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【闇に堕ちた最愛のあなた】
登場人物:
ミカサ(M)
エレン(E)
※原作にない描写あり/グロテスク表現あり/天と地の戦いあり/感動系/ネタバレ含む
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M「……はぁっ」
深いため息とともに、朝の光が差し込む。
まただ──同じ悪夢。
あなたの首を斬った、あの瞬間から続いている夢。
夢の中のあなたは、優しい時もあれば、責めるような目で私を見つめてくる。
時には、アルミンまであなたの味方になって現れる。
静まり返った部屋。
窓の外には、巨人のいない世界が広がっている。
なのに、どうしてこんなに寂しいんだろう。
外に出ると、長い廊下。
昔ならそこに、元気よく「おはよう」と声をかけてくれるあなたがいた。
M「……会いたい」
何度願っても、あなたは夢にしか現れない。
そして夢の中でも、私たちはもう、会話さえできない。
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マーレ国
あなたに言われた言葉が忘れられない。
「お前と俺の関係はなんだ?」
あの優しい笑顔で聞かれた時、
私はどうしてか、こう答えてしまった。
「……私たちは“家族”だよ」
それが、私たちの最後の会話だった。
翌日、あなたは姿を消した。
船の中で、私はひとりつぶやいた。
M「……もし、あの時“家族”じゃなくて“最愛の人”と答えていれば、結末は変わったのかな……?」
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天と地の戦い
変わり果てたあなたと、再び対峙した日。
始祖の巨人となったあなたの姿は、かつての面影をほとんど残していなかった。
重い空気に包まれた中で、ジャンが言った。
「エレンを……殺そう」
アニにも言われた。
「エレンを殺すことだけ考えて」
私の心は、何度も引き裂かれていた。
M「エレンは……口の中にいる!!」
あなたの記憶が、あふれるように流れ込んでくる。
眠っているようだった。
静かに、ただ静かに目を閉じて──
でも私の目を、確かに見ていた。
首を抱え、あなたがよく居眠りしていたあの場所へと運んだ。
あの温もりは、まだ手に残っている。
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そして夜が来る。
今日はどうか、責めないで。
それだけを願いながら、あなたに会える夢を待つ。
その夜、初めて──私はあなたの声を、はっきりと聞くことができた。
M「あの時……“家族”って答えなければ、変わってた?」
E「……もしかしたらな。俺の気持ちが変わったかもしれない」
M「……首を斬って、ごめんね。……痛かったでしょ?」
E「……はは。そんなこと、考えるわけないだろ? “最愛の人”に打ち取ってもらって、俺は嬉しかったんだよ」
E「むしろ、謝りたいのは俺のほうさ。罵ったり、優しくしたり……悪夢ばかりで、怖かっただろ?」
M「……っ…(涙)」
M「……久しぶりに話せて、嬉しい……」
E「俺もだ。これからは、もう悪夢は見せない。……それじゃあな、俺の“最愛の人”」
M「……うん、さようなら」
目を開けると、朝だった。
嬉しさと、会えない悲しさが混ざり合って、胸が締めつけられる。
でもそれから──悪夢は一度も見なくなった。
代わりに、あなたが夢の中で時々、そっと話しかけてくれるようになった。
ああ……
出てきてくれてありがとう。
闇に堕ちた、私の最愛の人。