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俺は夢中で地下室を飛び出した。
もう一つの扉を開けると、階段に飛びつくようにしがみ付いた。
この間、アテナと攻防の末にこの階段を上った時よりもさらに体力が落ちている。
とても足の力だけでは上れない。
俺は這いつくばるように階段を上っていった。
「―――く……そ!!」
少女がなぜ俺のことまで殺そうとしているかはわからない。
しかしそれを問いただす時間もない。
俺は無我夢中で階段を上がった。
廊下に飛び出し、玄関に向かう。
しかし―――鍵が掛かっている。
ドアノブの上の鍵は解除しているのに、見えないところに鍵がもう一つあるのか、それとも防犯システムか何かで電子的に施錠してあるのか、扉は開かない。
トン……トン……トン……トン……
やけにゆっくりと地下室から階段を上る音が近づいてくる。
俺は玄関を諦め長い廊下を通ってリビングに出た。
外に飛び出せそうな掃き出し窓がいくつもある。
鍵を弄る。
やはり開かない。
ダイニングの腰窓の鍵も外す。
開かない。
ダイニングチェアをひとつ持ち上げると、ガラスに思い切り叩きつけた。
しかしそれはバインと鈍い音をさせて跳ね返された。
「―――くそ……!」
これでは幽閉場所が地下室からこの家に変わっただけだ。
足音が近づいてくる。
俺は和室に逃げ込んだ。
どうにか、
どうにかして、この家から逃げなければ、
殺されてしまう。
愛と救済の女神、ヴィーナスに……。
パリッ。
俺の裸足の踵が何かを踏み砕いた。
「――――?」
ゆっくり見下ろすと、
彼と、
目が合った。