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#余命
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激しい雨音に紛れながら、俺は隣で鞄を傘代わりにしようとオロオロしている宇佐美の腕を掴んだ。
「これ、まともに帰ったら完全に濡れるから。…とりあえず、俺ん家行こ」
ストレートすぎる誘いが
下心を隠すための言い訳めいて聞こえないよう、必死に平静を装いながら声をかけた。
鍵を開け、薄暗い自宅の玄関に宇佐美を招き入れた直後だった。
冷えた空気の中で、すぐ背後に
雨に濡れて少し湿った宇佐美の、確かな体温と甘い匂いを感じる。
(……クソ、めちゃくちゃ可愛い)
本気でそう思ってしまった瞬間、自分自身の変わり果てた思考に、心臓が痛いほど跳ね上がった。
「……あの、先輩?」
不安そうに首を傾げる宇佐美の
どこまでも純真無垢な瞳が、暗がりのなかで俺を真っ直ぐに見つめてくる。
(くそ……何で、何でこんな時に限って、こんなに余裕がなくなるんだよ)
脳内で暴れる苛立ちとも困惑ともつかない激しい感情を抑えきれなくなり
俺は宇佐美の華奢な身体を半ば押し倒すような荒々しい勢いで、玄関の壁際へと縫い付けてしまった。
「ど、どうしたんですか…?急に、怖い顔して……」
「なぁ。もしさ…俺が、今までのからかい全部抜きにして“本気”だったら……どうする?」
「え……?」
予想通り、宇佐美は衝撃を受けたように硬直したまま、言葉を失って黙り込んでしまった。
その拒絶とも取れる沈黙に、それ以上耐え切れなくなった俺は
宇佐美の身体を強引に、けれど壊れ物を扱うように壊れそうなほど強く抱きしめた。
腕の中にすっぽりと収まる
確かな温もりと心音を感じながら、心の底からドロドロとした本音が溢れ出す。
(離したくない。絶対に、こいつだけは……他の誰の視界にも入れたくない。誰にも渡したくない)
◆◇◆◇
そこからの数ヶ月は、俺の人生においてまさに“激動”という言葉が相応しい期間だった。
放課後はどちらからともなく必ず校門の裏で待ち合わせ、肩が触れ合う距離で帰路につく。
時には、俺の些細な意地悪や嫉妬から、小さな喧嘩をすることだってあった。
けれど、結局のところ最後には不器用に和解して
また泣きそうな顔で俺の袖を掴んで甘えてくる宇佐美の姿を見る度に
俺は自分が、底なしの沼のように
どんどん彼を好きになっているという紛れもない事実を、認めざるを得なくなっていった。
もはや遊びなんかじゃない。
本気でこの世界に一人しかいない存在だと自覚してしまった今となっては
以前のように器用に嘘をつくことすらできなくなっていた。