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夏休みに入ってからは、タケシ先生に貰った南京錠付きのオシャレなチョーカーを、首にずっと付けたままでいた。タケシ先生の首には、南京錠の鍵が付いてるネックレスがぶら下げられていて――
こうやって目に見える形で、縛り付けられているのを見ることができるだけで、毎日がすっげぇ幸せだった。
「もうすぐタケシ先生のご両親に逢えると思ったら、ワクワクしてきますよ」
「そうか。良かったな……」
動きはじめたフェリーから体に海風を感じつつ青空を仰ぎ見て、タケシ先生に話しかけた。その顔はあまり浮かないものだからこそ、必然的に俺の気持ちも沈んでしまう。
フェリーに乗る前まではそれなりに会話があったのに、今はむっつりと黙り込んでしまい、それに対してどうしていいかわからず、内心焦った。
今の現状もそうだけど、タケシ先生のお父さんと例の話をするとき、穏やかにかつ和やかに話し合いが進められるように、自分なりに考えてみたんだ。
まずは――
「えっとタケシ先生のお父さんって、どんな感じの人ですか?」
以前ケンカしに行くと言った言葉があったので、きっと気難しい人なんだろうなぁと、容易に想像ついたのだけど。
「……親父は俺に似てる。間違っても好きになるなよ」
「へえ、好きになってしまうかもしれないくらいに、タケシ先生に似てるんですか。これは逢うのが、超楽しみかも」
「お気楽なヤツだね、まったく。似ているから厄介だっていうのに」
長い睫を伏せて、水面に視線を移したタケシ先生。そのただならぬ様子がじわじわと伝わってきて、不安がどんどん募っていく。
「もしかして顔だけじゃなく、性格も似ている、とか?」
「全部、同じってワケじゃないけどね。似ているからこそあっちの考えていることが、手に取るようにわかっちゃってさ。言い合いをしている内に、ケンカに発展しちゃって」
うわぁ、それはそれで厄介かも――
「そ、そうなんですか。大変っすね……」
「ああ。だからお前との付き合いも、ズバッと言ってやろうと思って。下手に濁したりしたら、余計にややこしくなるだろうから」
考えるだに恐ろしい――どうやって、ズバッと言うつもりなんだろ。素直じゃないタケシ先生が投げつける言葉を、きっと素直じゃないタケシ先生のお父さんは、どう受け止めてくれるんだろうか。
ブルブル ((;゚ェ゚;)) ブルブル
俺、タケシ先生のフォローがうまくできる気がしねぇよ。最初に言われた通り、口を挟まずにただ黙っていれば、穏便に収まるのかな?