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コントローラーを置いたのは、ほんの一瞬だった。マイッキーが立ち上がって、
「飲み物取ってくる」って言った、その直後。
マイッキーのスマホが、机の上で震える。
伏せてあったはずの画面が、運悪く床に落ちる。
――ピロン。
通知。
友達…?
時間表示は、さっきと同じ。
ぜんいちの目はスマホに釘付け。
見ようと思ったわけじゃない。
ただ、目に入った。
「……あれ」
戻ってきたマイッキーが、その声で察する。
一瞬だけ、空気が抜ける。
「これ、さ」
ぜんいちはスマホを指ささない。
視線だけで示す。
「さっきも鳴ってなかった?」
「……うん」
マイッキーは笑う。
いつもの、軽いやつ。
「気にしなくていいよ」
「同じ人?」
間。
ほんの一拍。
「友達だって」
「ぜんいち最近おかしいよ」
ぜんいちは「そっか」って笑う
それ以上、聞かない。
でも、
スマホが伏せ直されるまでの動きが、
やけに丁寧だったのを見てしまった。
「ゲーム、続きやろ?」
マイッキーが先に言う。
「うん」
返事はいつも通り。
音も、距離も、変わらない。
ただ、
ぜんいちはもう一度だけ、
さっき見えた名前を頭の中でなぞっていた。