俺と亮平が階段を駆け下りてリビングにつくと、お母さんは食器を並べていた。火を止めたばかりなのか、まだキッチンからぷつぷつと音が鳴っている。俺が「母さんおはよー」というと、俺のほうを向いて固まった。
一応予想はしていたが、本当になるとは。
「ちょっと、待っててくd…違う違う。ちょっと待ってて、ね?」
亮平のそばを離れてお母さんの目の前で手を振る。
でも、びくともしない。瞬きすらしていなくて怖くなってきてしまった。
「れーん。ねえ、まだぁ?」
後ろから亮平の声が聞こえる。まるで幼稚園児化のような言葉遣い。まるでホワイトチョコレートかのように甘い声。大人とは思えない。
「亮平、あのさぁ。そんな待ちくたびれてるならお母さん動かすの手伝ってよ」
「んもぉ、しょうがないなぁ。蓮。どいて」
言われたとおり、俺は隅っこに行った。亮平はさっき、俺がいた場所くらいで立ち止まり、俺と全く同じことをした。
でも、お母さんの様子が違った。
「蓮君のおかーさーーん。固まっちゃってますよー」
「あ、ああ。ごめんなさいね。今すぐ準備するから、待っててね」
そう。亮平がやったらすぐにお母さんは動いたのだ。
ちょっと、あとでお母さんに怒ろうかな。
「はい!並べ終わり!」
「というか、優とお父さん起きてなくない?」
「あ、そうじゃん。亮平さんの席もない…」
「とりあえず優とお父さんは俺が起こしとくから」
「あ、うん!お願いね!」
俺2階へ2人を起こすために階段を駆け上った。
「優ー?入るよー?」
返事は無い。恐らくまだ熟睡しているところだろう。
「優。起きろ」
優の体を揺らしながら言うが、聞こえていないのか起きる気配が全くない。
「ご飯。食べないの?」
「食べる」
何と単純なのだろう。いや、これは食いしん坊という言葉があっているかもしれない。俺がそう思っている時、優はムクリと起き上がり、寝ぼけたまま階段を下り下りて行った。
俺はその姿を目で追いながらお父さんの部屋へ行った。
コメント
30件
阿部ちゃんが幼稚園児みたいな声!?