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鷹槻れん

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月明かりが窓辺を照らしている。
夜風がカーテンをふわりと揺らし、その向こうで彼女が愛猫を抱き上げた。
「おいで」
猫は小さく鳴き、彼女は抱き上げた猫の胸に、今日も嬉しそうに顔を埋める。
僕はその様子を眺めながら、思わず笑みをこぼした。
「……キミは毎晩〝猫吸い〟をしなきゃ気がすまないんだね」
彼女は振り返り、少し恥ずかしそうに笑った。
「だって、ホコホコとあったかくて、幸せになれる匂いがするんだもん」
言いながら、再度猫の毛並みに顔を埋める仕草があまりにも可愛くて、僕は胸がキュッと締めつけられる。
月夜の静けさの中、猫が喉を鳴らす音と、彼女の柔らかな吐息だけが響いていた。
あまりに長いことそうしていたからだろう。
猫はイヤイヤする様に身じろぐと、彼女の腕の中からスルリと抜け出して、僕の布団へ潜り込んだ。
その隙に、僕はそっと彼女の腰を引き寄せる。
「次は僕の番」
「え?」
「キミも、猫と同じ。あったかくて、いい匂いがするから」
驚いたように目を瞬かせる彼女の髪に顔を埋める。
さらりとした感触と、シャンプーのフローラルな香り。
深呼吸すると、胸の奥が甘やかに満たされていく——。
彼女は小さく笑って僕の肩に額を預けてくれた。
「私、猫じゃなくてあなたの恋人だよ?」
「うん。だからこれは〝恋人吸い〟。……僕だけの特権だ」
冗談めかして笑うと、彼女の頬が月明かりの下、紅く染まったのが見えた。
重なった影が、窓辺へ寄り添うように落ちている。
世界に、僕らと猫しかいない夜。
月が照らすのは、温もりに包まれた小さな幸せだった。
END(2026/07/26)
コメント
1件
みぅ🖤です。 すごく……甘くて、ちょっと切なくて。 「猫吸い」の次が「恋人吸い」になる流れ、自然でいて独占欲がチラ見えするところがめちゃくちゃツボでした。窓辺の月明かりとか猫の喉鳴らしとか、音も匂いも感じられる描写が美しくて、静かな世界に二人だけがいるみたいな特別な雰囲気に引き込まれました。 1話でここまで甘やかに世界観を見せてもらえるって、もう次の話が気になって仕方ないです……!