テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
15
365
み お .
少しずつ、宇佐美の前で余裕をなくし
格好悪いほどに一喜一憂していく自分自身に戸惑いながらも
それでも止められない肥大化した想いで、胸の奥が四六時中満たされていった。
「一ノ瀬先輩」
「ん?」
放課後の無人の教室
夕日が差し込む窓辺で、宇佐美がふと、机に肘をつく俺の顔を覗き込んできた。
「あの…その、最近の先輩……すごく、優しくないですか……?」
「俺が?変わんねぇだろ、別に普通。いつも通りじゃん」
「でも…最近は前みたいに意地悪に笑うのじゃなくて、なんていうか……友達みたいっていうか、先輩に、すごく大事にされてる気がして…えへへ、変な勘違いだったらすみません」
ふにゃりと、柔らかく
少し寂しそうに笑う宇佐美の顔を見て、胸の奥がキュッと締め付けられる。
確かめたくなった。
こいつの、その無防備な胸の内を。
「……ねえ、うさちゃんに一つ質問なんだけど」
「なんですか?」
「うさちゃんさ……俺のこと、本当は好きなんでしょ?俺に、抱かれたいって思ったりすんの?」
あえて昔のような、軽薄でからかうような口調を装って投げかけてみる。
宇佐美は一瞬で耳の先端まで真っ赤に染まった。
「だ、抱かれたい…けど、抱かれたくない、です……!」
完全に意表を突いたその矛盾した返答に、俺は思わず眉を跳ね上げた。
「……なんで? 意味わかんねぇんだけど」
首を傾げ、逃げ道を塞ぐように問い詰めると
宇佐美は自身の顔を隠すように両手で覆いながら、震える声を絞り出した。
「だ、抱かれちゃったら……全部、終わっちゃう気がするから……だから、嫌なんです」
「先輩が、僕みたいな地味な人間にわざわざ関わってくれるのって……僕の反応がおもしろくて、からかいやすくて、先輩から見て“何を考えてるか分からない部分”があるから、ですよね……?」
「え……っ」
「なのに、もし、抱かれたりしちゃったら…い、一緒にいてもらえる要素が、これ以上減っちゃいます……っ。って、ぼ、僕、何言ってるんだろ……っ、変なこと言ってすみませんっ!」
「……」
核心を鮮やかに突いた宇佐美の言葉に、俺は声もなく息を呑んだ。
見透かされている。
俺自身さえ、自分の醜いプライドのせいで認めきれずにいた感情を
この純粋な後輩は完全に、残酷なほど正確に見抜いていた。
一度身体を繋げてしまえば、興味を失って捨てられるのではないか。
そうやって、宇佐美は怯えていたのだ。
俺の過去の悪評のせいで。
「……っ、そんな、抱いたくらいで俺たちの関係が変わるわけないって」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!