テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「 喘息 」
もとぱ(過呼吸、呼吸困難(?) 有
蒸し暑い夏の夜。
蝉の声はとっくに止んで、カーテンの向こう窓からは湿った風が部屋に入ってくる。
畳の上 布団の上で元貴はうつ伏せになっていた。
息を吐く度に、喉の奥で ぜぇぜぇ と軋むような音が鳴る。
「 元貴 …..まだ、苦しいか? 」
滉斗の声が静かに、部屋の空気を揺らす。
返事は無い。
でも、彼の細い肩が小刻みに揺れていて 苦しそうに首を振るのが見える。
滉斗は氷嚢をぎゅっと握りしめたまま、元貴の背中にそっと手を置いた。
湿ったTシャツの上からでも 熱っぽい体温が伝わってくる。
「 吸入器は? 」
元貴は手を伸ばすけど 指先が震えて吸えない。
「 貸してみ。俺がやる。 」
滉斗はそっと吸入器を持ち上げて、元貴の唇に当てる。
呼吸に合わせて 薬が肺へと入り込んでいく。
「 ゆっくり、ゆっくりでいい。お前 また無理しただろ。」
元貴の瞳が、薄暗い部屋で潤んで揺れていた。
「 だって…..、若井が来てくれるって思ったら…部屋、掃除したくて… 。」
「 バカ。…..会えなくなるくらいなら、散らかってたっていい。」
滉斗は、元貴の背中をなぞるようにさすってやる。
指のひら、呼吸の音、汗ばむ肌。全部が静かに夜を満たしていく。
「 …..なあ、元貴 」
「 ん…..? 」
「 俺、こうやって背中さすってる時が 1番幸せかも。 」
「 …..へんなの、」
「 お前が生きてるって、ちゃんとわかるからさ、 」
元貴の目から、ぽろっと涙が零れた。
喘鳴が少し治まって 吸う息が少しだけ深くなる。
「 ねぇ、若井… 」
「 ん? 」
「 死んだら、やだ? 」
「 ああ。お前と涼ちゃん以外に手、当てたい背中なんてねぇから。」___
#1.「 息をする音だけが 夜を満たして 」
短編集作ります。体調不良…大好物です。
是非皆さん作ってくだされ。
あと…リクエスト下さい🙇🏻♀️
コメント
7件
え…好きです…………。┏┛墓┗┓
体調不良大好物過ぎてやばい_:(´ཀ`」 ∠):
短編集いいですね~!たくさん押しておきました