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こはる
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第272話、読み終えました!アレックス、まさかフィリップ以外にも手を回してたんですね…「木を隠すなら森の中」って発想、用意周到すぎて笑っちゃいました。でもデスナイトが出てきて計画が狂いそうなのが気になる…。それより何より、レナの婚約発表の件、絶対何かあるでしょう?「答えられない」ってのが不自然すぎて、後で大きな伏線になりそうでドキドキします。この先どうなるのか、続きが気になりすぎます!
「フィリップ。ダンジョンの入口までは後どれくらいだ?」
「このままいけば三十分程ですかね」
「そうか。やはり経験者に依頼しただけのことはあるな」
「毎度どうも……。それよりいいんですか? こんなに堂々と不正しても」
「不正するな――とは言われてないからな。確かにフィリップとの関係はバレたが、それだけだと思うのか?」
「まあ、アレックス様の事情は知りませんけどね。バレても払う物払ってくれればそれでいいですよ」
最終パーティのチームは特別クラスの四人で構成されている。公爵家のアレックスと侯爵家のブライアンとアンナ。それと伯爵家のレナ。
フィリップ程度では、その誰にも逆らうことは出来ないほどの上流貴族パーティである。
「レナ! 早く来い!」
「すいません。アレックス様……」
その中ではレナが一番下。一人で四人の荷物を持たされていて、フィリップだけが自分の荷物を持っているといった状態だ。
「おいおい。アレックス。レナが可哀想だろ? 未来の嫁さんなんだから」
ブライアンはニヤニヤと薄ら笑いを浮かべ、煽るような冗談を口にする。
本来であれば侯爵家が公爵家にタメ口を利くなどあり得ないのだが、彼らの関係はもっと砕けているのだ。
それは冒険者同士の会話とも似ている。表向きは気の合う仲間。対等に近い存在なのである。
「うるせぇ! 言っただろ! この試験でトップを取れば俺は自由なんだ」
「わかってるって。そう怒るなよ。家を説得できてないのはアレックスだけなんだ。お互いの夢の為にも頑張ろうぜ?」
「ちょっと! その中には私も入ってるんだからね? 無視しないでよ!」
アレックス、ブライアン、アンナの三人には共通するものがある。一つは夢。それは冒険者になること。そしてもう一つが、家に対する不満であった。
覚えなければいけない百以上もの仕来り。礼儀作法にダンスのレッスン。伝統に作法に風習にと、もうウンザリなのである。
貴族を捨て、自由に生きることこそが彼らの最大の望みであった。上級貴族である彼らの親は、何かと王都に足を延ばすことが多い。
それは会議や会合、祝いの席など様々であるが、彼らはそこで出会ったのだ。そして家の不満をぶつけ合い、意気投合したのである。
その中にはレナもいた。四人は同じ目的を持つ仲間として、いずれは家を捨て独り立ちしようと誓い合った仲なのだ。
もちろんそれが困難なことはわかっている。だが、四人で力を合わせれば乗り越えられると信じて疑わなかった。
ブライアンとアンナは第一子ではない為、家を継ぐことはない。二人は比較的自由な立場であり、苦労こそあれど冒険者になるのもまだ現実的であった。
だが、アレックスだけは違ったのだ。家督を譲られるのは長男であるバリットのはずであったのだが、残念ながらバリットは戦で命を落とした。故に次男であるアレックスが家を継がねばならなくなってしまったのだ。
だが、まだ望みはあった。アレックスが家を継ぐに相応しくない人間であればいいのだ。
わざと自分勝手に振舞い、親がアレックスを手に負えないと諦めれば養子を考えるはず。最悪、新たに子を成すことも視野に入れるだろうと考え、それはあと一歩のところまで来ていた。
しかし、レナが裏切った――。
アレックスは耳を疑った。父から聞かされたのはレナとの婚約発表。それも大勢の貴族のいる前で突然にだ。
レナを問いただしても謝る事しかせず、要領を得ない。だが、アレックスはそんなことで夢を諦める訳にはいかなかったのである。
「アレックス様。戦闘に関することは何も聞いていないんですが、どうすれば?」
「そんなものない。フィリップに任せる。お前が俺たちに指示を出せ」
「まあそれは構いませんが、どうしようもない時は自分で身を守って下さいね」
「わかってるよ。これは前哨戦みたいなもんだ。俺たちが冒険者になったらフィリップを専属タンクとして雇うからそのつもりでいてくれ」
「はいはい。期待せず待っておきます」
現役冒険者の指示に従うのが最も安全で確実な方法。何をしようが試験官として採点するのはフィリップだ。最後に高評価を出してくれればなんの問題もないのである。
(九条も甘いな。プラチナだから言うことを聞くと思っているのだろうが、俺は違う……)
不敵な笑みを浮かべながらも森の中を進む生徒たち。そして彼らの目の前に現れたのは目的地である試験会場のダンジョンだ。
その入口に待機していたのは見知った顔の四人組。十四番目にスタートしたパーティである。
「中はどうなってる?」
「危険級以外は全部掃除済みですアレックス様。アンデッドがほとんどを占めていましたが、雑魚ばっかでした」
「よくやった。……で、肝心のクリアの証は?」
「すいません、確保は無理でした。場所は地下七層。ですが、今年の危険級が半端じゃない。何か作戦でも立てなければ獲得は無理かと……」
「お前たちはどうしたんだ? 自分たちの分は?」
「諦めました。危険級はデスナイトです。残念ですが俺たちの実力じゃ勝てそうもない……。恐らくですが全てのパーティは諦めて帰還しているんじゃないかと思います」
「「デスナイト!?」」
驚いて当然だろう。例年であればジャイアントスパイダーやミノタウロスなどが危険級として配置されているのだ。
大体が地下五層から十層程度の魔物である。それくらいの強さであれば、どの生徒たちでもパーティで戦えば勝てるレベル。
むしろ、既に倒されているだろうと考えていた。何せ十三番目のパーティは最強の王女がいるのだから。
「何かの間違いじゃないのか?」
「大マジです。俺たちも命からがら逃げてきたんですよ? 帰還水晶を使うか迷ったくらいです」
「そうか……」
「こうしてそれを伝える為に必死に走って逃げたんですから、もう少し褒めてくださいよ」
「ああ。よくやったな。それで? これからどうする?」
「俺たちはこのまま徒歩で村まで帰ります。……そうだ。六層に宝箱のトラップがあります。フィリップさんなら見破るのもわけないでしょうけど一応……」
「よし、地図を寄こせ」
「こちらです。……お気をつけて」
それだけ言うと、十四組目のパーティーはそのまま村の方角へと歩いて行った。
アレックスが手を回しているのはフィリップだけではない。木を隠すなら森の中。彼らは、ダンジョン経験者が見つからなかった時のための保険。前々から別の生徒を買収していたのである。
ここで十四番目のパーティからクリアの証を受け取り、頃合いを見て村へと帰るだけで良かったのだ。
それは九条も知り得ないこと。だからこそアレックスには自信があった。
「さて、アレックス様。申し訳ないが、デスナイトともなると俺一人じゃキツイ。ソロなら勝てるかもしれないが、守りながらとなると……」
「俺たちが真面目に戦えば勝てるか?」
「力を合わせれば確実に勝てます。周りに敵がいなければの話ですが……」
「雑魚は掃除したと言っていたし大丈夫だろう。地下七層までは魔物はいないはずだ。ゆっくり作戦でも立てながら進もうじゃないか」
アレックスたち一行は、松明を持つフィリップを先頭にダンジョン内部へと入って行った。