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カタカタ…。
静かな部屋に響くのは、キーボードを叩く音。
小柳は自室で作業をしているようだ。
「小柳くーん、今時間ありますか?」
ノックもせず突然部屋に入り込んできたのは星導だ。小柳はその声に気付いて、つけていたヘッドフォンを片耳だけ外した。
「急に入ってくんなよ…あとちょっと待て、これやれば編集終わるから。」
そう言うと、また作業へと戻った。
星導はそんなのお構いなしに小柳の背後まで近付いていた。
「別に大した用じゃないんですけど、とりあえずそれが終わるまで待っときますね〜」
星導は、小柳の背後でその作業が終わるのを眺めている。
キーボードを叩く指の動きをじっと見つめる星導、どうやら小柳の指に興味があるらしい。
数分後。
小柳は編集を終えて、データが飛ばないようしっかりと保存したあと、ヘッドフォンを外してからグイーッと伸びをした。
「よし、終わったぞ星導っ…て、お前ずっとそこに立ってたの??」
「あ、はい。すぐ終わるだろうなーって思って。」
後ろを振り向くと、立ちすくむ星導が目の前に。
少々驚きはしたものの、そこはどうでもいい、と本題へ移る。
「で?俺になんの用?」
「あー…なんの用だっけ。忘れちゃいました。」
「嘘だろ…何しに来たんだよマジで」
困ったような表情を見せる小柳。
星導は続けて
「小柳くんの動かす指を見てたら全部忘れました」
と言った。
「俺の指?なんで??」
「小柳くんの指って細いなーって思って」
すると、手を出し、はめていた手袋を外してから、自分の指と小柳の指を見比べ出す星導。
「そうか?星導も細い方だろ。」
「そうでもないですよ、ほら」
自分の手のひらと小柳の手のひらを重ね合わせた。
比べてみると、細さに大差はそこまで無かったが、少しだけ星導の方が指が長かった。
「…あんま変わんなくね?」
「え、もしかしてこれ俺の方が細い説ない?」
「はは、それはあるかもな」
ぱっと手を離してそう笑いかける小柳。
星導は何故か悔しそうにしながら話を続ける。
結局、どうして星導が部屋に来たのかはわからなかった。