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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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「アックさま、こ、これは――!」

「ああ……ネーヴェル村の外だったはずだ。しかしどう見ても……」

「行きも帰りも隠し通しておまけに素直に帰さないだなんて、全く面倒ですわね」


用が済んだおれたちはネーヴェル村から外へ出ることになった。出るのはすんなりと行けたが、振り返ると村の入口はすでに無く、またしても深い霧に包まれた。


進むも退くも出来ない――そう思っていたら、すぐに霧が晴れた――かと思えば開けた視界に見えてきた光景は、イデアベルク手前の都市ヒューノストそのものだった。


「おっ! イスティ……いや、アックか?」


そして当然だが、姿を見られてすぐに声をかけられる。やはり薬師の村の人間はひねくれものが多すぎた。


「ああ、久しぶりだな。ルーヴ」


イデアベルクの再建に取り掛かってからは特に気にすることも無く、会うことも無いと思っていた。


しかし今は状況が違う。


この男にも無関係とはいえないし、話を通しておく必要がある。


「公国道中以来だな! どうだ? 再建は進んでいるのか?」

「まぁな。お前とゆっくり話したいところだが、それどころじゃないんでね。ここを突っ切らせてもらう」

「弟なのに相変わらずつれない奴だな、全く。真面目な顔をしているということは、何かあったな?」


むぅ、背中のルティがずれ落ちてきそう。重くは無いが、シーニャを支えている腕もそろそろ痺れが。


「ミルシェ。後の説明を頼む」

「……かしこまりましたわ。協力態勢はどうされます?」

「戦力には足りないが、その辺も説明しておいてくれ」


ヒューノストを守護する白狼騎士団のレベルと実力は中級冒険者の連中並。イデアベルクに正規ルートで向かって来た場合、必ずここを通ることになる。


その意味でも騎士団には踏ん張ってもらうことになるのだが。細かい説明はミルシェに任せ、おれだけ先にイデアベルクに向かうことに。


氷雪地方だけあって寒さは感じるが、イデアベルクは目と鼻の先だ。ルティもシーニャも凍えることは無いだろう。除雪がしっかりされているのは正直言って助かるところだ――とはいえ、足下がおぼつかない。


「……ここはどこなのだ……ウニャ」


雪を踏みしめて歩き出したところで、シーニャが先に目を覚ます。


「目覚めたのか、シーニャ」

「アック、アックが抱っこしていたのだ?」

「その通りだ。寒くないか?」

「ウニャ、アックに耳を撫でて欲しいのだ」


撫でてあげたいところだが、ルティが目覚めない限り難しい注文だ。


「わたしも撫でて下さいっっ!!」

「むっ? その声……ルティも起きたか!」

「アック様、早く早く~! 撫でて欲しいですっ!」

「お前は黙ってろなのだ、ウニャッ!!」


やはりこうなるのか。背中のルティの様子は分からないが、シーニャの様子は変わらずだ。様子を見る限り、覚醒以前のことはまだ分かっていないとみえる。


とりあえず二人を地面に降ろしておこう。


二人から解放されたが、腕や腰にかなり疲れがきていたようで少しだけ痺れが残っている。とはいえ後は歩くだけなので、腕を思いきり振り回すことにした。


そうこうしていると、前方から何とも幼くてはしゃいだ声が聞こえてくる。


「イスティさまーーー!!!」


そうか、ようやく目覚めてくれたのか。


手を振りながらおれたちを出迎えようとしているのは、幼い少女姿のフィーサだった。人化すると大人な娘になっていた彼女だが、すっかり元に戻っている。


フィーサのすぐ近くにはエルフのロクシュが立っていた。サンフィアがいないことに落胆しているように見えるが、イデアベルクに異変は無さそう。


ゲートに近付こうとすると、何やらルティとシーニャがばつの悪そうな顔を見せている。


「ん? どうした?」


腰に手を置き、何か言いたそうな顔を二人に向けて見せているフィーサだが。


「アック様、アック様。フィーサはですね~あのぅ……」

「ウ、ウニャ」

「……ん?」


さっきまで喧嘩をしていた二人が急に反省を見せている。


何か秘密にしていたことでもありそうだ。

Sランクパーティーから追放されたけど、ガチャ【レア確定】スキルが覚醒したので 、好き勝手に生きます!

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