今日こそこの世界に別れを告げよう。
この学校でもっとも空へ近い場所に立つ。
校庭からはボールの弾む音や生徒の笑い声が響いてくる。
あそこに落ちたら、びっくりされるかな。
痛いかな。
苦しいかな。
でも、今までのことに比べたら……。
結局、またいつものようにその場へしゃがみこんだ。
決心がつかないまま、もう半年は経っただろうか。
ぼーっと空を見上げる。
ここから見る空はとても美しい。
この時間だけは僕が僕のままでいられる気がした。
静かに吹く風を感じながら、脇腹の痣をさする。
僕の居場所はどこにもない。
家にいても痛いだけだし、学校に来たって苦しいだけ。
生きてる意味なんてないって分かってる。
だけど……どこか諦めきれない気持ちがあるんだ。
いつかお父さんもお母さんも優しくなるかもしれない。
そしたら、学校も楽しくなるはず。
たくさん友達つくって、休日に遊んで……!
僕には無理だ。
無理。
無理なんだ。
そんなことできるはずない。
僕は願っちゃいけないんだ。
叶うはずもない夢なんて──
「あの!」
急に話しかけられた。
名前も知らない女の子。
「と、隣、座ってもいいですか?」
戸惑いながら頷くと、彼女は僕の隣に座った。
他愛もないことを話しながら一緒に空を見上げる。
真っ青に染まった美しい空。
「明日も来ていいですか?」
「構いませんけど。」
「じゃあ、明日も来ます!」
彼女は元気な笑顔でそう言う。
僕が空を見上げる理由が、もう1つだけ増えた。
コメント
6件
エモ…… この二人がいつか幸せになることを願っております
ついさっきまで夕焼けを眺めていたので、いつもの倍以上感情移入してしまいました...w 短い間でも主人公の不安定な期待や、小さく差し込んだ希望が深く伝わり感動しました!
雰囲気がなんか、綺麗すぎない半透明くらいの雰囲気なのがすき