ逃れるように、小さく震える声で、英語を紡いだ。
「I think… I might… actually love you.」
(私……本当に……あなたのこと、好きかもしれないの)
「Not as a detective. Not as B’s friend.
As… a man.」
(探偵としてじゃない。Bの知り合いとしてでもない。ひとりの“男の人”として──)
「If we solve one more case together,
I might propose.」
(もしもう一度、一緒に事件を解けたら……たぶん──プロポーズする)
「I Love You……L」
(愛してる……L)
【…………】
Lの沈黙は、静かに、しかし確かに場を支配した。
【Shiki-san… I—】
Lが言いかけた時、
──ピッ。
Bは勝手に通話を切った。
画面には「Connection Lost(接続切断)」の文字。電子音が止まり、部屋に沈黙が戻る──はずだった。
だが、それよりも先に、
「……なに言ってんの。シキ」
Bの手が、ゆっくりとシキの喉に添えられる。
優しく、でも逃げられないように。
「今のは、なんだ?」
「っ、くっ、ふふ……♡」
いたずらじみた笑み。これがシキの精一杯の仕返しだった。
すると、ぱんっ──!
唐突に、Bの腰が突き上げられる。
深く、容赦なく。まるで怒りをそのままぶつけるように。
「──“愛してる”だぁ?はっはは、シキ。Lにプロポーズ?」
「……ふふふ……ば、ばぁか♡」
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ……!!
勢いは増していく。
すでに快楽ではなく、“支配の証明”へと変わっていた。
「シキが“どっちのものか”、身体に叩き込まなきゃ分からないか?」
「っっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
涙が止まらない。
でも、いやじゃない。
壊れてしまう、でも、壊されたい。
Bになら。
そして──Bは、ぽつりと最後に言った。
「Maybe I should’ve made you the third victim.」
(──“3人目の犠牲者は、お前にすべきだったのかもな”)
その声は甘く、柔らかく、
まるで愛の告白のような響きだった。
「──ぁ、ぁぁあっ♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
身体が弾け飛ぶ。
意識が溶ける。
心が、Bのものになる。
快楽でも、恐怖でもない。
それは、“破壊された証”。
もうどこにも逃げられない。
甘くて、狂ってて、救いなんてない。
でも、それがしあわせ──