テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……栞」
光が、昨夜の夢の中と同じように、私の名前を呼んだ。
「……ありがとな。お前のおかげで、なんか、全部吹っ切れたわ」
「……何よ、急に。日比谷くん、まだフラフラしてるんだから安静にしてなさいよ」
「いいや、もう動ける。コンテスト、絶対獲ってくるよ。……獲ったらさ、お前に言いたいことあるから」
光が私の肩に手を置いた。
その手は、昨夜の頼りなさが嘘のように、力強く、温かかった。
「……待ってる。あんたの最高に面白い漫才、一番前で見てるから」
「一番前は浮くからやめろって。……でも、絶対に見つけ出すからな、お姉さん」
私たちは、朝日が差し込む狭い部屋で、静かに笑い合った。
恋愛なんて言葉で括るには、まだ少し不器用すぎる。
でも、壁一枚を隔てた他人だった私たちは、もう、お互いの人生に欠かせない「一部」になっていた。