「仁ちゃん、おそろやん!」
楽屋に入ってきた仁ちゃんに声をかける。
「は?」
「帽子も被っててマフラーも巻いてるやん。こんなん、もうおそろやね!」
「それでお揃いって…勇斗に感化されすぎでしょ」
苦笑いを浮かべながら軽く否定する仁ちゃん。
感化なんかやないよ。
「へへっ!仁ちゃん、一緒写真撮ろや!」
「まぁ、いいけど」
声はしぶしぶって感じなのに俺の横に並んで写真を撮られるためにマフラーを整え、帽子の上にパーカーを被り身なりを整える仁ちゃん。
「じゃ、撮りますね」
マネージャーさんの声にカメラに目線を向ける。
「いいんじゃないです?」
何枚か撮ってもらって、携帯を受け取り確認する。
「仁ちゃん、後で写真インスタあげてもええ?」
「んあ?あーいいよ」
「どれがええとか確認せんでいいの?」
撮った写真を確認せずに自分の携帯をいじる仁ちゃんに一応確認を入れる。
「別にいいよ。舜太なら変な写真使わないっしょ」
その信頼が嬉しい。
「じゃ、仁ちゃんが目ぇつぶっとるのにしよっと!」
なんて冗談言ってみる。
「ははっ。そんなことしてみろ。舜太のこと嫌いになるわ」
「なっ!ずるい!嫌や!仁ちゃん、最近すーぐ俺のこと怒るんやから!」
「舜太が馬鹿ばっかしてっから。いい加減大概にしとけよ」
「はーい」
勇ちゃんは仁ちゃんのこと「俺のブレーキ」って言うけどちゃうよ。仁ちゃんは「M!LKのブレーキ」なんよ。
勇ちゃんばっかりやと思っとたらあかんよ。
お揃いだって勇ちゃんだけの特別ちゃうもん。
俺からの勇ちゃんに対する小さな小さな「宣戦布告」。
【帽子とマフラー゛も゛おそろ】
俺は一個やなくて二個やから。
END