テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「絶対お断りです。そんなこと」
「…我は、お前のことを思って、!」
「…日本?」
「あ、アメリカさん、えっと…どうかされました?」
「いや、君と中国の声が聞こえてきたから駆けつけたんだけど、お取り込み中だったかい?」
「いえ、大丈夫ですよ。それより復興の事なんですが、」
「…なに逃げようとしてるあるか。話だけでもちゃんと聞くよろし」
「…それは誰のために?」
「だから、お前の、!」
「嘘。全部貴方のためでしょう」
「アメリカさん。行きましょう」
「あ、うん…」
あの時、中国側についていれば、日本の頬を伝ったものに気づいていれば、変わった未来もあったのだろうか。
掃除後、日が傾いた州でアメリカは仮住まいへ帰った。
家に入って1番初めに入った部屋はふかふかのソファがあるリビングでもなく、巨大アイスがあるキッチンでもなく、大量の本が置かれた書斎だった。アメリカは綺麗に並べられた本の題名を指でなぞりながら目当てのものを探す。少しでも関係がありそうな本を見つけたら取り出して机に並べた。すれば本はあっという間に積み上がり、仮住まいのここだけで20冊以上もの本が置かれた。
調べるのには骨が折れそうだと感じるけど、彼の口角は上がっている。 アメリカは菊を日本にする方法について、本格的に調べ始めた。
ずっと考えていたことだ。菊を日本にするためにはどうしたらよいか。俺の時間軸の影響を使えば菊が側にいるだけで永遠に生きることができるだろう。でもそれじゃダメだ。束縛や監禁だなんてするほど俺の恋は歪んでもないし、何より菊には幸せに国としての人生を歩んでほしい。その人生に監禁や束縛は邪道だ。
考古学が趣味なだけあって本はたくさんあった。歴史書、国の成り、文献。なるべく多くの本をしらみ潰しに読んでいった。
だがそんな都合のいい情報なんて見つかるわけもなく、机に置かれた40冊もの本は乱雑に重ねられていた。考えてみれば、 国のなり方のヒントが分かるような本があるなら人間が血眼になって探しているだろう。
「…あー、イギリス?そういえば君の家ってたくさん本あったよね。歴史書とか、文献とかって置いてたりする?」
「…え、ないのかい?ファンタジーもの?それはいいや。君1人で読むといいよ。…違うって、そんな訳ないじゃないか……うん。Thank youイギリス」
少ない期待を胸にイギリスへ電話してみたが、どうやらそういう類の本は置き場がなくて捨てたらしい。今はファンタジーものとミステリーものの小説しかないと言われた。 希望は時間と共に沈んでいくばかり。外も雨が降っていて余計に気分が下がる。
アメリカは席を立った。気分を入れ替えるためにコーヒーを淹れ、デスクに全体重をかけて座る。
(やっぱり仮住まいじゃ見つかるものも見つからないか)
散乱した本を無視して自宅へ帰るための手配をしようとスマホに目を移した時、着信音が耳に入った。発信源はスマホでブルブルと震えながら電話マークを映している。電話マークの上には中国と表記されていて、俺は通話ボタンを押した。
「Hey中国!体調はどうだい?」
「你好。おかげさまで良好あるよ」
「良かったよ。これでぎっくり腰とか笑えないからね。で、なにか用かい? 」
「…そのあるなぁ、急で悪いあるが実は菊のことで話したいことがあるんだけど、」
「いいけど、会いたいとかは無理だよ。この前みたいになったらたまったもんじゃないからね」
「見くびりすぎあるよ。もう割り切ったある」
電話越しの中国の声は普通だった。世界会議以来彼とは会っていなかったが、いつも聞く声で淡々と会話が進んでいき調子がよくなったのだと俺は胸を撫で下ろす。
「で、話たいことって?」
何気なく本題を振ると、中国は口惜しそうに話し始めた。
「…よく聞くよろし美國。もしおめぇが菊を日本にしたいなら、1つだけ方法があるある」
その言葉を聞いたとき、俺は歓喜に満ちた。まさかこんなピンポイントで欲しかった情報が身内から降ってくるなんて。
「本当かい!?」
俺は食い気味に生き生きとした声で目を輝かせて言ったけど、自分とは反対に中国の声は曇っていて、言いずらそうな、言いたくなさそうな声が電話越しでも分かるほどハッキリ聞こえた。
「美國は、国の都市伝説って知ってるあるか?」
待った言葉はオカルトじみた話題だった。
「都市伝説?知らない」
「まぁ、そうだろうとは思ってたある」
「都市伝説って国にもあるんだね。初耳だよ」
「当たり前あるよ。今は我しか知らないことあるし」
中国は4000年以上生きた国だ。他の国が知らなくて中国だけが知っていることなんて山ほどあるだろう。期待の唾を飲み込む。本で調べるなんて方法はもう頭には無かった。
「さっきも言ったとおりこのことは我しか知らないことある。絶対、絶対に他の国にこのことは話したりするんじゃねぇあるよ。…… 国が、滅びる可能性があるあるからな」
「…国が?」
興味本位で聞いてみたけど中国が深刻そうな声で 「聞きたいあるか?」なんて言うから俺は 「…いいや」と空気を読んだ。思えば中国の雰囲気にビビっていたのかもしれない。
「で、その都市伝説って?」
その雰囲気を入れ替えるように話題を本題へ戻した。それに応えて彼の口が動く。
「間接国。簡単に言えば不老不死と似たようなやつあるな。間接国になった人間は永遠の命と異様な回復力、不死身の体を手に入れる事ができるある」
「……それって、」
「是的。我達国と同じ体質になれるってことある」
なんの躊躇もなく説明しだしたもんだから俺は今も耳を疑っていた。国の化身がいること自体不思議な部類に入ると思うが、彼の話は規格外のように感じた。今までそんなこと聞いたこと無かったし、SFは信じていてもファンタジーは信じていなかった自分だからだろうか。信じられない都市伝説とやらに警戒心を覚えた。
「…方法は?」
「国の血を人間に飲ませることある。国っていうのは不思議なもので、その血を飲んだ人間は我達と同じ体質になることができるある」
「喧嘩ん時、国民は国民同士で戦い、国は国同士の1対1で戦う理由はそれある。不注意で口に入れちまったら大変なことになるあるからな」
実践するかはお前に任せるあるよ。
そう後ずけを最後に中国との電話はプツリと切れた。スマホを机に置く。まだ事態に追いついていない脳を回転し迷いのため息をついた。最後の彼のセリフは完全に保険だ。まるで日本のことはすべて俺に投げ出したような、彼にとってそんな気はないんだろうけど。
ため息がまた自分の口からでた。
目の端に映った机上に置いてある作業用のカッターとインテリアの小瓶が悪魔の誘いに見えてしまって仕方がなかった。
(日本が生きてたら、かぁ…)
そんな事を考えながら雨が降る街を眺めていた。