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シプリートは意識を取り戻し、アズキールを制圧することに成功。服装はそのままだが、彼の瞳に光が戻っている。

「みんなただいま」

「おかえり!!シプリート!」

とびきりの笑顔でそう言ったら、皆に抱きしめられた。愛されているっていいなと、今改めて知る。その後エミリの髪は金髪一色に戻っていき、服も黒から桃色へ。

「あ、洗脳が溶けたわ!」

「よかったな!」

エミリが、今にも宙に浮きそうな気分になっていた。頬を赤らめて、自由になったことに喜びを表す。シプリートがその気持ちを賞賛する。

しかしドミニックのドラゴン化は、まだ戻っていない。恐らくこの体の中に闇魔法が残っているからだ。あのモンスターもまだ崩れていない。

あの女王を倒さなければ、この世界は滅亡の渦へと飲み込まれる。そんなこと、絶対させない!


意気込むと、アンジェの首にかかっている橙色のダイヤが白く輝き、また女神サブリエルが現れた。今度は女王を抜かした全員が白い光の中に入れられる。この光は攻撃されても全く効かないので、たくさん話すことができる。先ほどで検証済みだ。

「皆さんに一つ武器を作って差し上げましょう。何か武器になりそうなものはありますか?」

そう言われてドワーフから頂いた短剣を全員取り出す。それを見た女神はそれらを浮かして、合体。巨大なハンマーを作成した。

キラキラと輝く本体に、黒で出てきた頭部。ハンマーの柄も真っ黒だ。

「このハンマーでトドメを刺してください、シプリート。あなたがするのです」

「どこを狙えばいいですか?」

「『ルーペント』がある口の上です。そこを攻撃してください」

そう彼女に告げられた後、シプリートは巨大ハンマーを握りしめる。あの剣より重くて腕が震えてしまう。だが、シプリートも男だ。ここでかっこいいところを見せなければ、エミリが悲しんでしまう。

女神はその姿に笑みを浮かべて、少しずつ白くなって原型がなくなっていく。

「それでは皆さん、さようなら」

光が吸い込まれ、橙色の光に戻る。攻撃はしていたらしいが全く当たっておらず、敵が怒りで顔を赤らめ煙を上げている。

「行ってくる!」

意気込んで空を飛び、ガムダナ女王の元へ向かう。彼女は驚いているらしくて、身動きがとれないでいる。

「どうして裏切ったの!?」

怒りが最高潮になって癇癪を起こしており、そのセリフに答えながら巨大なハンマーを弱点の口の上へ使う。

「それはみんなとの友情と愛のおかげだーーーー!!」

バコン

ものすごい音を立てて、巨大ハンマーが振り下ろされる。膨大な闇魔法と乗せることで威力が増し、一瞬で女王を粉々。飛び散って原型を残さないほど、バラバラに崩れてしまう。

こうしてアズキールの野望は全て終わった。「ルーペント」の力により、カノーカ王国は元の自然豊かな街に戻っていく。


ドミニックはドラゴンから元の人間の姿に戻り、喜びの声を張り上げアンジェと抱き合う。しかし死んでしまった人間は、もう蘇らない。それが何よりも辛い。涙が溢れてしまう。ザール……。


落ち込んでいると、エミリがにこりと微笑んでくれた。そして、柔らかい声でこう言ってくる。

「大丈夫よ。彼は天国に行ったわ。それにね、貴方は生きてるじゃない。彼らの分まで一緒に生きましょう」

「そうだね」

涙を腕で拭い、エミリと手を繋ぐ。そして歩みを一緒に進める。太陽の光のせいか、彼女の背中がとても美しく感じられた。

「最後、とてもかっこよかったわ」

エミリは後ろを向いたまま、頬を赤らめてそう言う。照れ臭くて、後頭部を掻きむしった。

「ありがとう。いつまでも一緒にいような」

「ええ」


二人は歩みを進めて、父上に用意された馬が二つもついている豪華な馬車の前に立つ。エミリが一人でに乗るのを見た後、後ろを振り向くとカロリーヌとアンジェ、ドミニックが立っていた。

そうだ。仲間がいたからシプリートは、世界の平和を守ることができた。一人だけではできなかったんだ。やっぱり仲間入りと協力するのは素晴らしいことだ。

三人が集まってきた。

「王子、エミリではなくて私を選んでください!」と手を握りしめ、頬を上気させて言うカロリーヌ。「お兄様、大好き!!」とアンジェは抱きしめてくる。困惑してしまった。

この二人の女性に愛されるのも悪い気はしないが、やはりエミリ一択だから。


「二人とも。シプリートが困ってる」

ドミニックがそう言うと、二人は手を離してあたふたしていた。その動作も可愛らしい。思わずクスクスと笑ってしまう。

「何をしてるの?早くいくわよ」

エミリに急かされるように言われて、慌てて高級な馬車に乗り込む。窓から三人に手を振り、彼女に一番言いたかったことを言う。

「愛してるよ、エミリ」

「私も愛してる、シプリート」

二人は馬車が動き始めた時、軽いキスをした。触れるだけのキスはとても柔らかくて、ほかほかあったかい気持ちになった。



カノーカ王国に存在する秘宝「ルーペント」は、水色の光を取り戻した。その光が全世界を包み込んで、元の平和な世界に戻っていく。

カノーカ王国にも光が差し込み、植物が徐々に成長。雨が降り、バラバラに崩れていた建物が戻っていく。モンスターたちも人間に戻っていった。また街の繁栄が盛んになっていく。

「ルーペント」はまた地下に封印され、誰にも取られないよう何重もの壁を作った。そして人々はその上にある祭壇で祭り事を行い、カノーカ王国の繁栄と豊作を祈った。

その祭壇の近くにはこの世界を救った英雄シプリートの銅像が作られ、彼を救世主と崇められた。


シプリートは世界を救った功績を残したことにより、ルミリア国の王に任命。国民はやってくるかもしれないモンスターに怯えていたため、賞賛。国民に認められる存在となった。

そして、それから4年後。エミリの間に子供が産まれた。男の子だ。彼に「アズキール」という名前をつけた。

なぜ悪党の名前にしたのか。それは今までの出来事を忘れないようにするため。

彼は怒りや憎しみだけを吸い上げていたので、性格が歪んでしまった可哀想な経緯がある。それがなければ、普通に恋する男の人になれたはずだ。


「シプリート、私といて幸せ?」

エミリがそう訝しげに尋ねてきた。もちろん答えは決まっているさ。

「ああ!もちろん。幸せさ」

笑顔でそう答えて、二人は抱きしめ合った。そして永遠の愛を誓う。


【完】

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