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「芥川、おはよう!」
「…嗚呼。」
いつもの様に挨拶して、芥川は素っ気ないけどちゃんと挨拶を返してくれる。
それだけで満たされる。
どんどん好きになっていく。
僕は芥川にこの気持ちがバレないように、必死に自分の気持ちを押し殺して隠した。
もしバレてしまったら、離れていってしまうかもしれない。
僕と芥川が結ばれる妄想を多々するけれど、それは空想の中の話で、現実はそんなに甘くない。
僕がもし芥川を好きだと芥川に知られたら、きっと離れていってしまう。
それなら僕は……。
「…おい、何をぼーっとしている。早く行くぞ。」
「…あ、うん!」
…自分の気持ちを押し殺してでも隠し通す。
でも最近は、隠すのが困難になってきている。
芥川を好きだという気持ちが自分の中でどんどん膨らんでいって、抑えられなくなる。
…好きだと伝えたい。
僕を好きになってもらいたい。好きだと言って貰えたい。愛してもらいたい。触って欲しい。接吻して欲しい。
こんな感情がどんどん僕の中で溢れて、我慢出来なくなる…。
自分の心を殺して隠す度にどんどん大きくなっていく…。
芥川は僕に優しくしてくれる。
だから、もし僕が芥川に好きだと伝えても、不思議と受け入れてくれる気がするんだ。
受け入れてくれるはずもないのに、そんなちっぽけな希望を、夢を描いてしまう。
芥川が好きだ…。
…好き…。好きだ…。気付いて欲しい…。
僕は芥川の事がー
「…好きだ…。」
「…!?」
「…!ぁ、違…、今…のは…。」
(…どうしよう…。嫌われるかも…。引かれた…?我慢してたのに…。せっかく努力して来たのに、それが全部台無しにー)
「…僕も、貴様の事が好きだった…。」
「…え?」
(…芥川が僕の事を好き…?そんな訳…)
その瞬間、視界がぐにゃ…っと歪んだ。
僕はその瞬間、ふと思い出した。
…そうだ、僕はもう…死ぬんだ。
芥川(ジュース)と両想いになってしまったから…。
ずっと隠しておくつもりだった。
僕が我慢さえすれば、芥川とずっと一緒に居られるから…。
…なのに僕は……、芥川に気持ちを伝えてしまった。
芥川ともう一緒に居られない。
…やっぱり理不尽な世界だ。こんなの…。
「…人虎…ッ!」
「…すまぬ…!貴様が…アイスと言う事を…忘れていて…ッ…。」
「…良いよ、芥川のせいじゃない…。」
「…ずっと、隠しておくつもりだった。」
「…まさか両想いだなんて思ってなかったけど、もし芥川と両想いになったら、…消えちゃうだろ?」
「…ッ!すまぬ…ッ…。」
「…ねぇ芥川。…最期くらいごめんじゃなくて、好きって…聞かせてよ。」
「…僕芥川に好きって…、愛してるって言われてみたいし…、抱きしめてもらいたいし…、接吻だってされたいんだよ…?(笑)」
「…ッ、敦…、愛してる…ッ…。」
「…うん、僕もだよ…。」
チュ
「…ん。…えへへ、幸せだなぁ…。」
「……ッ”ぅ。」
「…芥川、そんな顔しないでよ…。」
「…ねぇ芥川、我儘言っていい?」
「……なんだ?」
「…溶かすのは、僕だけにして欲しい…。芥川の特別で居たい。」
「…当たり前だろう…。貴様以外を溶かす訳がない…。」
「…ほんと…?」
「…嗚呼…ッ…。」
「…約束だよ…?」
「…約束する…ッ……。」
芥川との時間はあっという間だった。
…でも、幸せだった。
凄く…。
やっぱり死にたくは無かった。芥川とずっと一緒に居たかった。
…でも、最愛の人に殺される最期も、悪くないと思った。
そして僕の短い人生は、終わりを迎えた。
最愛の人の腕の中でー。
end.