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「アックさん、アックさん! 生き延びましたかっ?」


おれ自身の覚醒をさせる”最後の試練”を終え、ミルシェと一緒に村の奥に進むとあの人が出迎えてくれた。まるで悪びれる様子もなく、「当たり前ですよね」といった顔をしている。


「……おかげさまで」

「あ、でもでも、ミルシェさんには刺激が強すぎたかなっ?」

「…………それなりに楽しめましたわ」

「ですよねっ!」


ルシナさんはルティの母親だからまだいいが、リリーナさんはどうも苦手だ。ルティのフリで近づいて来るだけに厄介すぎる。


「それで、ルティたちはどこです?」

「はいはいっ、案内しますねっ!」


わざとらしさ全開の彼女がそう言うと、奥の方に見える洞穴に向かって歩き出した。その光景でネーヴェル村を霧で包み隠している理由がようやく分かった。


「洞穴が村でしたのね……」

「広い空間ではあるが、逃げ場は無いに等しいな」

「忘れさられた村……なるほど、そういうことですのね」


調子よく道案内をするリリーナさんとは別に、おれたちは村の光景に驚くばかり。洞穴の中だけあって全体的に暗いが、建物の屋根を必要としないほどの暖かさがある。水の確保に悩みそうだが貯水池がいくつかあるようだ。


洞穴の中と思えないほど家屋の作りが全体的に高く、集会所、教会、学校のようなものが見えている。もっとも子供の姿はあまり見られないが、薬師の村ということが関係していそうだ。


「あぁ、無事に戻られましたね、アック様」


一番奥に見える教会の前ではネローマさんが立っていた。彼女だけが立っているということは、まだルティたちは目覚めていないとみえる。


「無事は無事ですが、どういうことか説明してもらえませんかね?」

「説明の必要は無いかと。アック様が得られたスキル……それ次第で痛みの度合いが変わっていたはずです。どんな痛みだったかはあえてお聞きしませんが」


得られたのは斬撃、つまり剣に関するものだった。しかしそれだけでは彼女たちの覚醒を促すものとは到底思えるはずも無い。


「おれが言いたいのはそうではなくて――」

「ルティシアたちを覚醒させる手段が分からないまま……ですか?」

「まぁ、そういうことです」

「それなら魔石に聞けばいいんですよ。それが出来るのがアック様ではありませんか」


結局それか。ルーンが見えるのはおれだけではあるが、何だか釈然としない。


「……魔石に聞くってのは、ガチャをしろってことで?」

「それもあります。心配しなくても大丈夫ですよ、アック様なら」

「…………」


必要以上の答えは求めるなって表情で、ネローマさんはおれを見つめる。エルフだからかもしれないが、心の奥底までは見せてくれないようだ。


「アックさま。ここにはもう得られるものはありませんわ」

「うーん、そうか」


ミルシェもあまり関わりたくないといった表情を見せている。それならイデアベルクに戻るだけだ。


「イデアベルクへ戻られますか?」

「そうですね。それで、ル――」

「アックさんっ、アックさ~ん! こっちですよ~」

「な、何だ?」


教会の中では無く、その隣の小屋の方でリリーナさんがおれを呼んでいる。どうやらそこにいるらしい。


「はいっ、アックさんっ! 頑張ってくださいね」

「いや、おれにどうしろと?」

「ルティちゃんとシーニャさんを、おんぶか抱っこで連れて行って下さいねっ!」


二人ともまだ起きる気配は無く、スヤスヤと眠っている。まさか二人を運ぶことになるとは予想していなかった。


「うーん……ミルシェは」

「まさか、ルティや虎娘をあたしに運ばせるわけ……ありませんわよね?」

「そ、そうだな」


――ということがあり、おれだけでルティをおんぶし、シーニャも抱っこすることになった。それ自体は恥ずかしいことでもなんでもないが、ネーヴェル村から帰る手段をどうするべきか。


「そうそう、サンフィアさんはもうしばらくかかるから、ミルシェさんを連れて行った方がいいですよ~!」

「ここで修業を?」

「そうなんですよっ! 彼女の場合、言動とかも学んでいただきたくてですね~」

「それはいいんですが、ここからイデアベルクに戻る手段を……」


サンフィアが実力を上げられるならこのまま任せておく方がいい。ミルシェも力を取り戻したし、今後の行動を共にしてもそこまで負担にはならないはずだ。


「では、アック・イスティ様。洞穴を抜け、村を出て下さい。そうすれば戻れますよ」

「はい? 戻れるって……どうやって」

「あぁ、それと……この手紙をお持ちください。これを使えば、古代帝国への道が開けると思います」

「――古代帝国?」

「グライスエンドで出会った者がいたはずです。覚えていませんか?」


そんな奴がいたような。


お詫びのつもりなのか、ネローマさんは手紙、それも石板みたいなものをおれに渡してきた。行くつもりが無かったのに行くことになるわけか。


「はぁ、まぁ……一応もらっておきますが」

「では、ご武運を!」

「アックさん、外はこっちですよ~! 薬師イルジナを止めて下さいねっ! それとルティちゃんをよろしくです!!」


リリーナさんが外へと手招きしているということは、ここでの用事はこれで本当に終わりらしい。


薬師のこともついでに頼まれてしまったが。


「サンフィアはどうやって帰すんです?」

「ん~と、修行を終えたらどこかの町で待たせておきますねっ!」

「どこかって……そんな無茶な」

「ではではっ、ついて来てくださいね~」


ルティとシーニャを抱えたままのおれとミルシェは、ネーヴェル村の外を目指すことにした。

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので 、好き勝手に生きます!

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