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「よう、待ったか。」

改札前で男2人に囲まれている彼女に声をかける。

「あ、いえ。」

行く手を阻む2人の間を強引に割って彼女を引き寄せ睨み付けると、さっさと男達は逃げていった。

「すいません、私の不注意で。」

「大丈夫だ。どこも触られてないな??」

「はい。」

「ま、そんな綺麗な格好してたら俺でも声かけるな。」

「部長にナンパされるなら全然良いですよ。」

「今日は部長って呼ぶの無しな。」

彼女の腰に手をまわし低い声で言うので、彼女は赤面して。

「杢太郎さん…。」

「うん、行こうか。」

腰に手をおいたまま歩きだす。向かった場所はボヘミアングラス展を開催している美術館。

「綺麗。デカンタも良いなぁ、欲しくなってくる。」

「そうだな。こんなので酒飲んだら旨いだろうな。」

展示物を見るため顔が近くなる度に、彼女の気持ちは高ぶる。

「緊張してる??」

「そ、うですね。プライベートで2人きりって初めてなので。」

館内のカフェで休憩しながらこの後の予定を立てる。

「そのワンピースもヴィンテージ??」

「はい。70年代、海外のです。」

「細身で引き締まった身体によく似合ってるよ。」

ウエストを撫でられ思わず反応する。見上げると部長はイタズラっぽい目でこちらを見ている。彼女は恥ずかしくて目をそらし。

「杢太郎さんはガタイが良いので、ヴィンテージきっと似合いますよ。」

ヴィンテージショップが立ち並ぶ通りに行こうなり、道中そんな話で盛り上がる。

「ここ入っていいですか??」

「いいよ。」

狭い地下への階段を降りると。

「地下にこんな洒落た店があったとは。」

「でしょ、一見入りにくいけど入ってしまえば夢の国です。ここで買ったんですよ、この服。」

店員と会話しながら服を見て回る。

「うん、良いね。」

部長はピンクのノースリーブドレスを試着した彼女に舌をまいた。

「これキープします。」

「買わないの??」

「今日は買わないんです。」

にっこり笑って、メンズ服をみにいく。

「やっぱり上着類は似合いますね。」

「よくよく考えたら、じいちゃんがこんなの持ってたな。」

「ヴィンテージってけっこう身近にあるんですよ。」

アクセサリーケースの前で彼女が止まった。

「この指輪、ヴィヴィアンウエストウッド!?」

店員は頷いてケースから出してくれる。

「なんか聞いたことあるな。」

「このロゴは絶対見たことありますよ。」

「おー、確かに百貨店で見かけるな。」

「これメンズのですって、つけてみます??」

「入るかな。」

「似合いますね!!」

「悪くないな。もう1つのもメンズか??」

「みたいですね。私には大きすぎます。」

「…わかった。」

部長は指輪を2つ店員に渡してレジへ行く。

「店員さん、キープしてるドレスも。」

「杢太郎さん!?」

「俺の財布の紐が緩いうちにな。」

「駄目ですよ!!そんなんで大枚はたかないでください!!」

部長は早速リングをはめ、もう1つを持って彼女のネックレスに手をかける。

「俺、好きな人の影響受けやすいんだよ。そんでもって、自己顕示欲高め。」

誕生日石をあしらったベビーリングと並ぶヴィヴィアンのリング。

「毎日つけてくれよ??俺も毎日つけるから。あと、今度そのドレス着てバー行こう。」

「はい。」

このやりとり、店員はどんな気持ちで見てただろうか。

「晩ごはん何食べたいですか??」

夕食は部長の家でと決めていたので、スーパーへと歩く。

「何が作れる??」

「今思いつくのは、チキンのトマト煮ですね。」

「じゃあそれにしよう。」

クラフトビールも買って帰宅。

「手伝うよ。」

と一緒にビールを飲みながら作る。

「どうですか??」

「美味しい。」

「良かった。」

ワインと共に食事を楽しみ。

「片付けておくから、風呂入りな。」

「はい。」

部長もお風呂から上がれば、ブランデー片手に映画鑑賞。

「君は酔っても顔色は変わらないんだな。」

「そうなんです。」

彼女はリングをはめた部長の手をとり、キスをする。

「でも今日は相当酔ってるな??」

「そうですね。…嫌ですか??」

部長は彼女のネックレスについている指輪にキスして、ソファに押し倒した。

「嫌じゃないから、もっと見せて。」

唇を重ね、快楽の世界への扉を開く。

今宵もまた、

貴方に

君に

溺れていく。

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