チュンチュン、チチチ…
それはそれは爽やかな朝だった。眩しい日光、小鳥のさえずり、真っ青な空…。
保科はうーんと唸り、寝返りを打ってから目を覚ます。
すると、整った顔立ちの上司の鼻先が、自分の鼻先にちょんと当たって。ん?あれ、近…とぼんやり考えたところで意識が覚醒する。
すると、相手も目を覚ましたようで。
うっすら開かれていた瞼が、一瞬にして見開かれる。
そして、パチリと目が合った。
「…」
「…」
「…おはようございます、鳴海隊長」
とりあえず挨拶をしてみた。我ながら結構間抜けだなと思いながらニッコリと笑みを浮かべてやる。
「………ッう」
「う?」
「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!」
「ッ!!るっさ…」
「っぅぐ、い、ってぇ、」
思いっきり叫んだ後、二日酔いの頭痛で頭を抱え込む鳴海。
「…wwwwwwwwふっwwちょ、wwwなんwでww僕の予想とwwww全くw一緒になってまうんwwwwあかん腹痛いwwwwwwwヒーッwwwww」
「何笑ってんだこのクソおかっぱァ…!!」
想像通りすぎて笑えてきた。
鳴海に全力で睨まれるが、もはや構っていられない。腹筋がつりそうになるまで笑い転げ、それからやっと呼吸を整えて鳴海を見る。
「はー、おもろかった」
「ボクは全く笑えないんだが?!」
「あーほら、そんな叫ばんと。また頭痛くなりますよ。吐き気とか大丈夫です?」
「まぁボク様だからな、二日酔いなんてものはすぐ治る」
「そうですか、そら良かったです」
「…」
「…」
再び沈黙が訪れる。何か喋ろうと思い口を開けるが、フルフルと震える鳴海が目に入った。
あー、せやんな。部下とバスローブ1枚で同じベッド入っとって、不安やない訳ないか。
「鳴海隊長、昨日の事は」
「…お、ぼえて、ない…」
「でしょうねぇ。まぁでも大丈夫ですよ、何も無かったんで」
なるべく明るい調子でそう言う。
…セックス云々の話はせんといてあげた方がええよな。さすがに可哀想やし。
「ほ、ほんとか!?」
「何で嘘吐かなあかんのですかw」
バッと顔を上げてほっとする上司を笑い、それから少し寂しくなる。
まぁ、何も無い方がええに決まっとるし。鳴海隊長が安心するんも普通や。
「いやぁ、鳴海隊長のおもろい姿見れて、最高の誕生日になりましたわ。おおきに」
「…は?誕生日?お前が??」
「?はい」
なぜか目を見開いて問い返してくる鳴海。
「なぜそれを先に言わない!?」
「えっ、言わなあかんかったん!?」
そしてまたなぜかキレだした鳴海に驚き、思わずタメ口で喋ってしまった。相手は気付いていないようなのでセーフだ。
「だ、ってお前、…クソ、このアホおかっぱ糸目」
「何でやねん」
「おいコラ、ボク上官だぞ」
「あっそうでした、すんません」
…アウトだったみたいだ。
てか僕の誕生日が今日やってだけで、なんでそんなキレとるんやろか。
「何ですか?僕の誕生日祝ってくれるつもりやったとか?」
「…違うに決まってんだろ。ただボクより誕生日が早いのが気に食わんだけだ」
「…ですよねぇ…」
元々期待はしていなかった。
いやでも誕生日おめでとうの一言くらいくれてもええんちゃうかなぁ…。いや別に期待しとらんかったけど。
「ま、ホテル代は鳴海隊長に出していただくということで」
「ハァ!?なん…ッ、…いやいい、ボクが出す」
いつもの調子で「なんでボクが!!」とか言うかと思いきや、まさかの承諾。
「えっ、冗談やったんですけど…」
「マジで何なんだよお前!!ボクの善意無駄にするとか許さんからな」
「あ、ほなお言葉に甘えて…」
「フン、それでいい」
満足げな鳴海が何だか微笑ましくて、「ありがとうございます」と笑いかける。
「ッ…、ま、まぁ、ボクは優しいからな!」
「介抱してあげたん僕ですけどね」
「保科貴様ァ!なぜいつも一言余計なんだ!!」
「はは、冗談ですて」
「チッ、これだから糸目おかっぱは…」
「関係あります??」
軽口を叩きながら、テキパキと着替える。
案外、普通やな。もっとギクシャクするんが相場ってもんやのに。
そう思いながら、鳴海と2人で部屋を出た。
フロントで代金を支払ってもらい、ホテルから出る。
それから少し歩いて、よしタクシー呼ぶか…と思っていたら。
「おい保科、お前今日は非番か」
いきなり話しかけられ、その上今日の予定を聞かれた。
「えぇまぁ、そうですね」
飲みに行くなら、と気を利かせてくれた亜白が、今日1日非番にしてくれたのだ。なんて尊敬できる上司だろう。
「なら、今日はボクに付き合え」
「…え、なんでです?」
…嬉しいと思ってしまった。この人とまだ一緒に居られること、そして誕生日にこの人と過ごせることを。
「いいから!」
「えぇ…しゃーないですね、どうしてもって言うんなら着いてってあげてもええですけど」
「は!?べっ、別にどうしてもって訳じゃ…!////」
急に照れ出す鳴海にニヤニヤ笑ってやる。
「あーはいはい、分かってますて。鳴海隊長は僕と一緒に居りたかったんですよね〜」
「ちちち違う!調子乗んなおかっぱ…!」
「ほら、行きましょ。どこに連れてってくれるんです?」
わめいている鳴海を置いて、先に歩き出す。
あぁ、今日はいい1日になりそうやな。
なぜだか分からないが、そう強く思った。
コメント
6件
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1番に見れた!しかも誕生日のお話だ・:*+.(( °ω° ))/.:+きっといつもと違う鳴海さんに保科さんもトキメクだろうな😎👍