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ここまでのあらすじ
本編の主役、コユキのお父さんにして、善悪が勝手に呼んでいるお義父さんのヒロフミは六十八歳の誕生日を迎えたのである。
お婆ちゃんである、トシ子は弟子の善悪に対してアーティファクト収集の許可を出してくれた。
コユキも期待に応えるべく、たった一人で、聖遺物収集の旅に赴く覚悟を決めるのであった。
「いいでござるか? もう一度言うよ、ここに入っているのはお昼のご飯でござるから、あんまり早く食べてはいけないのでござるよ! 我慢してね、朝御飯だっていつも以上に食べたんだから…… どう? 我慢出来そう?」
「むふぅ、今の所お腹は空いていないわよ、それ以外は何も言えないわね、まあ、頑張るわよ!」
不安しかない善悪であった。
飢えはしないだろうか…… またそんな下らない事に心を奪われていた善悪に、厳しい声が響く。
「ほれ、善悪! 己は己の修行じゃろうがぁ! さっさとこっちに来いっ!」
「善悪…… アンタこそ確り(しっかり)ねっ! えっと…… 死んじゃやだからね! ちゃんとしてよぉぅ!」
「んんんん、むむむ、 任せるでござる、り、りょっ!!」
そう言って善悪はコユキのツナギの右ポッケを指差しながらお別れの言葉、最後になるかもしれないメッセージを伝えるのであった。
「そっちのポッケに檀家たちから集めたお金、些少(さしょう)ではござるが五十万円程入れて置いたのでござる、もしっ、もしも飢えた時には、その時は、そ、それでしのいで欲しいのでござるぅ、くくくくぅっ!」
コユキは答える。
「うん、ありがとね、もし、もしも飢えてしまった時は使わせて貰うわ! 善悪! ありがとう!」
善悪は言葉を重ねた。
「なに、下らないやつ等(善良な檀家さん……)が溜め込んでいた浄財を、清らかで尊い(たっとい)コユキちゃんに託しただけでござる…… 足りれば良いのでござるが…… 約束して、きっと帰って来てくれるって!」
だから、オルカか何かかよ?
これで足りない哺乳類って何だよ! パラケラテリウムかよ…… って話である、やれやれ。
「あ、ありがとう、善悪…… うっううぅっ、きっと帰ってくるわっ、その時は食い切れないほどの、溢れかえったご馳走で迎えてね、う、ううぅぅっ」
下らない芝居は終わりそうにも無い……
トシ子婆ちゃんがイライラしながら言った。
「いつまでやっているんじゃ! もう、終わり! 終わり! さっさと行けよコユキ! 善悪も訓練を始めるゾイ!」
「「はい!」」
そもそも、ふざけていただけの二人も軽く手を上げて、それぞれの戦場に向かい合うのであった。
コユキは最寄の駅に向けてテクテク、善悪は覚悟を決めた表情で、師匠トシ子とその相方アスタの二人に向き合うのであった。
「アー、ヨロシクオネガイシ、マース」
片言なのは緊張ゆえであろう、兎に角、善悪は人生初の地獄の猛特訓に向かって行くのであった。