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スマホのアラームによって起こされる。爽やかで癒される音楽に設定したものの
こうも叩き起こされると全然爽やかでも癒される音楽でもなんでもない。なんが「ハワイアンだ」と思う。
「…月曜か…」
スマホのアラームを止め、ロック画面を見て呟く。
「月曜…いや、月曜か?」
寝ぼけ眼で、もしかしたら今日はまだ日曜日かもしてないという
儚い微かな願いを込めてもう一度スマホの画面に触れる。ピカッ。画面がつく。曜日の確認。
「…月曜日…」
枕に顔を埋める。また今日から仕事仕事の1週間の…始まり始まりぃ〜。
「そんな紙芝居みたいに可愛ければいいけどな…」
ベッドから起き上がり、洗面所に行って歯を磨き、顔を洗い、電動シェーバーで髭を剃る。
たまにあるトーストすら焼くのがめんどくさい日には数秒でチャージできる飲むゼリーを飲む。
その日もあまりにもめんどくさくて、少しでもゆっくりしたくて
部屋着のままテレビを見ながらゼリーを吸う。
「今朝の特集は今流行りの「ヨダレモンスター」通称「ダレモン」について深掘りしてみたいと思います」
ジュルドゥルとゼリーをゆっくり吸いながらボーっとテレビを見る。
ダレモンかー。空(そら)が好きって言ってたなー
と思う。空とは海の11個下の妹の名前である。海には20歳の弟もいる。その名も陸。
そう。陸、海、空である。順番はなぜか海が一番初めだったが。
飲むゼリーの飲み口を咥えスマホを出す。画面をタップして画面をつけるとちょうど妹からLIMEが来ていた。
空「お兄ちゃんめざめのテレビ見てる?私の好きなダレモン特集やってる」
兄というものは、特に17歳くらいの妹からしたら
ウザかったり、鬱陶しかったりして無視したり、あまり関わろうとしないものだろうが
11歳も離れているとそうはならないのか、それとも海の妹が特殊なのか、海の妹の空は海によく懐いている。
しかし空の兄、海の弟の陸にはあまり懐いていないらしい。
海「見てる見てる。今度なんか買っとくよ」
と空に返信した。数秒でチャージできる飲むゼリーを数分かけて飲み
重い腰を上げて、嫌々スーツに着替える。玄関で革靴を履きながら
「…はあぁ…帰りたい」
まだ家なのにそれを呟く矛盾。めちゃくちゃ重く感じる玄関の扉を開ける。外が眩しい。
その眩しさが取調室で圧迫取り調べで容疑者に突きつけるランプのように
出勤という事実を突きつけてくる。電車に揺られ、会社の最寄り駅で降り
会社の入っているビルに入り、まあまあ満員のエレベーターに乗る。自分の会社の階で降りる。
「おはよーございまーす」
「おはよーございまーす」
朝の挨拶をして自分のデスクのイスに座る。
スマホをデスクの上に置いて、パソコンの電源を入れる。パスワードを入力し、ホーム画面へ。
「おはよーございまーす」
という声に一瞥もせずに返す海。
「おはよーございまーす」
声が近くなる。すぐに風天(ふうあ)だとわかる。
「近い近い。うるさいうるさい」
「あぁー…。今日から一週間だなぁ〜」
キャスター付きのイスで後ろにそり返りながら海のイスにぶつかってくる風天。
「それ言う?月曜の朝一番に?」
「思わん?」
「…いや。思うけどさ」
「キツイわぁ〜」
「わかるけど。たまに「なんのためにお金稼いでるんだろう」って思ったりするけど」
「そこまで言ってない」
そんなこんなで仕事が始まる。上司、先輩、後輩などから
「これなんですけど」
「これなんだけどさ」
「「どう思う?」」
という漠然とした質問を投げかけられ、海なりの視点をぶつける。
海が意見を求めるときは大概風天(ふうあ)。しかし、海の所属する部署はあくまでもマーケティング。
自分たちの世代だけでなく、下の世代、上の世代の視点、意見も大切。
今やネットで各世代の意見などを見れるが
実際に生きた、生の意見が大切なので、結局は上司、先輩、後輩にも意見を求める。
そして全世代共通するのが、今流行っているものを企画に入れがちということ。
上司より上の世代というのは世間の流行りなど気にしないし、興味ないという人が多い。
しかし、世間で流行っている、若者、中年層にも流行っているということは
上司より上の世代からしたら、自分の娘、息子、孫、孫娘に流行っているということ。
孫、孫娘に喜ばれるように買うなんてことも多い。
なので世間的に爆発的に流行ったものは、とりあえず全員が企画書に入れ込む。
なので結果その流行りもので行くことは大概決定となるのだ。
そしてその流行ったものを流行る前から企画として提出していたものが部内で目をつけられる。
目をつけられるといっても悪い意味ではない。
その流行ったものを流行る前から企画として提出していたものに近づこうとする人が増え
「最近どお?なにが好き?」など情報を引き出そうとする連中が増える。ここまで説明して
「そう。その流行りものに敏感なのがこの私、海です」
「この私、風天です」
なんていう展開だったらよかったのだが、海も風天も良くも悪くも世間にあまり興味がない。
なんなら一番流行を先取りしているのは
空「お兄ちゃん!お兄ちゃんとこの会社でグッズとか出さないの?限定グッズとか欲しいんだけど」
海の妹、空だった。カフェで風天とお昼ご飯を食べながら空とのトーク画面を眺める。
「お。彼女でもできた?」
「土日で?できるわけないだろ。妹だよ。妹」
「あぁ。妹ちゃんか。何歳になった?」
「17」
「お。JK」
「そ。JK。流行に一番敏感」
「空ちゃんに聞けばうちのマーケティングも安泰か」
「よく名前覚えてたな」
「中学生のときか、最後に会ったの。海の妹にしては可愛かったからなぁ〜」
「やめろよ?犯罪だし、風天にお兄さん呼ばわりされるには勘弁だから」
「そうか。オレが空ちゃんと付き合ったら海がお兄さんか」
「マジ勘弁」
という話をしながらお昼ご飯を食べ終え、コーヒーを飲みながらブレイクする。
「…いつからだろう」
と紙コップを見ながら呟く海。
「お。どうした?いつからだろう、嘘をつけるようになったのは?」
「違うわ。コーヒー。ブラック飲み始めたのはいつからだろうなって」
「あぁ〜…言われてみればいつからだろ」
「…入社したときはコーヒーフレッシュとか入れてた気がする。あとスティックシュガーも入れてた」
「オレも入れてた」
「…あれ。マジでいつからだろう」
「…」
考える2人。店内のBGM、店内の人々の会話、トングの音、コーヒーを淹れる音などが鮮明に聞こえる。
「わからん」
「それな」
「…入社して上司とか先輩の顔、名前覚えて」
「仕事内容も覚えて」
「そうそう。で、最初のほうは簡単な仕事というか、覚えるまでは自分のペースで仕事して」
「あぁ〜あれじゃね?自分のペースで仕事してある程度覚えてきたときの
次のプレゼンに間に合わせるための企画書作りの忙しさのときじゃね?」
「あぁ〜…あぁ。そのときか」
「あ!思い出したわ。コーヒーブレイクしようとしたけど
なんかコーヒーフレッシュもスティックシュガーも入れる時間もなんかもったいなくて
コーヒー、素のまま入れて席戻って飲みながら仕事してって感じ」
「あぁ〜。その頃か。オレもそうかもしれん」
「苦っ。って思ったけど、それで目覚めたんよ」
「あぁ。そうかも。ブラック目覚めるんよな」
「そうそう。美味しさは後から見出した」
「それ。香り、飲みやすさ重視で味は…うんって感じ」
「それな」
そんな話をしながら2人ともコーヒーを一口飲む。
コーヒーフレッシュとかスティックシュガーの話をしたので
少し甘いのが飲みたくなって2人とも首を傾げる。
「そーいえば妹ちゃん、今何が好きなん?」
「今?今はあれ、ダレモン(ヨダレモンスターの略称)が好きだと」
「あぁ〜。今朝もめざめのテレビで見たわ」
「その特集オレも見たわ」
「ダレモンエグい流行り方してるよな」
「妹はずっと言ってた。可愛い可愛いって」
「さすが空ちゃん。我らがエース」
「お兄ちゃんの会社でコラボしないのーだってさ」
「いや、全員企画書には入れ込むけどさ、権利の関係とかがめんどくさいんよな」
「それな。こんだけ流行ってると
向こうさんもいろんな企業からのコラボのオファーとかあるだろうし。だから向こうも選べるんよな」
「そうそう。ここまで流行っちゃうとなぁ〜」
と言いながらそり返る風天。
「流行りかけ、流行る手前とかだと、向こうさんも企業とのコラボで喜んで受けてくれるんだけどな」
「もっと早めに企画書出して通しとけよ」
「…たしかに」
となにも言い返せない海。コーヒーを一口飲む。
「…カフェオレとか飲みたくない?」
「…わかる」
ということで休憩時間が終わる10分前に席を立つ。
そして注文カウンターでテイクアウトでカフェオレを頼んで会社に帰った2人。
自分のデスクのイスに座ってカフェオレを飲む。
「あぁ〜…。失敗かも…」
「…それな」
一口飲んだ風天も同意する。
「どうしたんすか、2人とも」
後輩の落合がお昼休憩から戻ってきて席に座りながら2人を見て言った。
「お。珍しい。水貝井(ミカイ)先輩がカフェオレ飲んでる」
「なんでわかったん」
「いや、カップの横に書いてあるんで」
海がカップを見る。
「…どこ」
「ここですここ」
「あぁ。こんなとこに書いてあるんだ」
「友達がカフェでバイトしてるんで。で?なんで項垂れてたんすか?」
「え?ひさしぶりにカフェオレ飲んだけど」
「失敗だった」
と風天が続きを言った。
「不味かったんすか?私はブラックのほうが不味いと思うけど」
「いや。甘くて優しくて包まれるような美味しさだった…」
風天も静かに頷く。
「え。じゃあ大成功じゃないっすか」
「…こんな甘くて優しかったら…」
「眠くなる…」
海と風天、同じタイミングで大きなあくびをした。
「…。あぁ…。なるほど?」
と「やれやれ」と言った顔で落合は自分のデスクのイスに座った。
眠くなったからといって休憩時間が延長になるとか仕事がなくなるということはない。
休憩時間はいつも通りの時間、午後の仕事もきちんとある。
ただ休憩時間が終わったからといってチャイムが鳴るとか
休憩時間が終わってきっちりに仕事をしないと怒られるということもない。
なのでしばしだらーっとした海と風天。午後も張り切って
「あぁ〜…」
張り切って
「ねっむ」
…。張り切っ
「あぁ〜。帰りた」
…嫌々仕事を始めた。
「お疲れ様でしたー」
「お疲れっしたー」
月曜日から残業する人は稀である。海も風天も定時少し過ぎに会社を出た。
ちなみに後輩の落合より早く会社を出ている。
「お疲れー」
「ほんとお疲れだな。カフェオレ飲むとしたら」
「ブラック飲む前だな」
「それな」
「んじゃ、また明日」
「うい。また明日ー」
ということで海も風天も家に帰った。
「ただいまー」
誰もいない部屋に向かって言う海。堅苦しい革靴を脱いで、スーツジャケットを脱いで
Yシャツを洗濯機に放り投げ、スーツを脱いで速攻で部屋着に着替える。
「あぁ〜〜」
というゾンビのような声を出しながら、生存者目掛けて向かって行くゾンビのように冷蔵庫に向かって行き
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、何も考えずプルタブを開け、ビールを飲む。
「…っ…はぁあぁ〜…」
キマる。一方風天もビールを飲んでいた。
しかし、缶のまま飲むのではなく、しっかりとグラスに注いで飲んでいた。
おしゃれな部屋でしっかりとグラスに注いで飲む風天。
テンションとキャラと違い、しっかりとしている一面がある。仲良い2人だが意外と違うタイプの2人。
「「飲んだら寝るか」」
しかし言うセリフは同じ。2人とも家に帰る途中のスーパーで買ったお弁当やお惣菜を温めて食べながら
ビールを飲みながらテレビを眺めたり、スマホをいじったり。
海はビールを飲み終え、缶を軽く凹ませ、缶専用といっても過言ではないゴミ袋にシュートし
風天も空になった缶を潰して、缶専用といっても過言ではないゴミ袋に入れ
グラスをしっかり洗って、水切り台に置いて、2人とも次の日のために早めに眠りについた。