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君はスタジアムに吹く風のように

第9話 - ４②

2025年06月19日

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#サッカー

#サポーター

#高校教師

#高校中退

#ヤンキー

深海魚

絶望感に打ちひしがれているうちに、着いたよと言われた。車から出るとそこは駐車場で、みんな車から降りると同じ方向に進んでいく。萌さんと同じ青いユニフォームを着た人たちも少なくないが、ヤンキーっぽい人は萌さん以外には見えない。みんなで青いユニフォームを着ている家族もいる。

駐車場を抜けると、キッチンカーが立ち並ぶ飲食エリア。

「スタグルで食べたいものがあればおごってやるぞ」

「スタグル？」

「スタジアムグルメ。Jリーグの試合会場のお楽しみの一つだ」

そのときようやくここがJリーグの試合会場であると理解した。ヤンキー少女が来る場所にしては健全すぎる気がして正直戸惑った。

「君、サッカーが好きだったの？」

「サッカーが好きというか、あたしが元カレと別れてから今まで生きてこれたのはタイヨウ君のおかげだもん」

タイヨウ君とは推しの選手らしい。なるほど萌さんのユニフォームの背番号24の下に白地でTAIYOと書かれている。

今日の試合はJ3リーグのアスルヴェーラ沼津 vs 松本（まつもと）ユナイテッドFC。アスルヴェーラ沼津は静岡（しずおか）県東部の沼津市をホームタウンとするプロサッカーチーム。アスルヴェーラは青い帆という意味で、エンブレムも青い帆がデザインされたもの。萌さんの両頬のシールタトゥーはアスルヴェーラのエンブレムだったようだ。

対戦相手は長野（ながの）県松本市をホームタウンとするプロチーム。かつてはJ1リーグで戦ったこともある強豪らしい。

沼津市民だから沼津にプロサッカーチームがあるのは知っていたけど、スタジアムに来たのはもちろん今日が初めて。

アスルヴェーラサポーターの萌さんはシーズンシートを購入していて、一年分のアスルヴェーラのホームゲームのチケットを確保しているという。萌さんは僕の分の今日のチケットも買ってくれた。

天気はいいからサッカー観戦日和ではある。なるほどお一人様や家族連れや恋人同士ばかりでなく、友達同士で観戦に来ている人も多そうだ。スタジアムは友達同士のデートの場所としても定番と言っていいのかもしれない。