テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
放課後、教室には数名の生徒が残り、机の隅に潜むように座っていた。
「ねぇ、昨日の放課後の二人、見た?」女子生徒が小声で囁く。
「見た見た! やっぱり距離近かったって!」男子生徒も興奮気味に答える。
コビーとミユは資料整理に没頭しており、まだ生徒たちの存在に気づいていない。
「……今日も静かだね」ミユは眉をひそめ、資料に目を落とす。
「ええ。でも油断はできませんね」コビーは微笑みながら小さくうなずく。
生徒たちは互いに目配せをし、机の影から二人の距離や動きをじっと観察する。
手の位置、肩の角度、微笑みや視線のやり取り――どれも「証拠」に見える。
ふと、ミユが頭を上げ、教室の端をちらりと見やる。
「……誰か、覗いている?」その鋭い声に、生徒たちは一瞬で固まる。
コビーは微笑みを絶やさず、そっとミユの肩に手を添えながら言う。
「大丈夫です。今日も資料整理ですから、気にしないでください」
ミユは視線を生徒に向け、低く冷たい声で告げる。
「余計な詮索をしていると、明日の課題を増やすわよ」
生徒たちは息をのむ。肩越しに二人の目を避けながらも、観察の手は止められない。
「……でも、やっぱり怪しい……」女子生徒が小声でつぶやく。
二人は互いに目で合図を交わす。コビーは微笑み、ミユは厳しい顔のまま、わずかに肩を落とす。
「……今日も危なかったね」
生徒の鋭い観察眼は、二人の秘密を少しずつ浮かび上がらせる。
だが、ミユの厳しさとコビーの優しさがあれば、まだ完全にはバレない。
教室の静けさの中、二人は肩を寄せ合い、互いの存在を確かめる。
秘密の恋は、生徒の目の前でかすかに揺れながらも、まだ守られていた。