テラーノベル
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「…どういうことだ?」
腕を組み、不愉快そうに片方眉を上げる。無理もない。突然閉じ込められたかと思いきや、偽物を見つけ出せ、なんて。
そんなアーサーの言葉に応えるように、言葉を続けた。
【そのままの意味だ。偽物とわかっているだけであって、その偽物がスパイだという情報はまだない】
【けれども、見つけて欲しいのだ。もし国家機密などを漏らされてしまうと、情報漏洩に繋がってしまうからな】
…おかしい。普段ブラックだったり仕事を押し付けてくる上司でも、国の化身については細心の注意を払っているというのに。そんなにも、あっさりと偽物と変わってしまうのか。
「俺達の中に偽物がいるという確定の証拠は?」
【その偽物の書類を見た。今はまだ見せることのできないが、確実にいると言える】
「……そうか」
まだどこか納得してないような顔で、そう呟いた。実際、皆言わないだけで心の中では納得していないのだろう。俺だってまだこの話を信用しきれていない。
「それで、僕達は何をすればいいんですか?」
【まだ…偽物を見分けるために話をするだけで良い】
想像していた答えとは違っていたため、思わず口を挟んでしまう。
「…話をするだけかい?」
【今日1日で偽物が分かったら、な。】
1日で分かったらって…それじゃあまるで2日目になったら何かするみたいな……
すると頬杖をつきながら、面倒くさいという思いが滲み出ている声で、先ほどの話をまとめる。
「なるほどな。俺達はその偽物が誰かわかるまで出られねぇってわけか」
【話が早くて助かるよ。これも情報漏洩をさせないためだ、許してくれ】
またもやジジっとノイズが走る。今更だが、声には加工がされているため、聞いても誰かなんて見当もつかない。
さて、どうしようか。
皆が思い思いな気持ちを抱えている中、菊は冷静な声で声を上げた。
「とりあえず、軽くでいいのでお話しませんか?」
「なにか手がかりが掴めるかもしれません」
その言葉に同意するように声を上げるものや、頷くものもいた。俺は後者だ。
菊が言ってくれた通り、まずは話をしなければ何も始まらない。すると、このような場面は慣れているであろう、ルートヴィッヒが指揮をする。
「では、ここからは俺が仕切ろう。まずは…兄貴からでいいだろうか」
「ja!わかったぜ」
そうして元気よく返事をした。
「話しっつってもなぁ…あー、イヴァンの野郎と湖に落っこちたこととか?」
「うふふ、今でもよーく覚えてるよ」
「はっ、はは…」
師匠の口から苦笑いが漏れ出る。イヴァンと湖に落ちたという話は初めて知った。
師匠は昔話をするような人じゃないため、初めて聞くのも無理はないだろう。そんな2人の様子にルートヴィッヒは、納得したかのように頷いた。
「うむ。とりあえずはいいだろう。」
「じゃあ、次は僕かな?」
師匠の隣に座っているイヴァンがそう言った。
「ああ。その調子で順番に頼む」
そんなルートヴィッヒの言葉に続いて、みんなが次々と話していった。
「次は我あるな!」
隣にいた菊が少しだけぴくりと反応する。それは隣に居た自分だけしか気づいていないようで、他の皆はそのまま王の話を聞いていた。
「…菊?どうし」
「んー…あ、昔竹林で菊に会ったこととかどーあるか?」
なるべく小さく、それでも菊に聞こえるように聞こうとしたが、王の少し高い声によってそれは遮られた。
もう一度聞こうともしたが、それほどではないだろうと思い、話を聞くことに専念した。
「あれ、一体何千年前の話なんだい?」
そんな王の話に疑問が生まれたため、丁度隣に居る菊に問いかける。
菊は、目を伏せ何かを考えているようだった。
「…もう爺ですので。いつ頃かなどとうの昔に忘れましたよ」
目を伏せることをやめ、目線をこちらに向け微笑んだ。
「そうかい?」
本人がそう言っている。それに、自分が体験していないだけで、千年なんて経ってしまったら忘れてしまうものなのだろう。
まだまだ話は止まることをやめない。
「一通り話したが…本当にこんなものでわかるものなのだろうか」
「というか、俺達がこんなところに閉じ込められてる間仕事は良いわけ?」
面倒くさそうにその金髪の長い髪をくるくると指で弄ぶ。仕事の話が、いつもストライキしている彼の口から出ることが驚きだった。
「お前がそんなこと言うなんてな。もう、ストライキはやめたのか?」
煽るように片目を閉じ、腕を組んだ。
自分が思っていた内容と、全く同じことを言っていて、思わず漏れ出てしまったかと心配になってしまった。
「お兄さん仕事はちゃんとやる子なの!ストライキはやめないけどね」
ぱちんっとウインクをする。なんだか、ルートヴィッヒの胃痛が広がりそうな話だ。
「でも、皆さんがお話をしても、何もおかしなところはありませんでしたよね?」
「ああ。ただのいつもの宴会だったな」
いつもの宴会はもっと激しいが、何もおかしな点がなかったというところは、同意することができる。
このあと何をするかもわからないため、妙な空気が流れた。すると、そんな自分達のタイミングを見計らってか、またもやじじっ、とノイズの様な音が響く。
【ありがとう。話はこちらも聞かせてもらったが、まだこの程度で判断できるほどではないため、2日目も行ってもらおう】
……判断できるほどでは、ということは、もう誰かと誰かぐらいは絞れているのかい?
…と、聞きたかったが、流石に今ここでそれを聞いて妙に警戒されては困る。静かに口を閉じた。
「2日目って言ってもよ、部屋なんかねぇだろ?」
【その部屋の奥にドアがあるだろう。そこを開くと部屋がある。各自好きなところを使ってくれ】
「…随分準備がいいな。」
【それ程、我々にとって情報漏洩というのは避けたいことなのだよ。】
「ふんっ、そうかよ。」
【それでは、あとはゆっくりしていてくれ。2日目になったら、やることを詳しく話そう。】
そう言って、じじっとノイズの音が響いた後、音は消えた。今の話を書いて、皆が今心配していることは、確実に自国民だろう。
俺たち国というのは、自分の体になにかあったら勿論領土にも問題は発生する。
ましてや外の状況が確認できない今では、皆重い思いのことを思っているだろう。
すると、そんな重い空気を紛らわせるかの様に、少し高い声が思考を止めさせた。
「ヴェ〜、俺もう疲れちゃった…ルーイ、部屋見てきていい?」
「んんっ、そうだな……今考えてもしょうがないだろう。明日もあるのだ、まずは休もう」
そんなルートヴィッヒの提案に、みなが提案した様にゾロゾロと動き出した。その発言が出される前に言っていたフェリシアーノは、わーい!と声を上げ、喜んでいる。
「ほら、行くぞ」
「わ〜!待ってよルーイ!」
俺もそんなみんなについていくかの様に、少し小走りになって扉の方へと近づいた。
「ちょ、待ってくれよ兄弟!」
「もう…早く!」
「……なぜ、明日も?」
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