貴也と森田が中島コーチの元で、止める蹴るの自主練を2週間ほど続けた結果、貴也はパスの精度はまだまだ未熟なものの、ボールのトラップ技術は、天性の足首の柔らかさから、中島や森田が予想もできないほどの驚くレベルになっていた。
中島「貴也も森田も、2人とも2週間前と比べると、見違えるほど上達したな」
森田「ありがとうございます!正直、貴也くんのトラップ技術は凄すぎますが、自分も苦手だった足元の技術は格段に上達できた気がします。」
貴也「中島コーチ!もっと上手くなるためには、俺は他にどんなことをしたら良いんですか?」
中島「そうだな、まずこの止めて蹴るの練習は、今後も毎日必ず15分くらいは集中して取り組め。」
中島「次は、そうだな。森田は、ロングフィードを蹴って、貴也はそれを胸や足元で収める練習をしてみよう。」
中島「森田はディフェンダーとして、ロングフィードの精度向上が見込めるし、貴也はフォワードとしてポストプレーの練習にもなる。最初は無人でやってもらうが、少し慣れてきたら、俺が仮想ディフェンダーとして、体をぶつけながら練習してみよう」
中島「実は来週に1年生の中から数名だけ、2軍昇格のセレクションを行う紅白戦を行うことになっている。だから、2人とも2軍昇格を狙って、頑張ってくれ。そのセレクションには、推薦組の20名も参加することになっている。」
貴也「マジか!それはめちゃくちゃ楽しみだな、森田!!絶対、セレクションに受かってやろうぜ!」
森田「そうだね!2人で合格しよう!」
そうして、2人は地道に全体練習のあと、個人練習を続けていった。
そして、1週間後、待ちに待った2軍入りをかけたセレクションがやってきた。
紅白戦では貴也と森田は同じチームになることができた。
キックオフと同時に、貴也は相手ディフェンダーに対して、スピードとスタミナを活かして鋭いプレッシャーを掛け続けた。
流石に、以前のように犬のようにボールをただただ追いかけ回すようなことはしなくなっていたが、フォワードとしてのポジショニング技術は低いために、味方からのパスは全然もらえない状態ではあった。
ゲームとして膠着状態が続く中、森田はずっと貴也のことを見ていて、ロングフィードを送る機会を伺っていた。
そして、森田は貴也に対するディフェンダーのマークが甘くなっている隙を見逃さず、すかさずロングフィードのパスを送った。
森田のパスは練習の成果もあり、リバプールのファン・ダイクのような速くて伸びのあるボールが飛んでいった。
貴也は練習通りに、パスを受けようとしたが、すかさず相手ディフェンダーも貴也に対してプレッシャーを掛けてきた。
その瞬間、貴也の中で突然やったことのないプレーのイメージが浮かんだのだ。
貴也はその頭に浮かんだプレーイメージ通りに体を動かしてみた。
それは、まず森田からのパスを足のインサイドで正確にトラップする、そして、すかさずボールをヒールでちょんと後ろに蹴り、相手ディフェンダーをかわす動作だった。
貴也の天性の柔らかいトラップからのヒールでのターン、そして爆発的なスピードで、一瞬にして貴也は相手ディフェンダーを置き去りにしてしまい、相手ディフェンダーも何がおきているのか理解できないほどの一瞬のプレーだった。
しかし、貴也はドリブル技術とシュート技術は全く練習していないため、ほぼほぼ素人同然の動きで、キーパーに楽々とボールを取られてしまった。
しかしながら、貴也のプレーを見た2軍監督は度肝を抜かれて、中島コーチに、あの9番はいつからサッカーを始めたのかと問いただした。
中島「あいつは、まだサッカーを始めて3週間の子ですよ、私はあの子は本当に天才の逸材だと思ってます。」
その後は、貴也はほとんどをボールを追いかけ回す程度で見せ場はなく、紅白戦は終了した。
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