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嗚呼 、 そうだ 。
「 芸術家にとって 、 死はこれ以上なき芸術だからね 。 」
それが君の口癖だった 。
私は小説を書いた 。
彼の死を芸術としてこの世界に残すために 。
都心だとは思えないほどの茂みの中には 、
まるで隠されているような小さなアトリエがあった 。
錆びたドアノブを握りドアを開けるとそこには小さな森が広がっていた
アトリエの窓から差し込む午後の光は 、
埃を金色に染め、
床に散らばったスケッチを静かに照らしていた。
古びたアトリエにはアクリル絵の具や水彩絵の具 、
キャンパスなどが揃っていた 。
床に散らばったスケッチたちは、
拾われることを待っているのか、
それとも見捨てられているのか、分からなかった。
古びたアトリエには
アクリル絵の具、
水彩絵の具、
キャンパスなどの
創作に必要なものは一通り揃っている。
否、
「揃っている」というより
「置き去りにされている」と言った方が近い。
その散乱の中で、 一際目立つ綺麗な絵が立て掛けてられていた 。
桃色で塗られた肌は 、 人間の表面的な美しさを表している様 。
「 .. 何してるの 。 」
背後からかけられた声に、
私は気づかなかった 。
私は慌てて謝った 。
「 “ 道に迷ってしまって ” 」
咄嗟に吐いた嘘は 、 彼の前では薄かっただろうか 。
「 まあ 座りなよ 。 」
「 “ え 。 ” 」
その言葉には 、
追い出す気も 、
迎え入れる気持ちも
含まれていないように感じた 。
人のアトリエに勝手に入ってしまったのだから 、
きっと何か言われると思った 。
彼は不思議そうな顔をして 、
私に椅子を出してくれた 。
その仕草は優しかったが、
そこに私を迎え入れる感情は、感じられなかった。
私はまだ知らなかった。
あの午後の光と、
あの言葉と、
あの沈黙が、
ゆっくりと私の人生を
別の形に塗り替えていくことを。
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