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#ファンタジー
時間というものは一瞬だった。
美しい喜劇は、一瞬にして終わる。
人生は時間に囚われた劇だ。
それは喜劇か、あるいは悲劇か。
月代 ゆらは病院に来ていた。
病院といっても、カウンセリングを専門とする精神病院だが。
対人恐怖症を患うゆらにとって、金を稼ぐためにもその恐怖症に争うべきだと考えたからだ。
だが、バイトの金ではどうしても食っていけない。
一時期道端の草を食べたくらいだ、今では野草の種類で食える食えないの違いが分かるくらいだ。
なぜか、ゆらは家出しているのだから。
両親に期待をさせられたのだから。
「子供は親の操り人形ではない。」
そう言って、ゆらは自らその鎖を断ち切ったのだ。
だがその代償は重く辛いものだ。
精神病院特有の明るい音楽はどうしてもノイズのようにしか聞こえない。
カチリ、カチリと刻む時計の音、子供達の遊ぶ声。
奥から聞こえる絶叫の音。
びくりびくりと、各々の恐怖に苦しむ患者。
世の中とはどうも不条理だと思った。
長椅子のソファの端で、自分の番を待っていると、端に別の少女が座ってきた。
見た目こそは少年らしいが、ゆらの観察眼では彼女は女性に見えた。
「千歳さん、千歳 巡さん〜」
どうやら彼女は巡というらしく、少し反応に遅れて彼女は診察室へと行った。
彼女のいた場所に目をやると、診察パスが置かれていた。
この病院では、診察に来た回数分スタンプを押してくれる。
よく来ているようで、通院パスのスタンプ欄はあと数箇所しか空欄はない。
どうやら気づかずに忘れていったようで、そこには彼女の体温からの生ぬるさが残っていた。
ゆらは、自身の診察が来るまでに戻ってきたら渡してあげようと決心した。
これは対人恐怖症を治すためでもある、頑張ってみようと。
千歳 巡は診察を終え、普段持ち歩いているポーチに手を入れる。
「…ない?」
診察パスが無かった。
病院に来た時にはあったので、恐らく待機場で落としたのだろう。
診察室から出たあと、巡は早足で元の長椅子に向かった。
相変わらず物静かな病室。
しかし、今日はどうやら胸騒ぎがする。
巡が座っていた長椅子に、先程と同じ人物が端に座っていた。
彼女は巡を見るなり、思い出したかのようにポーチを漁る。
「これ…あなたのものでして…?」
その手には、巡の診察パスがあった。
どうやら彼女が拾っておいてくれたらしい。
巡は手を伸ばし、声を出そうとした。
「ぁ…っ…ぁり…が…っ…。」
巡は心因性発声障害を患っている。
声を出そうとしても、出すことはできない。
全ては、アイツらのせいで…。
巡が普段気だるげなのも、それが原因だ。
『時を戻せればいいのに。』
そう思っても、一度起きた亀裂を簡単に戻すことはできない。
「無理しなくても大丈夫ですわ…。」
彼女はぼそっと呟くように言った。
巡の目を見ず、緊張した様子でもあった。
恐らく似たような精神病だろう。
そう判断した巡は、少し笑ってから変わらず長椅子の端に座った。
ゆらが診察を終え、待機室に戻ると、まだ巡は病室にいた。
ゆらは不思議そうに思いながら端に座り、ポーチから本を取り出した。
「…『そして…誰もぃな…くなっ…た』…?」
ゆらが顔を上げると、巡は驚いた表情をしていた。
どうやら無自覚に話していたそうだ。
「…ご存知でして?」
「…はぃ…好き…で。」
「私もですわ…!」
そこから、2人の会話は弾んだ。
お互い、「親」に苦労を覚えた同士だ。
惹かれるものがあったのだろう。
「そぅ…ぃぇ…ば、名前…」
「…!言っておりませんでしたわね。」
「私は月代 ゆらですわ…。」
「…ゅ…ゆら…さん。」
2人は、互いの薬が出るまで話し続けた。
巡が薬を受け取る頃には、すでにゆらは薬を取り終わっていた。
千載一遇だったなと思いつつ、病院を後にした。
病院の外に出れば、夢から覚める。
新しいバイトを探さなくては。
前のバイトでは詐欺にあったため、このままでは十分に暮らすことはできない。
巡は路地裏へ向かい、バイトのチラシを探した。
そこに、ゆらがいた。
「…!あら。」
「ゆら…さん!」
「巡さんもバイト探しですの?」
「…はぃ。」
「私、少し気になったものがありまして。」
そう言って、ゆらが指差したものは、ポップなキャッチャーなチラシだった。
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「普通こんなに胡散臭く書くわけありませんもの。」
「どこか…態とらしい…ですので。」
巡も思った。
普通闇バイトならもっと大真面目に見せるものを、偽物らしく書かれている。
だが…。
「…でも…条件はぃい。」
「…えぇ…だから怪しいのですわ。」
「…応募…してみる?」
「よろしいのです!?」
「…ぅん、ちょっと楽そぅ。」
「…ですわね。」
その2人の選んだ道は、二度と戻ることのない永遠の時へと誘われるように。
果たしてそれは幸か不幸か、吉か凶か。
まだ知る由もないのだ。
コメント
17件
やばい見るの遅れた遅れすぎたちょっとまってありがとうございます
早々友だちができたよ〜。よかったね。かわいいね。