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子供は成長した。背は伸び、顔つきも変わっている。一人で歩き、走り、簡単な作業なら自分でできる。年齢に計算すれば、小学生ぐらいだろう。言葉もかなり増えた。
「お母さん、今日はどこに行くの?」
ロボットは振り向く。子供は当然のように隣に立っていた。
『敵の確認』
そう答えると子供は首をかしげる。
「てきって…人間?」
『人間だけではない』
「ふーん」
子供はそれ以上聞かなかった。外の世界に出ると、子供の視線は忙しく動いた。
崩れた建物。
遠くに見える高い塔。
ツノが生えたうさぎ。
「ねぇお母さん」
「ここ、前は人がいたんでしょ?」
ロボットは一瞬、考えた。
『記録上は、そうだ』
「じゃあさ、なんで今はいないの?」
『消えた』
「ふうん….」
子供は少し考えてから、言った。
「じゃあぼくたちだけ?」
『そうなる』
「そっか」
子供はそれを寂しいとは言わなかった。ただ少しだけ、ロボットの服を掴む力が強くなった。
拠点へ戻る途中、子供が言った。
「ねぇ」
『何だ』
「もし僕が居なくなったら、探しに来る?」
ロボットは立ち止まった。
『その前提は不要だ』
「なんで?」
『お前を失わない』
即答だった。子供は一瞬驚いた顔をしてから笑った。
「そっか」
その言葉を信じている顔だった。ロボットは子供の頭に手を置いた。撫でる、という行為に近いが、正確では無い。
それでも、子供は嬉しそうに目を細めた。
ーー守る
ーー破壊しない
命令は変わらない。だが、守る対象は、確実に成長している。
そして同時にこの世界の危険に近ずいていた。