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うわ、美香ちゃんの大学生活、いきなりピリッとする場面続きでハラハラしたよ…!田舎から出てきた主人公の居場所のなさとか、ダサいって言われて距離置かれるシーンとか、読んでて胸がギュッてなった。でも最後にスーツ姿の芹沢さんが颯爽と助けに入るところで「よし!」って声出たわ。続きどうなるんだろ、めっちゃ気になる🔥
桜が舞い散る美しい出会いの季節。
私は大学の門を潜っていた。
体重はあっという間に元の四十五キロに戻った。
田舎では割と美人だと言われて来たけれど、都会の美人のレベルは違う。
皆、芸能人みたいに華やかな子ばかりだ。
はっきり言って、私は格好からして芋臭くて浮いている。
少し恥ずかしくなるも、大学には勉強をしに来ているのだと自分に言い聞かせた。
「君、きゃわいーね。運動神経も良さそうだしテニスサークルとか興味ない?」
金髪のチャラそうな男が私にチラシを渡しながら道を塞いでくる。
どうやらテニスサークルの勧誘のようだ。
「すみません。インターハイには出ましたが、ラケットを茨城に忘れて来ました」
なぜかチャラ男は私の言葉に爆笑した。
「インハイ? 茨城? どちらが本当のこと?」
「どちらも本当ですが⋯⋯」
茨城から神奈川まで出てくる人間はあまりいないのだろうか。
確かに愛子をはじめ進学した同級生は東京の大学に通っていた。
「君、面白いね。気に入っちゃった。名前なんて言うの?」
「⋯⋯高杉美香です」
「美香、確かに美しい香りがするわ」
チャラ男が私の匂いをクンクン嗅いでくる。
豚臭いと海斗に言われた言葉が蘇り私は顔を顰めた。
そして、急に呼び捨てにされて馴れ馴れしくされた事で私の警戒心はマックスになっていた。
その時、チャラ男を私から引き剥がす背の高い人目を引く精悍な顔立ちをする男が現れた。
周りの女の子たちが皆、彼を恋する瞳で見つめている。
都会には本当に芸能人のようなイケメンが存在するらしい。
「落合、その子嫌がってるから離れろよ」
「芹沢さん? 早期選考で三池商事に就職決まったって聞きましたおめでとうございます」
「おう!」
どうやら、芹沢という男は四年生のようだ。まだ四月なのに一流企業に就職が決まるとは優秀なのだろう。
「高杉さんだっけ。インハイ出るくらい本気でテニスやりたいならサークルより部活が良いと思うよ」
芹沢さんは私がインハイに出たという言葉を信じてくれているらしい。
「いえ、私、大学には勉強に来てるので部活もサークルも入る気はありません」
私がペコリと頭を下げると、芹沢さんは目を瞬いた後に微笑んだ。
その笑顔が綺麗過ぎて自分は既婚者だというのに心臓が跳ねる。
「良いんじゃない? 勉強頑張って! 入学おめでとう。高杉さん」
そのまま手をひらひら振って、芹沢さんは行ってしまった。
その背中をボーッと見つめていると、チャラ男の落合さんに背中をポンポン叩かれる。
「芹沢さんはゼミが一緒なんだけど、ウチの学校の有名人の完璧王子! イケメンだし、天下のセリザワフーズの御曹司なんだぜ。話し掛けられて良かったね」
「はぁ」
「なんかノリ悪いな。もっと、新入生なんだから楽しくすれば良いのに、とにかく新歓は来るだろ?」
「シンカン?」
私は首を傾げてると、後ろからギュッと金木犀の香りに包まれた。
「行きます! 行くよね美香!」
初めて会う子だけど、新入生だろうか。
巻き髪に黒目の大きい華やかな子だ。
私に好意的な視線を向けてる彼女に対して期待してしまった。
(友達ができるかもしれない)
「はい、行きます!」
私に話し掛けて来た子である脇田マリに釣られて、私は新歓コンパに行くことになった。
オリエンテーションが終わり、脇田マリと待ち合わせしてテニスコートに向かう。
「美香って教育学部なんだね。教師になりたいの? 今時、珍しい」
「そうなの? 公務員だし安定していると思うけど」
「都会の子は教職免許なんて就職の滑り止めにしか取らないよ。マリはキャビンアテンドになりたいんだ」
「そうなんだ。飛行機が好きなんだね。脇田さんって出身はどこなの?」
私の言葉に楽しそうに笑っていた脇田マリが一瞬固まる。
「群馬だけど、訛り出てた?」
「いや、出てないよ。ちなみに私は茨城出身なんだ。同じ北関東だね」
明らかに田舎出身にコンプレックスを持ってそうな彼女を刺激したようで戸惑う。
いつから私はこんなに人の顔色を窺っておどおど話すようになったのだろう。
自分でも今の自分は嫌いだ。
「そうなんだ! だから服がそんな感じなのね。一緒に大学デビューできると良いね。服とか一緒に買いに行ってあげる。メイク殆どしてないでしょ。メイクも教えよっか」
脇田マリは私の出身に親しみを持ってくれたようでホッとする。
「別に良いよ。私は大学デビューとか⋯⋯」
私の言葉を聞くなり脇田マリは顔を顰めた。
「美香、そのままだと周りからはダサいって思われるよ」
「別に良いよ。私はダサいもん」
「美香って、高校までモテて来たでしょ。素朴で男受けはするかもしれないけど、私はダサい子と歩くのは嫌だな」
私は突然浴びせられた決別宣言にあっけに取られてしまった。
気がつくと、脇田マリはサッと私から離れ他の新入生の輪に入っている。
孤独を感じながらもテニスで少し体を動かし、私は流されるままに新入生歓迎会に行った。
地下の居酒屋に連れて行かれたが、私は十九歳。
ここにいる大学一年生たちも皆十八歳。
お酒を注文しているが、法律的に大丈夫か不安になる。
みんなワイワイ楽しそうにしていて、高杉家でしょっちゅう開催されていた宴会を思い出し孤独感を強めた。
一人ポツンと烏龍茶を飲んでいると、隣に落合さんが座ってきた。
「美香! テニスうま過ぎ! インハイって本当だったんだね。ていうか少し手加減して、空気読まなきゃ」
「手は抜いてたんですが⋯⋯」
ラケットを借りて久しぶりにテニスをしたが、どうやらテニスサークルは嗜み程度にテニスをするところだったようだ。
手を抜きつつ、レベルを合わせて周りが楽しくプレイできるようにしたつもりが浮いていたらしい。
「というか、グラス空いてる。次もウーロンハイでよい?」
「あの、烏龍茶で。私、まだ十九歳なので」
私の言葉に落合さんが笑い、店員さんに注文してくれた。
「女の子なのに一浪してるの? 苦労してるね」
「えっと⋯⋯確かに苦労はしてます」
高杉家の日々を思う度に闇にのまれそうになる。
運ばれてきた烏龍茶をグッと一気飲みすると、また親切にも落合さんがお代わりを注文してくれた。
何だか、体がダルくて瞼が重くなってくる。
気が付けばお開きになっていて、流されて来てしまったが新入生の会計が無いことにホッとした。
「美香、大丈夫? 家まで送ってくよ」
落合さんが私を抱えながら階段を上ってくれているのが分かる。
「大丈夫です。一人で帰れます」
何故だか、店を出たところで皆が円陣を組んで三本締めをしていた。
これも高杉家の宴会でよく見た光景と酷似していて気分が悪くなる。
私は精神的なものなのか、急に立ち上がれないくらい気持ち悪くなってしゃがみ込んだ。
私の背を撫でてくる落合さんの手の温もりが薄手の服を伝ってくる。
「気分悪そうだから、休めるところ行こうか」
突然、耳元で囁かれた言葉に私は急に危機感を覚えた。
(私、お酒飲まされてない?)
「いえ、結構です」
「まぁまぁ」
しっかり立とうとするも、足が覚束ない。
私を支える落合さんの手が体のラインをなぞるように触れてきて気持ち悪い。
「や、やめっ」
振り払って、なんとか逃げようとした時、一度聞いたら忘れない綺麗な低い声がした。
「やめろよ。嫌がってるだろ」
声の方を見ると、昼間と違ってスーツ姿をした芹沢さんがそこに立っていた。