少女は怪物であった。人の感情を食らい、人に成り代わり人のふりをする。
ときには人の憎悪を生み出し、ときには人の悲しみを生み出し、時には人の劣情を生み出しそして食らう。
「今回は恋愛感情を試してみようか」
少女は獲物を探すため街を練り歩く。
商店街に入ってみるとそこは大賑わいだった。
人混みと煩さにめまいがする。
ふと視線を向けると好青年が品出しをしていた。
「こいつにしよう」
少女は呟き、青年の側へと向かった。
――
「おにーさん、これ落ちてたよ」
といい、青年に声をかけてきたのは、可憐な少女だった。
蜂蜜色の髪は靡くたび花のような香りがし、夜を詰め込んだような黒曜石色の瞳は長いまつげで覆われていた。
普通の人間なら思わず見惚れてしまうような少女だ。
手には青年が落としたであろう、林檎が乗っていた。
「ふふ、ありがとうございますわ」
青年はお嬢様だった(?)
思わずあっけにとられる。
しかし町の人は変わらず通り過ぎていく。
まるでそれが日常のように。
青年はたおやかな笑みで少女を出迎える。
「せっかくですしお礼になにかプレゼント致しますわ。」
思った反応とはかけ離れていたが、問題はないだろう。
「はい。ありがとうございます」
少女は中に入ることとした。
――
おずおずと店内に上がると、まず、果物に目が行った。
人の食事を必要としない少女ですら思わず魅入ってしまうほど美しく、そして甘美だった。
「ふふ、品物にはこだわっているのよ」
そう語る青年は誇らしげだ。
まるで我が子のように大切に果物を扱う。
(こいつ、変人だ)
少女は静かに距離を取った。
続き?ああ、いいやつだったよ
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